投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 14 日 10:07:33:
9月危機説がいよいよ現実味を帯びてきた。米国で起こった同時多発テロは、「株価1万円の攻防」を続けてきた東京株式市場において、日経平均株価をいとも簡単に大台割れさせただけでなく、米国の景気回復シナリオをも一気に吹き飛ばした。「最後の頼みは米経済の早期復活」(大手電機メーカー幹部)と期待を寄せてきただけに、今回のテロは日本企業にとって大きな痛手となるのは避けられない。今月、中間期末を迎えた日本のハイテク企業には想定される「3つの恐怖」が襲いかかることとなった。
●避けられない円高不況
米国の同時多発テロは米国金融界の心臓部を直撃したことにより、同国の経済活動そのものの減退は必至だ。金融システムの完全復調にはかなりの時間がかかるとみられ「ドル安懸念」が台頭してくる。戦争や紛争勃発時によくいわれる「有事のドル買い」は今回は通用しない。景気減速をどうにか回避したい米国は、ただでさえ今月末のG7会議でドル安誘導を模索していただけに、一気に「円高ドル安」が現実味を帯びてくる。
ソニー<6758>は第2四半期以降の為替レートを第1四半期の“1ドル=115円”から“120円”にと、円安を織り込んだレート想定を行っている。NEC<6701>や富士通<6702>などは部材品の輸入が多く為替リスクを極力回避できる体制となっているものの、ソニーや三菱電機<6503>、東芝<6502>といった超輸出型のハイテク企業は、円高進行という新たな恐怖を抱え込むことになる。大和総研では今回のテロの影響として「10円程度の円高ドル安になる」とし、「日本経済は主に設備投資と輸出が減少、今年度の実質GDPを0.2%マイナス成長させる要因になる」と分析。IT不況に円高不況が折り重なることで、大手ハイテク企業の悩みはより深刻化する。
●またまたずれ込む景気回復シナリオ
2つ目の恐怖は、日米両国の景気回復シナリオが大きく後退することだ。米国は日本同様にIT不況こそ顕在化しているものの、個人消費がまだまだ根強く、大型減税や7度にわたる金利引き下げなど積極的な金融政策で、「来年初めには底入れも」(大手シンクタンク)との期待感が高まっていた。日本においても米国経済の底入れをテコに企業業績が回復に向かうとの見方が有力で、2002年度は「IT関連の回復で主要企業は平均23%の経常増益を確保できる」(野村証券金融研究所)としていた。しかし状況は一変。「(好調だった)米国の個人消費が落ち込み、7〜9月のGDPは大幅に下方修正される」(バークレーズ証券)。米国の景況感悪化は、日本だけでなく世界経済低迷を長期化させることは確実。IT投資も一気に落ち込み、日本のハイテク企業は、底が見えない泥沼にはまりこむシナリオが見え隠れしている。
●株価下落、格付け低下で資金調達難に
景気低迷が長期化した場合、「企業業績のさらなる悪化=株価下落」という3つ目の恐怖が浮上してくる。企業業績の悪化は、高い格付けを維持してきた日本のハイテク企業にダメージを与えるのは間違いない。
すでにその予兆は出てきている。一連のリストラ計画により、大手ハイテク企業は次々に格付けを低下させている。ムーディーズやR&I、S&Pなど主要の格付け会社が松下電器<6752>、富士通、東芝、日立製作所<6501>の長期債の格付けを引き下げる、または引き下げ方針で検討に入るなど、「格付けショック」が続いている。格付けが下げれば、支障がでるのが資金の調達。これら大手企業はSB(普通社債)など直接金融で調達してきたが、格付け低下で調達コストは上昇、資金計画に変調が出始める懸念もある。現在のところまだまだ高い格付けを保っているものの、業績悪化がさらに続けばさらなる格付け低下、株価下落という負のスパイラルに突入する懸念も否定できない。
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