週刊ポスト9/21号『株価一万円割れで日本は破産〜邦銀が米国IMFの管理下へ』

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 10 日 21:02:12:

小泉改革は『サル芝居』
株価一万円割れで日本は倒産する。
邦銀は米国・IMFによる国際管理下へ
アジアの前例では貧困層倍増

株価はついに一万円割れの瀬戸際に追い込まれた。このままいったら日本は倒産してしまう。そこを先読みしたIMF(国際通貨基金)は“日本経済を管理下におく”といわんばかりに邦銀特別検査を宣告してきた。IMF管理といえば、先例の韓国、タイ、インドネシアでは倒産、失業者を増大させ、高いインフレに陥れた。小泉内閣が謳う金融改革とは邦銀を外国に売り渡すことか。その結果、国民は激痛にのたうちまわることになってもいいのか・・・・。

小泉純一郎首相はまたまた《改革なき痛み》を強いてきた。健康保険の負担増。厚生労働省は来年度から3割負担実施を打ち出した。やはり財政再建を掲げた4年前の橋本内閣と同じ道を辿り始めた。
それだけではなく、この先何かとんでもないことが起こりそうな気配である。
ある国の総理大臣が国民にこう呼びかけた。
「改革のために痛みを分かちあい、苦境を乗りきろう」
わが小泉純一郎首相、ではなく、4年前のアジア経済危機の際、当時のタイのチュアン首相である。
タイ経済は96年末の通貨暴落で大混乱に陥り、IMF(国際通貨基金)の支援とひきかえに、経済運営を管理される事態になった。
その結果、国民は想像を絶する苦難を強いられた。
タイ最大のバンコク銀行をはじめほとんどの銀行は破綻し、庶民向け金融機関のノンバンクは58社のうち56社が閉鎖され、《預金5年間凍結》が発表された。
IMFはタイ政府に徹底した予算カットと金融機関の不良債権処理を迫り、銀行、ノンバンクは担保の土地、建物、車などを容赦なく差し押さえた。バンコクでは連日、ステレオ、テレビなどの家電からベンツまで担保物件を競売する政府主催の公開オークションが開かれた。
「預金凍結といっても、結局ノンバンクは倒産したから戻ってこない。事業資金の担保に入れていた家は投げ売りされて丸裸になった」(バンコクの日系企業経営者)
タイだけではない。アジア経済危機は韓国、インドネシアにも広がり、韓国ではIMF管理に置かれた途端に企業倒産が3倍近くに急増、ガソリンなど輸入品の物価は各月10%ずつハネ上がり、庶民はインスタントラーメンからトイレットペーパーまで買いだめに走って生活防衛に懸命となった。ソウルの商店街では、《IMFバーゲン》と銘打った店じまいの売り尽くしセールが社会現象になった。
インドネシアはさらに悲惨だった。
IMFに経済管理されて以来、半年あまりでコメの値段が2倍、食用油は4倍という超インフレに見舞われて国内は騒乱状態となり、ガソリンの大幅値上げを発端に起きた暴動でスハルト政権は倒れた。
IMFの緊縮政策は各国の貧困層を増大させた。インドネシアでは1日の生活費1j以下の層が国民の20%にのぼり、タイは13%(生活費2j以下)、韓国でも19%(同・4j以下)に達した。
いずれも1年間で2倍近くに増えた。
チェアン首相のスローガンは危機脱出を渇望する国民に我慢と相互扶助を訴えた切羽詰まった言葉だったのである。
チェアン首相は今年1月の総選挙に敗れて退陣したが、奇しくも今、小泉首相がチェアン氏から借りてきたように「改革の痛み」を国民に求めているのと軌を一にして、日本にも《IMF管理》の悪夢が忍び寄ろうとしている。
