投稿者 sanetomi 日時 2001 年 9 月 20 日 08:25:42:
9月20日 日経新聞19面 マーケットウオッチャー
債券市場振れ激しく
テロ響き取引低調 一部投資家売買が左右
米国を襲った同時テロの余波で債券相揚の振れが激しくなっている。全般に取
引が低調ななかで、一部の海外投資家勢などによる持ち高解消の売買などに値動
きが左右されやすくなっている。長期金利は過去一週間で1.325−1.45%の間
をめまぐるしく動いたが、十九日は1.4%とテロ発生前の水準に戻った。
当面は方向感に乏しく、荒っぽい値動きが続くとの見方が増えている。
▼…「緊急避難先を至急確保せよ」−−。ある大手米国証券の東京支店は
十九日、前日の都内での爆破予告騒ぎを受けて、近隣のビル内に電話や売買端末を
備えた「予備トレーデイングルーム」を急きょ設営した。
取引時間申に避難する事態になっても、取引を継続できるようにするのが狙いだ。
二十日は十月発行の計一兆七千億円の新発十年国債の価格競争入札が実施され
る。この米国証券の債券担当幹部は「これで安心して入札に参加できる」と胸を
なで下ろすが、市場参加者の間では「同時テロで本社が被害を受けた外国証券勢
などは応札に消極的になる可能性もおり、果たして入札が順調に進むのか」
(大手証券)との警戒感が消えない。
▼‥米国に対する同時テロが東京の金融・証券市場の業務に影響を及ぼし始め
ている。日本の債券市場にも影響が広がり、相場が振られる揚面が目立っている。
ある欧州系証券の債券担当者は「先週末から今週初にかけて、ヘッジファンド
勢が日本国債先物に大量の買い戻しを入れた」と指摘する。これが、長期金利が
十八日、一時一・三二五%まで急低下する一因となった。債券先物の売り持ちを
膨らませていた海外ファンドが「世界的な金融市場混乱に備えてとりあえず日本
での持ち高解消に出た」という。
一方、国内の証券会社や機関投資家勢は九月中間決算期末を控えている事情も
重なり、積極的な売買を手控えている。資金や債券の受け渡し・決済が円滑にい
くかどうか神経質になっているためで、軍事報復などで情勢が急転する可能性も
にらみ「防衛的にならざるを得ない」(大手証券)。債券の貸借に慎重な機関投資
家も増え、九月発行の新発十年国債を対象にした現金担保付き債券貸借(レポ)取
引で品貸し料が急騰した。
▼‥‥‥十九日は日銀の追加緩和策の経済効果が限られるとの見方から、債券相
揚は大幅に反落(金利は上昇)。新発十年物国債利回りは前日比〇・〇四%高い
一・四%に上昇した。テロ発生以来、乱高下した長期金利はこれで振り出しに戻った
格好だ。
今後の長期金利の見通しを巡り、強弱感は対立している。消費低迷など世界経済の
先行きに暗雲が漂うなかで、「日本だけ長期金利が急上昇していく事態は想定しに
くい」 (中塩弘みずほ証券金融市場部長)。一方では、「景気低迷で小泉改革が
軌道修正される懸念も高まっている」 (道家映二UFJキャピタルマーケッツ証券
シニアストラテジスト)といい、長めの金利は下がりにくい展開を予想する声もある。
いずれの方向も決定打に欠けるなかで、当面は一部の参加者の売買に左右される
振れの大きい展開が続く可能性がある。