投稿者 sanetomi 日時 2001 年 9 月 16 日 05:43:50:
テロ不況の影、世界へ
テロ事件が世界経済に与える打撃が日増しに深刻になっている。金融センターのウォール街の機能低下が避けら
れないほか、米国では歳末商戦が前年比マイナスに落ち込む見方が浮上し、ハイテク産業でも有力幹部を失った企
業も目立つ。欧州の高級ブランドまでが世界中の個人消費の減速を懸念し始めている。
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「証券取引所を月曜日に再開するため金融街への立ち入りが可能になるよう努力する」
ジュリアーニ・ニューヨーク市長は17日の取引再開に向け全力を尽くすことを表明した。世界貿易センターと証券取
引所を中心とする一帯は、一般人の出入りが禁止されているが、14日は消防隊などによってがれき撤去が進んだ。
取引所への地下鉄、バスも復旧する見通し。取引に不可欠な通信インフラも「月曜日までにはかなりの通信機能が
回復するはずだ」(電話会社首脳)という。
ただ、世界貿易センターで勤務していた多数の金融関係者が犠牲になったとみられ、人的被害は甚大だ。米証券
取引委員会(SEC)は14日、株価下落を防止する自社株買い戻しの規制緩和策などを発表したが、市場には不安
感が根強い。
調査会社によると、テロによるIT(情報技術)関連の復旧費用は現時点で158億ドル(約1兆8500億円)にのぼ
るという。
一方、消費者心理にも暗い影が落ちている。クリスマスまでの1カ月間の歳末商戦は一部大型店の年商の4〜5
割を支えるといわれるが、調査会社が国内1千人余の消費者に聞いた結果、「漠然とした不安で買い物は『必要品
に絞る』という家庭が多い。歳末商戦は米全体で前年比2%増を予想していたが、マイナス成長に転じる可能性があ
る」(担当者)という。13日発表された米消費者の購買意欲を示すミシガン大消費指数は、一気に先月より8%減の
93に急落し、92年12月以来の低水準に落ち込んだ。
米国内の航空便の旅客数や貨物量は当分抑制される見通しだ。国際航空運送協会(IATA)は「世界航空業界の
損失は100億ドル(1兆2千億円)にのぼる」との見通しを示した。航空機メーカーのボーイングの受注も来年は今年
の2〜3割落ち込むことが懸念されている。
自動車のフォードも国境でのテロ警備強化による部品輸入の停滞が深刻になり、7〜9月期の北米自動車生産量
は目標より約12%減ると発表している。
ハイテク業界は、有力ネット企業アカマイテクノロジーの共同創業者ルーウィン氏(31)ら新興企業を中心に十数人
の幹部が乗っとられた飛行機に同乗していた模様だ。関係者は「大きな損失で業績回復への勢いが弱まらなけれ
ばいいが」と嘆く。
影響は欧州にも波及している。14日の欧州株価は米国の報復の影響に対する懸念が高まり、前日比3〜6%急
落した。また、世界の保険大手である独アリアンツは01年12月期の業績予想で前期比13%増としていた純利益
を17%減の約20億ユーロ(2200億円)に下方修正するなど保険業界への影響が出ている。
「ルイ・ヴィトン」で知られるフランスのブランド品グループLVMHも、年間の営業利益の伸び率予想を前期比「10%
以上」から「5〜10%」に下方修正した。事件が世界の個人消費に与える影響を考慮したものだ。
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