9月1日からイギリス、アメリカを訪問した柳沢伯夫金融相はロンドンで重大な発表を行なった。IMFが日本政府に要求していた邦銀への《特別審査》を受け入れる意向を表明したことだ。それこそ、日本がIMFによる経済管理の受け入れに一歩踏み込んだことを意味する。
そもそもは今年6月の日米首脳会談での小泉首相のひと言だった。当時すでに米国では《日本発世界恐僚》への不安が高まっていたが、小泉首相はプッシュ大統領に経済不況の元凶である銀行の不良債権処理を2〜3年で終わらせるという小泉改革の方針を説明したうえで、「日本発の恐慌を起こさないために柔軟かつ大胆な対応をとる。不良債権処理に米国の専門家の意見を聞きながら改革を進めたい」・・・そう約束した。
ところが、その国際公約が守れないことがはっきりした。8月末に柳沢金融相が『柳沢プラン』と呼ばれる重要な報告書を提出した。
<主要銀行の不良債権が半減するのは2007年になる>
不良債権処理を「2〜3年で終わらせる」とした小泉改革が不可能であることを担当大臣が明らかにしたのである。柳沢氏が英、米を緊急訪問し、米財務相やIMF首脳と会談したのも、公約違反の弁明のために他ならない。
それに対して(米欧の金融当局はあからさまに日本に牙をむいた。それがIMFによる邦銀への特別審査だ。
これまでIMFの直接の銀行検査は主として情報開示が遅れている途上国を対象としており、サミット参加国で、世界第2位の経済大国の日本に査察団を送り込むというのは極めて異例だ。が、IMFでは日本の銀行の不良債権は公表額の3倍以上あるという報告書を公表するなど、日本の金融行政に決定的な不信感を抱いており、小泉首相の公約違反によって、《日本政府は信用できない》と、直接管理を求めたわけである。
まさに来るべきものが来た。各国の金融当局の総元締めであるIMFの首脳陣は米銀などウォール街出身者で占められ、米国政府の影響力が極めて強いことで知られるだけに、米国もIMFと連動して“日本査察”に動き出した。
9月12日にはオニール米財務長官が来日して塩川正十朗財務相との会談が予定されており、さらに9月下旬から元米国連邦預金保険公社総裁らの視察団が邦銀各行を個別に訪ねて不良債権処理の現状を調査する。
株価急落に直撃された邦銀は9月中間決算対策に追われて不良債権処理を進める余裕などない。そのさなかに米国やIMFの調査を受ければ、それこそ《日本発世界恐慌》につながりかねない日本の金融危機の実態が国際的に明らかにされ、本格的な《IMF管理》へと進められる可能性が一段と高くなった。
藤井厳喜・拓殖大学客員教授(国際関係論)が指輪する。
「主要先進国の日本がIMFの特別審査を要請されること自体が屈辱的なのに、柳沢大臣はそれを受け入れざるを得なかった。欧米は当初、小泉首相の“聖域なき構造改革”で日本経済は復活するだろうと期待していたが、不良債権処理も郵政民営化や特殊法人改革も、結局は口だけで何もしないと懸念を抱いている。日本経済が事実上のIMF管理になれば、不良債権処理に伴う企業倒産や失業の増大に手加減などされない。米国資本はその過程で日本企業を底値で買収してくるのは間違いない。何年か先にたとえ経済は回復しても、日本企業の多くが買収され、収益の大半は外国資本に持っでいかれることになりかねない」
藤井教授は逆に日本は米国・IMFに立ち向かうべきだと主張するが、国際社会から《政治的禁治産者》とみなされてしまった小泉首相には望めそうもない。

