投稿者 sanetomi 日時 2001 年 9 月 30 日 03:01:34:
米国同時多発テロ事件への米国などの軍事報復に関連し、日本政府の経済・財政運営方針の練り直しが不可避の情勢となってきた。小泉純一郎首相は27日、「今回、テロの問題が起きた。何が起こるか分からない。不要な混乱を起こさぬよう、必要な時には大胆かつ柔軟に対応する」と強調し、今年度の国債発行額「30兆円以下」の目標に固執しない見解を表明。今後、日本国内で対テロ軍事報復に対する経済支援の議論が熱を帯びるのは確実で、政府が大幅な追加財政支出を余儀なくされる可能性も出てきた。
小泉首相は先に米国で行ったブッシュ米大統領やアナン国連事務総長らとの会談や、ブレア英首相との電話会談で、対テロ軍事報復に関して、日本は武力行使と一体化しない形での自衛隊の後方支援を公約。併せて、「難民支援、医療協力、経済支援の分野で努力してきたい」と強調し、経済面などで全面的に支援していくことを確約した。また、これに先立って日本政府は総額47億円(4000万ドル相当)の対パキスタン緊急経済支援も打ち出した。
首相「経済支援」も国際公約−米、英、国連に
自衛隊の後方支援には多額の資金が必要となるのは確実。政府が11月上旬にも今臨時国会に提出する新産業創出・雇用対策を柱とする2001年度補正予算案に、新たに軍事報復に対する後方支援や周辺諸国への経済支援のための財政措置が盛り込まれるとみられる。
特に国連のアナン事務総長は小泉首相に対し、「日本政府が今回の事件に対して強力な対応策を迅速に出したことを評価している」と述べ、日本政府が 20日に打ち出した対応措置を高く評価。これには「周辺諸国への人道的・経済的支援」など7項目が盛り込まれており、アナン事務総長の発言は日本の経済支援に期待をかけている証左だ。
湾岸戦争では2兆円弱を支出
政府は対テロ軍事報復のために2001年度当初予算に計上された3500億円の予備費を活用するのは可能。しかし日本が10年前の湾岸戦争で実施した経済支援に比べれば、3500億円は微々たる規模。今後、対テロ軍事報復が具体化に伴って政府の支出がどこまで膨れ上がるかが焦点になる。今年度補正予算案が、新産業創出・雇用対策に加え、軍事報復支援などがかさみ、国債発行額が「30 兆円枠」をはるかに超える可能性も排除できない。
日本政府は91年1月から約40日間続いた湾岸戦争で、多国籍軍や周辺国支援として、90年8月から91年7月にかけて計140億ドル(約1兆8200億円、1ドル=130円換算)を拠出。これに際して国会では、政府が提出した多国籍軍への追加財政支援1兆1700億円(90億ドル相当)を盛り込んだ90年度第2次補正予算と臨時特別公債(赤字国債)発行のための湾岸地域支援財源確保臨時措置法が成立。9688億6653万円の赤字国債発行された。
【小泉首相が20日に発表した日本の「基本方針」と「当面の措置」(全文)】 ▼基本方針1)テロリズムとの戦いに主体的に取り組む。2)同盟国の米国を強く支持し、世界各国と一致結束して対応する。3)わが国の断固たる決意を内外に明示し得る措置を取り、迅速かつ総合的に
展開していく。 ▼当面の措置1)国連安全保障理事会決議1368号の「国際の平和および安全に対する脅威」
と認められた今回のテロに関連して措置を取る米軍などに、医療、輸送・
補給など支援活動を実施する目的で、自衛隊を派遣するための所要の措置
を早急に講ずる。2)わが国の米軍施設・区域、わが国の重要施設の警備をさらに強化するため
の所要の措置を早急に講ずる。3)情報収集のための自衛隊艦艇を速やかに派遣する。4)出入国管理などで情報交換など国際的な協力をさらに強化する。5)周辺や関係諸国に人道的・経済的その他の必要な支援を行い、その一環と
して、米国に協力するパキスタンとインドに緊急経済支援を行う。6)避難民発生に応じ、自衛隊による人道支援の可能性を含め避難民支援を行
う。7)世界と日本の経済システムに混乱が生じないよう、各国と協調し、適切な
措置を講ずる。
【湾岸戦争での日本の経済支援】 ▼支援総額 総額140億ドル(1兆8200億円、1ドル=130円換算)《内訳》・第1次貢献策 90年8月 湾岸平和基金に拠出 9億ドル 政府直轄協力 1億ドル・第2次貢献策 90年9月 湾岸平和基金に拠出 10億ドル・周辺国支援 90年9月 対エジプト、トルコ、ヨルダン支援 20億ドル・第3次貢献策 91年1月 湾岸平和基金に拠出 90億ドル・周辺国支援 91年3月 対シリア支援 5億ドル・第4次貢献策 91年7月 湾岸平和基金に拠出 5億ドル
(外務省によると、湾岸平和基金への拠出額(円換算)は1兆4928.8億円)
東京 山村 敬一 Keiichi Yamamura TA/TU
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