投稿者 sanetomi 日時 2001 年 9 月 23 日 08:54:31:
生保商品をチェック(1):支払い余力を十分吟味-まずは財務の健全性
東京 9月22日(ブルームバーグ):相次ぐ生命保険の経営破たんで、これまで漫然と入っていた生保契約に疑問を持ち、見直したほうがいいのではないか、と考えている人が増えている。
でも、生保商品は複雑。いざ、見直しを、といっても、自分の入っている保険商品についてさえよく知らない人がほとんどだ。畠中雅子氏、豊田真弓氏、石井ゆたか氏のファイナンシャル・プランナー(FP)に、商品の選び方、加入済み商品のチェックなどについてワンポイント解説をしてもらった。
生保環境の激変で、少しずつ独自性
日本では、9割以上の世帯が生命保険に加入している。日本人の支払っている生保保険料は実に、世界全体の40%程度にのぼる。人口がほぼ2倍の米国の2倍近い。これだけの金額を投資しているのにもかかわらず、ほんの数年前までは、どの会社の商品も似たり寄ったり。だから、私たち商品を比較する必要性はほとんどなかった。
だが、そんな雰囲気も一変。バブル経済破たん後の景気・株式市場の長期低迷、不良債権の増加と処理の遅れ、金融ビッグバンと競争激化。生保を取り巻く経営環境が悪化するなか、各社が必死で、新契約を伸ばそうとして、商品にも、少しずつ各社の“独自性“が出てきた。だから、私たち自身が自分たちの目で、その違いを比較する必要性が高まっている。
ソルベンシー・マージンは500%以上が安心
でも、各社の商品を比較する前に、もっと大事なことを忘れてはいけない。それは、生保各社の財務健全性のチェック。豊田氏は「ソルベンシー・マージン(保険金支払い余力)比率は、最低で500−600%はないと安心できない」とする。
金融当局が「業務改善計画」の策定を命じたり、業務停止命令を下す早期是正措置を発動する際のソルベンシー・マージン比率の基準は200%だが、昨年は、これを上回っていた会社も破たんした。
このため、金融庁は算出方法を厳格化。新しい算出方法では、昨年破たんした会社は200%を下回っていた計算になるとして、今後は200%という基準が有効に働く、と強調する。3月末以降に自己資本を増強し、ソルベンシー・マージン比率を引き上げた会社含め、ソルベンシー・マージン比率は全社で200%を大幅に上回っている。
基礎利益も重要―大手はプラスだが…
健全性のチェックには、ソルベンシー・マージン比率以外にも、金融庁が今年から算出を義務付けた「基礎利益」や、格付け会社の保険金支払い能力の格付けも参考にすべきだ。
基礎利益は、経常利益から有価証券売却損益などの臨時損益を差し引いた額。契約者に約束した運用利回りを実際の運用利回りが下回ることによって生じた「逆ざや」を、保険金の支払いや事業費を多めに見積もったことから生じる収益で埋めることができたかどうか、を示す。大手はプラスだが、規模の小さい会社の中にはマイナスの会社が多い。
格付けは、半年に一度しか算出されないソルベンシー・マージン比率や基礎利益と違い、随時見直しされる。最近は、株価の下落を受けて、各格付け会社が生保の格付けを引き下げる動きが相次いでいる。
「国内の古い生保は勧められない」
ただ、こうした数字がよかったとしても、ある時点の指標に過ぎず、将来的に保障されるものではない。ここには留意が必要だ。今後も逆ざやが続き、そのギャップを埋めるために、財務的な余裕を吐き出し続けなくてはならない状態が続けば、新たな破たんもありうる。
しかし、健全性の基準をクリアしても国内生保の保険商品は勧めることはできないという声もある。石井ゆたか氏は「国内の古い生保にはバブル期の高い予定利率の契約がたくさん残っており、その逆ざやを、予定利率の低い最近の契約から生じる利益で埋めている。そんな会社を、これから保険に入ろうという人に勧められない」と語る。
「外資系でもCMの多い会社は保険料が安くない」
だが、逆ざやの小さい外資系などの生保の保険料が安いか、というと、必ずしもそうではない。「たとえば外資系でもテレビCMをたくさん使っている会社の保険料は安くない」(畠中雅子氏)という。事業費などを削って保険料を安くしている会社は、オリックス生命保険やチューリッヒ生命保険など一握りの会社に過ぎない。
生保をめぐる環境の厳しさから、石井氏は、「今後2,3年は、生保商品を勧める気になれない」という。市場金利の低下に伴い、契約者に約束された予定利率が低いうえ、今後、保険販売の自由化はますます進む見通しだ。
その過程で、顧客の立場に立った商品がようやく出てくると見ているという。同氏は、どうしても保険に入らなくてはならない場合には、1年更新のDIY生命保険の商品に入り、しばらく様子をみてはどうかと提案する。
● 生保会社の格付け一覧(9月3日現在)
Moody's S&P FITCH R&I JCR アイエヌジー生命 - AA- - - - アクサグループライフ生命 - A+ - AA- BBB* アクサ生命 - A+ - AA- - 朝日生命 Ba2 BB+ - BBB+ A あざみ生命 - - - - - アメリカンファミリー生命 Aa3 AA - - - アリコジャパン生命 Aaa AAA - - - AIGスター生命 - - - AA+ - エトナヘイワ生命 - BB* - (BBB) (BBB) オリコ生命 - - BBB+ - - オリックス生命 - BBB - A+ A+ GEエジソン生命 - AA - - AA ジブラルタ生命 A2 A - - - スカンディア生命 - - AA- A+ - 住友生命 Baa1 BBB A- A A* セゾン生命 - BB+ - BBB - ソニー生命 - AA- - AA AA 第一生命 A3 A+ - A+* AA- 大同生命 A3 A+ - AA-* AA- 太陽生命 Baa2 A - A A+ 東京海上あんしん生命 - AA+ - AAA AAA 東京生命 Caa2 R - CCC D 日動生命 - - AA+ 日本生命 Aa3 AA - AA* AA* 富国生命 A3 A- - A+ A* プルデンシャル生命 - AA- - - - マニュライフ・センチュリー生命 - AA+ - - - 三井生命 Ba1 BB - BBB+ A- 明治生命 A2 A+ - A* AA- 安田火災ひまわり生命 (A1)↑ A+ - - - 安田生命 A2 A- - A+ AA- 大和生命 - BB- - (BB+*) (BB*)
注1)*印は公開情報に基づく格付け。カッコ内の格付けは見直し中で、↓印は格下げ方向、↑印は格上げ方向、矢印のないものは方向性が示されていない。注2)ムーディーズの格付けでは、Aaaが最も高く、Aa(優れている)、A(良好)、Baa(適切)、Ba(疑問がある)、B(弱い)、Caa(かなり弱い)と続く。数字記号は1が上位、2が中位、3が下位にあることを示す。注3)S&Pの格付けで「R」は規制当局の監督下に置かれていることを示す。注4)S&P、R&I、JCR、FITCHの格付けは、AAAが最も高く、AA、A、BBB、BB、Bと続く。プラスは上位、マイナスは下位にあることを示す。