分析「日本の政治を読む」〜国債発行「30兆円枠」堅持は困難か(PAXNET)

 ★阿修羅♪

[ フォローアップ ] [ フォローアップを投稿 ] [ ★阿修羅♪ 国家破産 ]

投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 10 日 20:23:48:

【今週の主な政治日程】

▼10日(月)韓日職能文化交流会(ソウル)
▼11日(火)改革工程表中間とりまとめ(経済財政諮問会議)
▼12日(水)アロヨ・フィリピン大統領来日、日中友好議連訪中
▼14日(金)衆院予算委閉会中審査
▼16日(日)小泉純一郎首相、東南アジア4カ国歴訪(22日まで)

【政局の焦点】

●減額補正の可能性も

政局の焦点は、小泉純一郎首相が公言している今年度の国債発行額30兆円の枠を守れるのか、またその枠内で組める補正予算案の額は一体いくらになるのか、その内容は―などの議論が依然続いている。首相は「俺は絶対にぶれない。靖国でぶれたから(今回も)ぶれるという人もいるが、構造改革の方が大事だ」と、再三にわたって「30兆円枠」死守を強調している。
しかし4〜6月期のGDP(国内総生産)成長率が前期比0.8%減と3期ぶりにマイナスとなり、2001年度の成長率も3年ぶりのマイナスが予測されることから、税収が落ち込むことは確実で、増額補正どころか、減額補正予算を組まざるを得ない事態も予想されるなど、経済状態は小泉政権にとって危機的状況を迎えている。

●2兆円程度の税収減か

7日発表された4〜6月期のGDP速報値は、内閣府幹部が与党政策責任者会議で示したと言われる「1%超」よりも良かったといっても、年率換算では実質マイナス3.2%、名目ではマイナス10.3%と1978年以来最悪となった。
もともと首相が掲げる国債発行「30兆円枠」は名目2%程度の経済成長を前提としており、その意味では前提が大きく崩れることになる。政府は今年度当初予算では税収を前年度当初比4.2%増の50兆7270億円を見込んでいるが、10月下旬に予定される税収見込みは大幅に修正される見通しで、場合によっては2兆円程度の減収となるとの見方も出ている。

●「一度配った予算回収」の事態も

このほか急速な失業率悪化に伴う雇用保険支払い増で1兆円規模の追加財政需要も見込まれている。このため「30兆円枠」に固執した場合、3000億円の公共事業予備費や2000億円の前年度決算余剰金を合わせても2兆2000億円程度の補正原資しかなく、補正予算で新たな事業を創出するどころか「一度配った予算を回収する」(加藤紘一元幹事長)という異例の事態も想定される。
早くも靖国神社への前倒し参拝に続く「公約破り」との批判を避けようと、首相周辺では「景気は生き物だ。カメレオンのように変わる」(政府首脳)などと、「税収減による30兆円枠突破はやむを得ない」(山崎拓幹事長)との予防線が張られ始めている。

●政権内部から首相の経済運営批判も

あくまで「30兆円枠」にこだわった場合、事業規模30兆円の大型補正を求める亀井静香前政調会長は例外的な少数派にしても、平沼赳夫経済産業相や麻生太郎政調会長らが主張する5兆円程度の補正予算も不可能となるなど、政権内部から首相の経済運営に対する不満が噴出する可能性もある。7日発表された与党3党による「総合経済・雇用対策」(第1次案)も補正予算案との整合性が取れないため、当初盛り込まれる予定だった「新産業創出・緊急雇用対策基金」の創設が発表当日になって見送られた。