● 都銀1、生保1処理の腹案

現在は3年前とそっくり符合する。
日本長期信用銀行と日本債券信用銀行が相次いで破綻した98年秋の《第2次金融危機》と呼ばれた時期だ。両行の破綻後も米国のヘッジファンドは日本の銀行株に売りを浴びせ、主要銀行は軒並み経営危機に陥った。当時、小渕内閣の金融担当大臣として対応にあたったのが柳沢氏だった。
その時に柳沢氏がとった政策が今の危機につながっているといっても過言ではない。
初沢氏は2つの策を打ち出した。第1が、旧長銀の米国資本への売却だ。経営破綻して一時国有化していた旧長銀をめぐっては、米国のリップルウッドを中心とする投資組合と、日本の旧中央信託銀行グループが買収に名乗りをあげていたが、最有力とみられていたリップルウッドとの交渉は土壇場で条件が合わずに暗礁に乗りあげていた。
柳沢氏はクリントン政権のルービン財務長官、サマーズ副長官らと会談して事態打開の根回しをした。そこで合意したとされているのが旧長銀を売却した後でも、不良債権が増えた分は日本政府が買い戻すという『瑕疵担保特約』だった。
最終的に金融再生委員会は4兆円以上の税金を投入して旧長銀の不良債権を切り離したうえに、2400億円の資本注入という“持参金”をつけた破格の条件で旧長銀をリップルウッドに買収させた。
その背後では、「旧長銀を米国資本に売るかわりにヘッジファンドの銀行株への売り浴びせをやめさせる」という日米金融当局の密約があったとの見方が金融界の定説となっている。
そのうえで柳沢氏は、残った主要銀行に約7兆4500億円の税金を投入し、「金融危機は去った」と宣言した。
柳沢氏は当時、「二度と税金投入する必要はない」と言明したが、現在、竹中平蔵経済財政相や山崎拓自民党幹事長、さらには米国側からも税金再投入論が強まっている。
あの7兆4500億円は何のためだったのか。
柳沢氏の今回の訪米は、3年前の金融政策の失敗の尻ぬぐいともいえるが、危機の乗り切りの発想は全く変わっていないようだ。
自民党金融問題調査会の幹部が打ち明ける。
「柳沢氏は今回、政府内での協議もしないまま、ほとんど独断で訪米した。アメリカ政府やIMFが日本に強硬姿勢をとっているのは、背後のウォール街が邦銀をもっと買収したがっているからというのが柳沢氏の判断だ。そこで、訪米にあたっては、3年前に旧長銀を売ったように、今回も株価急落で経営が悪化している主要銀行と生保を1社ずつ処理し、格安で米国資本に買収させるといつたいくつかの腹案を秘めて行った」
またも邦銀を“人身御供”に差し出して逃れようとしたようだが、バブル真っ盛りだった3年前とは違い、いまや米国はITバブルがはじけ、欧州、アジアにも株価急落が連鎖して世界同時不況の入り口にさしかかっている。だからこそ、米国政府は世界恐慌を真剣に心配して、日本を丸ごと《IMF管理》にしようと包囲網を広げているのであり、邦銀1行を売却するといった小手先の交渉が通用するはずがない。
柳沢金融相は明らかに目測と判断を誤った。

● 株価急落でもピンボケ御前会議

コトここに至っても、肝心の小泉首相と連立与党にはまるで危機の認識がない。
株価が連日バブル崩壊後最安値を更新しながら1万円割れに向かっていた9月4日、小泉首相は山崎拓幹事長、町村信孝幹事長代理をはじめ、副幹事長5人、総務局長、経理局長ら自民党幹部を集めて昼食会を兼ねた会議を開いた。
自民党内では小泉首相の国債発行を30兆円以内に抑えるという財政再建路線に反対して大型補正予算を求める声が強まっていたことから、首相にすれば、このまま小泉路線を押しきれるかどうか党内のムードを探るのが会議の目的だった。
が、案に相違して党幹部たちの口を衝いて出たのは景気の先行きに楽観的な見通しばかりだった。
「若い女性の東南アジア旅行がはやっているそうだ」
一人がそう口火を切ると、
「豪華客船の切符も売り出したらすぐに満席になるそうじゃないか」
「高価なブランド品もよく売れている」
「どこが不景気なんだ」
幹部たちは口々にそういい合った。
小泉首相とともに大型補正予算に反対している山崎氏がすかさず畳み込んだ。
「やはり大型の景気対策は難しいな」
小泉首相はわが意を得たりとばかりにニコニコしながら聞き役に徹していた。
ただし、会議の後半、山崎氏がこう切り出した時には雰囲気が一変した。
「それでも企業は大幅なリストラをしている。国会議員の数も減らさないと国民は納得しないのではないか」
幹部たちから一斉に反対論が噴き出した。
「衆院の定数是正は8増7減を軸に検討している。大幅に定数を削るとなると、公明党の中選挙区制導入論がいよいよ強まって収拾がつかなくなってしまう」
「議員歳費(給料)を1割減らす議論をしている。それで十分じゃないか」
・・・・日立、東芝、富士通をはじめ大手企業が次々に1万人以上の大量クビ切りのリストラを発表する中でのピンボケ御前会議とは呆れる。
小泉首相も“国民に痛みを求めているんだからわれわれ国会議員も大幅な定数削減をすべきだ”とはいわなかった。
「株価に一喜一憂しない」と繰り返す小泉首相も、景気対策を声高に叫んでいる自民党の幹部たちも、この程度の危機の認識しかないのだ。
他の与党幹部たちも全く同じだ。この日はちょうど『東京ディズニーシー』のオープン日でもあったが、2日前の9月2日に行なわれた招待客を集めたプレ・オープンには、議員たちがこぞって参加した。会場では、招待者をマスコミ、一般招待客、政官界の特別招待客の3つのグループに分けていたが、最も目立ったのは胸に赤いストラップをつけた政官界関係者だ。
その中には、小泉首相の盟友、加藤紘一元幹事長や首相側近たちから、緊縮財政に真っ向から反対して《30兆円景気対策》をぶちあげた亀井静香前政調会長の姿もあった。
“夢の世界”に遊んでいたのは彼らばかりではない。
株価急落で経済危機が深まっていた8月下旬から9月上旬にかけては永田町はちょうど外遊ラッシュ。綿貫民輔衆院議長がヨーロッパ、渡部恒三副議長は香港からセイシェル、南アフリカ、イギリスと地球を半周したのをはじめ、衆院の公式派遣だけで18班、与野党110人の議員が海外視察に出た。旅費は税金だ。
「外遊先でたまたま株価1万1000円割れのニュースを聞いたのだが、メンバーは全員、全く気にしないでゴルフを楽しんだし、アテンドした現地の大使館からも何の報告もなかった」
帰国した与党幹部は日焼けした顔で平然とそう語った。
なんだい、行く末が心配で夜も寝られない思いをしているのはわが週刊ポストだけかよ、エッ。

