投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 09 日 18:21:21:
政府は七日、総額三兆円弱の補正予算案の概要を決めた。特徴は国債の発行額を当初予算と合わせてちょうど三十兆円に収めた点だ。早くも二次補正論議が出る中、三十兆円枠の維持は「風前のともしび」だが、市場はとりあえず好感、長期金利は一時、二カ月半ぶりに一・三%を割った。
「いずれ三十兆円枠は突破するだろうが、目先の利益のために目をつぶって買っている」。七日に長期国債が値上がりした(市場金利は低下)のを見て、日興ソロモン・スミス・バーニー証券の佐野一彦チーフ・ストラテジストはこう解説する。
●借金は年収の8倍
国債発行残高は過去七年間で倍増し、九月末に初めて四百兆円を突破した。一般会計の租税収入の約八倍にあたる。家計に例えれば、年収五百万円の世帯が四千万円の借金を背負っている計算で、すでに返せるかどうかを議論するレベルを超えている。
日本経済をこれ以上借金漬けにしないためには、三十兆円枠を守るだけでは、とうてい足りない。それでも、ゆくゆくは収支均衡を目指そうとしている小泉純一郎政権の姿勢は、「債券市場に安心感をもたらしている」と債券市場の関係者は解説する。
ただ、本当に超低金利が続くかとなると心もとない。いくら債券ディーラーが「二次補正予算も国債の格下げも織り込み済み」と強調しても、現実に数兆円規模で国債が増発されたり、海外投資家からの売りが集中したりした場合、吸収できるかどうかは、市場環境次第だからだ。
実際、債券市場には最低でも五つのリスクがある。第一に発行増に歯止めがかからない恐れがある。二次補正予算が予想外に膨らんだり、来年度の国債発行額が三十兆円に収まらないケースだ。特殊法人改革などを進めれば、隠されていた債務が表面化、多額の国民負担が発生する局面も予想される。
第二に債券としての「品質」が低下するリスク。外国の格付け会社がもう一段、国債を格下げすれば、「次はシングルA格に転落する恐れが出てくる」(大和証券SMBCの野村真司チーフストラテジスト)。海外の銀行や年金などは日本の国債保有に警戒感を強めそうだ。
第三に日銀の金融政策に関するリスクがある。政策手段としてインフレ目標を導入すれば、債券ディーラーが長期金利の上昇を懸念、売却を急ぎそうだ。市場への資金供給も手段と程度によっては「国債の直接引き受けと同じ」「財政規律が失われた」などの見方が広がる恐れもある。
●市場は財政再建期待
第四に製造業の空洞化が一段と進み日本経済が弱体化する恐れがある。「近い将来、日本は貿易赤字に陥る」との予想もある。そうなれば「債権国の金利は低くて当然」という論理がだんだんと成り立たなくなるかもしれない。
五番目は小泉改革がとん挫するリスクだ。何しろ、今の超低金利の背景にば「小泉首相が世界同時不況に打ち勝って財政再建に軸足を置いた政策を押し通すのではないか」(メリルリンチ日本証券)との読みがある。「構造改革よりも景気回復」という形で政策運営のかじを切り替えれば、市場の期待は裏切られる。
そもそも長期金利の上昇は景気回復が伴えば大歓迎。その脈絡で語れないことが日本経済が抱える問題の深さを示している。