投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 02 日 09:07:57:
2日の債券相場はもみ合いが続く公算が大きい。下期入りのタイミングで、投資家が余剰資金を債券投資に振り向けるとの期待が相場を支える。もっとも、財政支出が拡大するとの懸念が根強いだけに、10年債の1.4%割れで利回りが一段と低下する余地は乏しいとみられる。
東京三菱証券の石井純チーフ債券ストラテジストは、生産統計や日銀短観で景気の先行きがさらに厳しさを増す可能性を示したことと期初ということが重なり、「債券ポートフォリオのデュレーションを長期化する動きなどが入りそうだ」と予想している。
先物12月物は前日の終値139円75銭付近で始まり、日中のレンジは139 円50銭から139円90銭程度とみられている。1日のロンドン市場の12月物は、東証終値(139円75銭)より2銭安い139円73銭で引けた。
一方、現物10年物の234回10月債の利回りは、前日の終値1.420%を挟んで1.38%から1.42%での推移が見込まれている。
1日の先物相場は取引開始直後に買いが膨らんだ。日銀が発表した企業短期経済観測調査(短観)で景況感が悪化したことを受け、一部の投資家から期初の債券買いが入ったとみられる。
市場では、「今年度の補正予算規模などがみえてくるまで、積極的に積み増すとは考えにくいが、中間期末を終えたことで基本的に押し目買いで動く投資家が多いだろう」(ドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン証券・水野正明チーフストラテジスト)とみている。
ただ、「短観の発表後に政府・与党内や経済界からは、財政・金融面で政策対応を求める声も出始めており、投資家は上値追いに対して慎重姿勢を続ける」(UFJキャピタルマーケッツ証券・道家映二シニアストラテジスト)とも言う。10年物の234回債利回りが1.4%割れとなれば戻り売りも膨らみそうだ。
中期債需要を期待
株式相場が引き続き不安定ななかでは、現物市場で中期債への需要を期待する見方が強まる。日経平均は前日まで3営業日続伸したとはいえ、企業の業績悪化への懸念や米株式相場の動向次第では再び下落するリスクを抱えている。
「投資家が消去法での債券買いに動いていくとしても、株安となればどうしてもリスクは取りにくくなって、債券市場では中期債志向が強まる可能性が高い」(三井住友海上アセットマネジメント年金事業部・桝屋博債券運用グループ長)とみている。
もっとも、5年物の15回債利回りは、1日の取引で0.460%まで低下しており、利回り低下の余地は限定的といった指摘もある。
UFJキャピタルの道家氏は、「きのうは下期に入ったことで余剰資金は取りあえず中期債中心に流入したが、週末(5日)には5年国債の入札を控えて0.4%クーポンが意識されるため、新発5年債利回り0.45%割れは買い進みにくい」(道家氏)と予想している。
財政支出拡大の憶測
一方、政府の財政支出が拡大するとの警戒感は根強く、長期債利回り低下の足かせとなっているものの、市場では今年度の国債発行額が膨らんでも相場への影響は限定的との指摘もある。
「これまで景気の落ち込みを示す指標発表は補正拡大の憶測につながったが、短観発表後はこうした雰囲気は弱まっていた。(今年度の国債発行を)30兆円に抑えることは難しいとの認識がこれだけ広がると、象徴的な意義も薄れてきたのではないか」(水野氏)とみている。
小泉純一郎首相は1日午後の衆院本会議の代表質問答弁で、2001年度補正予算案の規模について明確にしなかったが、「財源は安易な国債発行によるべきではない」と述べた。今年度の国債発行額も2002年度に30兆円以内に抑える方針と「同様に取り組んでいく」と重ねて強調した。
1日の先物12月物は前週末比25銭高の139円75銭(利回りは1.449%に低下)。売買高は1兆4730億円。新発234回10月債の利回りは同0.015ポイント低い1.405%(価格は99円95銭に上昇、複利利回りは1.405%)。日経平均株価は前日比197円60銭高の9972円28銭。為替相場は2日の午前8時現在1ドル=120円32銭で取引されている。
東京 赤間信行 Nobuyuki Akama HS