● 塩川&柳沢交替で税金再投入

それでも小泉首相は金融危機にからんで1つだけ金融庁に極秘指令を出している。
「98年3月の税金投入以来、銀行の役員が受け取った退職金のリストを作れ」というものだが、今さら銀行役員の退職金リストと危機回避がどう関係するのか。
首相側近が明かす。
「特殊法人改革の次に小泉総理が考えているのが銀行経営陣の責任追及だ。主要銀行の経営者たちは、【税食で経営支援を受けながら、何億円もの退職金を得ている。それを調査して金融庁に公表させ、近々、“銀行のモラルハザードはけしからん。だから金融危機が起こる”とぷちあげることになっている」
小泉首相は、道路特定財源の見直しを掲げることで自民党道路族という“悪役”をつくり、郵政民営化論では郵政族と戦う姿勢を示すという具合に、常に“仮想敵”をつくることで“改革者”を演出してきた。今度は銀行経営者をヤリ玉にあげるわけか。
しかし、危機を目前に経営責任を追及したところで、やらなくていいとはいえないが、危機回避策にはならないことは明らかで、改革に問われている本筋とはズレている。
第一、税金投入にあたって銀行経営者の責任を不問にした柳沢金融相を再び任命したのは小泉首相自身だろう。
「当然、銀行の経営責任追及にはその先がある」
首相側近は小泉首相が竹中経済財政相、新たに内閣府特命顧問に起用した島田晴雄慶応大学教授らと練っている金融危機対策の内容を語る。
「最終的には、もう一度銀行に税金を入れて救済するしかない。ブッシュ政権もそれを要求している。問題は国民の批判だ。改革の痛みを求めている時に、銀行だけを救うのは理解を得にくい。そこで経営責任を徹底的に追及する。その場合、柳沢大臣の存在は微妙だ。税金投入を決めた時の大臣としての責任は免れないし、国会でも徹底的に追及されるだろう。総理は9月末のG7(財務相・中央銀行総裁会議)の後に更迭する方針を秘めている。その際、これから米国やIMFとの厳しい交渉が待っているから、高齢の塩川財務相にはハードすぎる。塩川氏に首相顧問などの御意見番になってもらい、塩川・柳沢という財政・金融政策の中枢ラインをセットで交替させる案が検討されている」
銀行経営者の責任追及の次は柳沢・塩川ラインの更迭によって金融危機の責任者を処分し、国民の批判をそらしたうえで銀行救済のための税金投入に踏み切るというシナリオである。
しかし、小泉内閣登場の御祝儀相場で一時は1万5000円近くまでハネ上がった株価が“小泉改革”のメッキが剥げていくにつれて1か月に1000円ずつ下がったことからみても、日米首脳会談での国際公約を守れなかったことが米国政府やIMFの日本査察を招いたことからも、日本経済沈没に拍車をかけた一番の責任を、そうした周辺処分で誤魔化していい問題ではありえない。
トカゲの尻尾切りで責任を転嫁し、とどのつまりは銀行への税金投入で危機を乗りきろうというのでは、改革どころか、やり方は3年前の柳沢氏と同じ問題先送りそのものではないか。
間違いと先送りの繰り返しでは、本当の改革は遠くなるばかりだ。

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