投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 09 日 22:45:59:
米国連銀は10月2日のFOMCで政策金利を引下げ、公定歩合、2.0%、FFレート、2.5%と消費者物価上昇率2.7%(8月)を下回る実質金利マイナスと超低金利政策を決定した。
2001年の米国景気は91年後半から92年前半に相当する局面にある。91〜2年当時の日銀の政策はコールレートは引き下げ局面にあったが、名目GDP成長率(前年同期比)を上回る水準が続き、量的政策もマネタリー・ベースの伸び率は91年から急速に低下して、92年初にはマイナスに低下させている。一方、2001年の米国連銀は9回にわたる政策金利の引下げで、FFレートの2.5%は39年ぶりの低水準となっている。今年に入ってのFFレートは名目GDP成長率(前年同期比)と並ぶ水準となっている。マネタリー・ベースは年初からその伸び率は上昇に転じており、4-6月期から名目GDP成長率を上回る水準となっていることからみて、日本の91〜2年当時は「景気抑制策」に対して、米国は積極的な「景気刺激策」である。
財政政策も日本が抑制策に対して、米国は今年央から刺激策に転換している。今年の財政支出の拡大は、テロ救済策も含めて名目GDPの約1%に達するものが見込まれる。
日本は91年初を天井に93年まで約3年の景気下降局面となったが、米国景気は2000年央を天井に約1年半の調整で今年末から来年初期には底入れとなり、来年央からは本格回復となろう。
ドル・レートも当時の日本の円レートとは逆方向の動きが見込まれる。円レートは90年春に円安は天井をつけて、日銀の実質金利政策もあって95年春まで円高が続き、90年春の1ドル160円から80円へと2倍の円高となった。米国連銀は、マネタリー・ベースの伸び率を高めていることから、4-6月期からマネタリー・ベースの伸び率は名目GDPを上回っており、ドル高抑制策(ドル安政策)となっておりドル・レートはドル安に進む方向にある。
米国の金融・財政政策は来年後半以降の米国景気を急回復させよう。しかし、中・長期的には米国景気の転換期にあるといえる。財政出動と税収減もあって米国の財政収支は赤字に転じよう。米国景気が回復に転ずれば、貿易・経常収支赤字は再度拡大局面に入ることから、米国のドルは本格的な調整局面に入る可能性が高い。ドル安が進行すれば国際商品市場は世界的な需要回復もあって上昇局面に入り、米国はインフレ懸念が高まり、長期金利は本格的局面に入る可能性が高い。
90年代後半はドル高が米国景気の低インフレ・高成長の要因となったが、ドル安に転換すれば米国景気はインフレ・金利上昇から成長は変動が大きくなり(平均実質成長率は2〜3%維持)、不安定な局面に入ろう。
[アナリスト・ネット・ジャパン株式会社/客員アナリスト・山口範雄]