投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 03 日 20:32:09:
アルゼンチン経済が揺れている。長引く景気低迷と財政赤字から株価が下落し、国際通貨基金(IMF)による支援の動きも出てきた。首都ブエノスアイレスでは失業者の増加からのホームレスが増え、観光客を狙った強盗も頻発している。経済不安に揺れるアルゼンチンについて報告する。 【塩谷英明】
ブエノスアイレスの街では3年間の景気後退が、少数民族のインディオ系住民の生活を直撃、路上生活者も増えている。バスや電車に乗れば、ラジオやサッカーボール、小物などを抱えた男性が大声で物売りを始めるが、見向きをする客は一人もいない。
深夜、午前零時を過ぎても5〜6歳の子供がバール(喫茶店)に出入りし、席を回って大人たちに金をねだる。子供たちは50センターボ(1ペソの半分)も稼げば大喜びで次の店へと飛び出して行く。
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アルゼンチンは80年代に財政赤字が膨らみ、通貨発行を増やし赤字を穴埋めしてきたが、極度のインフレに陥った。このため、91年に兌換法を制定。米ドル連動制(1ドル=1ペソ)を採用し、中央銀行がドル保有量の範囲内でしか通貨発行をできなくした。だが、99年に通貨切り下げしたブラジルからの製品輸入が増大。半年前には財政不安からデフォルト(債務不履行)懸念が拡大、株価下落が加速した。
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貧富の差が拡大しており、「富裕層はマイアミ(米国)に移り住んでいる」という。駅や街町の売店(キオスク)でも米ドル紙幣が使え、「いつ通貨の切り下げがあってもおかしくない」(現地の日系旅行社)との憶測からか、市民はドル預金に励んでいる。
駐日大使館のエミリアノ・ワイセルフィス書記官は「通貨切り下げはインフレ不安を再燃しかねない。企業はドル建て債務が多く、倒産要因にもなる」と語る。また、同国の輸出品が食肉、穀物類などが主力のため「農産物は国際価格だから、切り下げで競争力が高まることはない」と、米ドル連動制の廃止の可能性を否定する。
同国はブラジルなどと域内共通関税の南部共同市場(メルコスル)を結成しているが、「アルゼンチンが保護主義色を強め、関税対象品目を拡大するなどメルコスル内の足並みが乱れ始めている」(日本貿易振興会の長谷川直行氏)との指摘もある。ブラジルでは、すでにレアルの対ドルレートが急速に下落し、輸入品価格の高騰でインフレ圧力が強まっているという。
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アルゼンチンの7月の税収は前年同月比8・7%減少。これを受け代表的株価のメルバル指数が続落。政府は国際通貨基金(IMF)からの早期の融資引き出しを求める意向を表明した。
7月30日に財政改善に向け、公務員給与や年金給付の削減を盛り込んだ歳出削減法が成立した。しかし、労組を支持基盤とする野党・正義党(ペロン党)が優勢の上院では審議がもつれ、強行採決で同法案を可決した経緯がある。米国も足元の火種を懸念しており、経済不安が周辺国へ拡大すれば日本などにも支援要請する可能性も出てきそうだ。
[毎日新聞8月3日] ( 2001-08-03-20:34 )