主要銀行に検査官常駐を 樋口廣太郎氏〜内閣特別顧問が提言〜金融庁の事前チェックで健全性確保〔産経新聞〕

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 25 日 11:24:24:

今月上旬、内閣特別顧問に就任した樋口廣太郎アサヒビール名誉会長は二十四日までに産経新聞のインタビューに応じ、「主要銀行に金融庁の検査官を常駐させる必要がある」との考えを示した。銀行の取締役会をはじめとする重要な経営決定会合に検査官を同席できるようにするなど、事前のチェック体制を強化することで、銀行の健全性を確保するねらいがある。これまで事後チェックを重視した政策を進めてきた金融行政の問題点を指摘したものともいえ、今後のあり方に一石を投じそうだ。(石垣良幸)
インタビューのなかで樋口氏は二十一日に政府がまとめた「改革工程表」のうち、株価や格付けの急落した融資先企業を持つ銀行に対し「特別検査」を実施するなど、金融庁が新たな不良債権の抜本処理策を示したことを高く評価。そのうえで、さらに検討が必要な措置として、米国の金融検査システムを参考に主要行への検査官の常駐を提起した。
「米国はほとんどの大手銀行に検査官を常駐させ、重要な経営決定会合などに出席させている」と指摘。銀行経営の透明性を高めるためにも、常に経営内容をきめ細かく把握できる態勢を整備する必要性を訴えた。
金融監督庁(現・金融庁)は銀行による大蔵省(現・財務省)の過剰接待問題を契機に、大蔵省の金融部門が分離独立して発足した経緯がある。その反省から金融庁は事後チェックに重点を置いた検査監督体制を敷いているが、樋口氏の主張は、これまでの金融行政を大きく方向転換させる可能性もある。
樋口氏はさらに、「民間を主体に公認会計士や税理士など企業会計の専門家による調査機関の創設を考えるべきだ」との考えも提示。昭和三十五年前後に、企業財務の審査を実施していた日銀の外郭団体「日本信用調査」の機能を再評価し、「これまで個別の金融機関が独自に実施してきた企業の財務内容の審査を、調査機関が統一した基準で審査し、金融機関が情報を共有することで、経営が悪化している企業への過剰な融資を防ぐことが可能になる」と指摘している。
今後、企業の過剰債務解消を進めるなかで、金融庁は大きな役割を担うことになるが、「金融庁に民間企業の財務内容までチェックするほどの体制は整っていない」(財務省幹部)との指摘もある。
こうしたなかで樋口氏の提案する民間主導の調査機関設立も論議を呼びそうだ。

■一問一答 樋口廣太郎・内閣特別顧問〜不良債権処理へ工程表を着実に

樋口廣太郎内閣特別顧問との一問一答は次の通り。

−−「改革工程表」をどう評価する

「『特別検査』の実施や、企業再建ファンドをはじめとする整理回収機構(RCC)の弾力活用など、金融庁が重い腰をあげて、これまで以上に踏み込んだ施策を打ち出したことは評価できる。柳沢伯夫・金融担当相が『不信には誠実に答えたい』と言ったことにも好感を持っている。ぜひとも実行してもらいたい」

−−とくに評価するのはRCCの機能を弾力化させ、企業再建ファンドの設立か

「米投資会社のリップルウッドは破たんした旧日本長期信用銀行(現・新生銀行)を買い取って、千億円近い利益を出す銀行に変えた。日本もそうした力を早く持たないと、外資に先を越されるばかりだ」

−−今後、不良債権の抜本処理に必要な施策は

「まずは工程表の着実な実施で十分だろう。だが、日本の金融検査は米国に比べまだ甘い。米国では、金融検査官を大手銀行に常駐させ、重要な経営会議にも出席できるようにするなどきめ細かい検査体制を整えている。検査官の人件費などは銀行が負担するしくみだ。日本も同じしくみを取り入れるべきだ。米国ができて日本にできないのは疑問だ」

−−それは銀行経営に対する事前のチェック体制にもつながる。過剰接待のような問題が再燃しないか

「ねらいは事前、事後の双方のチェックの利点をうまく生かし、より機動的な検査体制を整えることにある。過剰接待のような問題は、そもそもあってはならない問題だ」

−−銀行の不良債権処理に向け、以前から産業再生のしくみを提言していたが

「金融機関は個々に企業の査定を行っているが、実際は企業の財務内容を十分に把握できていない。今年八月、マイカルに対し銀行が五百六十億円を融資しておきながら、九月には民事再生法の申請をしたことが、そのいい例だ。銀行の企業調査の能力が弱体化しているのが原因だ。そこで、公認会計士や税理士などの企業会計の専門家が独立して企業を査定する権限を持った調査機関をつくってはどうかと提言したい」

−−具体的には

「独立した民間機関の査定に基づき、銀行が企業への融資の判断や、企業の整理・再建の道筋を決める。金融機関は、査定結果などの情報を共有でき、経営が悪化した企業への過剰な融資を防ぐ。不良債権の拡大に歯止めがかけられる。昭和三十五年前後に日銀の外郭団体に日本信用調査という会社があったが、この機能を民間が主体となって復活させるのだ」

−−民間主導で?

「今後、銀行の不良債権処理に向けた役割が大きくなるが、人員不足は否めない。そこで民間の力をうまく活用する必要が出てくる。官民が相互に補完しあいながら、不良債権の処理に取り組む態勢ができるのではないか」

−−今後、金融問題で懸念しているのは

「一つは大和、あさひ両行の統合だ。この統合がうまく進まなければ、金融市場に無用な不安を与えることになりかねない。両行はその点をしっかり考えて行動してもらいたい」

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