●大台割れ控えジレンマの首相

「30兆円枠」を厳守する効果については両論あるものの、首相は「2年間で100兆円注ぎ込んだが何の効果もなかった」と主張。塩川正十郎財務相は同枠の死守が「小泉政権の生命線」とまで言い切る。また山崎幹事長は「ポリティカル・マジック・ナンバーみたいなもの。これが守れないと政権のイメージが損なわれる。ダメージも大きい」と説明する。
確かにここで「30兆円枠」を守り抜き、国債の信用低下を防がなければ、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが警告を発したように国債が格下げされ、長期金利が上昇。これに伴い国債償還費が増大し、民間企業の投資活動も悪影響を受けることは避けられないなど、構造改革を最大の政治課題としている小泉政権にとって大きな打撃となることは間違いない。
しかし、その一方で、日経平均株価の1万円大台割れを目前に控え、政府としてもこれに何の手立ても講じなくていいのかとの議論も依然あるなど、「日本発の恐慌は起こさない」を繰り返してきた首相がジレンマに陥っていることも事実だ。

●道路公団廃止で「小泉改革」に弾みを

また構造改革のもうひとつの柱である特殊法人改革も遅々として進んでいない。
3日締め切られた「廃止か民営化」(首相)を前提とした組織見直し案についても「廃止」を明示してきたのは、首相が既に廃止を指示していた石油公団など4法人にとどまり、実質的にはゼロ回答に終わった。特に赤字額が大きく行方が注目されていた日本道路公団など国土交通省所管の道路4公団については回答が留保されるなど、予想通り役人の抵抗が強いことが改めて明らかになった。
しかしかつての国鉄、電電公社のケースを見るまでもなく、民営・分割化以外に巨額の赤字を抱える特殊法人を改革する方法はない。首相は「小泉改革」の実績をひとつだけでも早く作り、全体の弾みとするためにも道路4公団の廃止・民営化を急ぐ必要がある。「改革」はある程度の「スピード」が伴わなければ成功しないことは歴史が証明している。

●大都市の中選挙区復活は「コウマンダー」

衆院選挙制度改革をめぐり公明党が、自公保政権成立時の合意を楯に東京、大阪など大都市圏の一部の小選挙区を定数2〜5の中選挙区に変更するよう求めている。
同党は定数1の現行小選挙区制では当選が難しいと、定数3の中選挙区(全国で150選挙区)とするよう主張してきた。しかし同案では「自民党内で支持する声を聞いたことがないし、これが(与党3党の)叩き台になることはない」(山崎幹事長)ため、公明党が新たな妥協案として提案してきたものだ。
もともと中選挙区制復活は野中広務氏が幹事長当時、同党を連立に引き込むため賛成したもので、山崎現幹事長にも申し送りされた経緯がある。しかし、選挙制度そのものの是非はともかく、今回の案はどうみても公明党だけの都合による選挙区変更で、「ゲリマンダー」ならぬ「コウマンダー」というべき代物。こういう案が同党に距離を置く小泉政権で実現するとは到底思えない。

●元秘書官の職場復帰を許さない田中外相

外務省課長補佐によるホテル代水増し請求による公金詐取事件は全くの噴飯もので、しかも20年も前から行われていたなどと聞くと呆れ果てる以外にない。職員の綱紀粛正は当然のことだが、そういう精神論によるのではなく、外部の第3者による会計監査制度を導入することが再発防止には最も有効であろう。そのことは別として、最近の外交政策の停滞ぶりは目の覆いようがない。いくら知恵がないと言って、今さらタレントらを集めてご意見拝聴でもなかろう。直ちに着手しなければならない外交課題はとっくに分かっており、どういう方途があるかも判明しているものが多い。要は田中真紀子外相が実行するかどうかにかかっている。
問題は外相が、外交政策を実行するに当たって必要不可欠な人材をあまりに粗末に扱っていることである。例えば、“最初”の秘書官だった上村司氏は大臣による不可解極まる個人攻撃で吐血し倒れたが、その後病状が回復したものの、大臣が同氏の他の部署への異動を認めないため、自宅待機の状態が続いている。このように有能であるにもかかわらず、大臣に嫌われたため仕事をさせてもらえない職員が相当数に上っている。こうした異常事態を解消しない限り、外務省の真の意味での立て直しは不可能だろう。
[政治アナリスト北 光一 2001/09/10 13:24]

このページの感想




フォローアップ:



★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。