投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 05 日 06:56:19:
米国における同時多発テロ以来、テロリストへの資金提供の防止がG7諸国の主要課題になった。これは金融の世界に巨大な影響を及ぼすことになり、日本の金融構造に対する帰結も計り知れない。
テロリストの資金源を断つため、G7諸国は次のような手を打っている。まず第一に、ビンラディン等のテロリストの持っている預金等を封鎖した。次に、テロリストへの献金を犯罪とし、マネーロンダリング(資金洗浄)規制の対象にしようとしている。そして、これらの措置をG7以外の世界中の金融センターに広げようとしているのだ。
このようなテロ資金防止対策は、何よりも金融取引の当事者の厳しい本人確認を前提とする。単に個人の住所氏名を示すだけではなく、それを証明する書類の提示を必要とするし、法人の場合にはその経営者や株主を明らかにする必要がある。要するに、金融取引の真の当事者を明確にしなければならない。
さらに、金融機関は監督当局に疑いのある取引を通報しなければならず、監督当局は適宜警察に連絡することになる。当然、テロのみならず、麻薬、売春、恐喝、脱税等の犯罪の摘発にもつながることになるわけだ。
すなわち、これまで日本で横行してきた仮名預金や無記名取引は不可能になる。割引金融債の価値も大幅に低下しよう。法人をビークル(媒介)とした仮装取引も困難になる。あらゆる金融取引とその背後にある商取引が明るみに出されるのだ。
こうした時期に、株式譲渡益についていまだに源泉分離課税を主張する向きがあるのは、ほとんどこっけいというよりほかない。いまや金融取引は明白な形で行うしかなく、それを前提にした個人の資金運用・企業の資金調達を考えていくべきだ。日本の金融も改革が迫られているのだ。 (知命)
[毎日新聞10月5日] ( 2001-10-05-01:36 )