週刊ディアス09・24号『密かに預金封鎖が検討されていた!』

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 10 日 16:54:20:

不良債権処理のためにこんな案が・・・どうする?
特命官僚チームが密かに検討した『すべての銀行預金を封鎖する』

バンクホリデーという言葉がある。
これは、預金の引き出しなどが停止されること。
つまり、預金封鎖という開き慣れない事態を意味する言葉だ。
どうにも処理が進まない不良債権問題に対して、
この預金封鎖のシュミレーションチームが発足していた。
戦後、実際にこの封鎖は実施されていたのだ・・・・

●今年4月に複数の官僚に特命が下った。

日本経済の「9月危機」は、日経平均株価の1万2千円割れを想定して言われたものだった。ところが、すでに1万円割れの危機が現実のものとなっている。
小泉改革の重要課題が40兆円の不良債権処理にあると言われながら、それが遅々として進まないところに大きな原因がある。
もどかしいが、これぞという現実的な妙案がないのだ。
不良債権問題に精通している自民党関係者から、話をこ聞こう。
「現在、自民党の一部で検討されている案に、こういうのがあります。銀行の不良債権(の土地)を日銀などが出資したRCC(整理回収機構)が買い取る。RCCがその土地を担保に債券を発行し、日銀が債券を買うという案です。土地の買い手がないからいっこうに不良債権が処理できない。そのための苦肉の策です」
これはABS(資産担保証券)と呼ばれる方式だ。しかし、決め手に欠ける。金融担当記者がその理由を説明する。
「担保に取っている土地の値段が、簿価よりも大幅に値下がりしているのが致命的だ。土地をRCCに売却した時点で、銀行に巨額の損失が発生してしまう。損失を埋めるには、銀行が自分の資産、資本を切り崩さなくてはならないが、巨額すぎて、それができる余力は銀行にはない」
こうした実情を踏まえて、先の自民党関係者が言う。
「不良債権処理はもはや銀行だけの力では不可能というのが専門家の常識です。したがって、さまざまな処理方法を自民党の一部や財務省などの官僚が密かにシュミレーションしています。おおっぴらにはできませんがね」
そして、次のように証言した。
「今年4月の自民党総裁選を前に、橋本派の一部が複数の省庁のキャリア官僚に密かに命じたことがあります。不良債権問題をいっきに終わらせる方法の一つ、預金封鎖のシミュレーション作りです。むろん、橋本龍太郎氏が首相になることを想定してのことです。私が聞いているところでは、橋本派のある幹部が、内閣府や財務省などの橋本派に近い官僚を動かしたということでした」
このチームには経済産業省の官僚も参加したとの情報もある。いわば省庁横断の特命官僚チームだ。
当時、日本はアメリカから不良債権の早期処理をやかましく求められていた。ホワイトハウスにも大きな影響力を持つ米国際戦略研究所のトップが「日本はバンクホリデーを考えるべき時に来ている」と発言。森政権を支えていた橋本派幹部らを焦らせた。
バンクホリデーとは、銀行がお休みする、つまり銀行が預金の出し入れなどを停止することを意味する。
預金封鎖である。
先の自民党関係者が続ける。
「このチームがその後、どんな報告をしたかは分かりません。役所の金庫にしまわれているのか、それともシュミレーションはしたものの廃棄処分にしたか。いずれにせよ、表沙汰には絶対にならんでしょう」
ごく一握りの専門家たちの間では、知る人ぞ知る事実なのだという。この事実は財務省の幹部や一部の都銀幹部の耳にも入っている。
橋本派は総裁選で敗者の側に回った。が、橋本氏を下し、政権を握った小泉首相にも、当然このシュミレーションは知らされているだろう。
経済ジャーナリストの岸永三氏はこう言っている。
「政治家や役人に聞いたって、『預金封鎖を真剣に検討しています』なんて言うわけがない。だが、たとえば外資系のアナリスト、エコノミストの間では、『もう、それしかない』と言われ始めていますよ」
預金封鎖とはどういうものか、それは後でじっくり見ていくとして、不良債権問題が待ったなし、というところまできているのは確かだ。
金融評論家の笹子勝哉氏が語る。
「不良債権額が、言われている額で本当に済むのか。IMF(国際通貨基金)が今年7〜8月に発表した報告書で、『邦銀の不良債権は25兆円の引き当て不足』と指摘し、日本に対する金融審査に乗り出すことを求めました。つまり海外では『日本は不良債権の実態を隠している』『日本の金融当局に任せておいては不良債権問題は解決しない』と見ているのです。柳澤金融相も、ついに審査の受け入れを表明しましたが、そこまで状況が悪くなっているということなのです」
銀行が不良債権を処理するには、その原資となる資金が必要だ。いま、それがない。
金融担当記者が説明する。
「まず、銀行本来の業務による利益。これは極めて少ない。では、株と国債はどうか。株は暴落で含み益がないからダメ。国債は銀行が大量に売却すると債券市場が暴落して、銀行が持つ残りの国債に含み損が発生する。だから、これも原資に使えない。あとは資本だ。ところが今の銀行の資本構成は、国が銀行株購入の形で公的資金を注入したため、国が多数の株を持っている。公的資金に手をつけられないのはもちろんだが、もし銀行独自の資本を取り崩して原資にしたら、その段階で国有化されてしまう」
つまり、銀行が不良債権処理の原資に充てられる資金は、どこを見渡してもないのだ。

●国民の預金を原資に不良債権処理を…

ないのなら、資金をどこかから持ってくるしかない。その一つの方法が「預金封鎖」なのである。
岸氏が預金封鎖の方法を、「私個人の意見ですが」と断って、こうシュミレートする。
「3連休の前の木曜日の夜あたりに、首相から突然、『新円切り換えのために、明日から3日間、ATMが止まる』と発表される。旧円と新円との交換比率は1対0.7くらいに設定される。旧円100円に対して新円70円ということです。たぷんこのとき、デノミも同時に実施されるでしょう。現在、日本には預金など個人の金融資産が1千300兆円あると言われます。税務当局が捕捉していないアングラマネーも同額程度というから、総額2千何百兆円という資金の3割を、いわばピンハネする。それを国の債務返済の原資にするわけです」
銀行の不良債権ばかりか、660兆円とも言われる国の借金、地方の債務などを穴埋めするための資金が生まれるというのだ。
この預金封鎖、実は終戦直後に行われたことがある。
『預金封鎖』の著書もある経営コンサルタントの太田晴雄氏が語る。
「私もそうですが、ある程度の年齢以上の人は、みんな預金封鎖を受けた体験があります。銀行預金も郵便貯金もすべて封鎖されて、ある日突然、引き下ろせなくなったのです」
46年2月のことだ。新聞に、《経済危機突破へ非常措置支払い制限けふ断行》《新円発行手持金は強制預金》といった見出しが躍っていたことを、太田氏は鮮明に覚えている。
「預金封鎖というのは、人間の体にたとえるなら血液の流れをいったん止めるのと同じこと。つまりお金の流れをいったん止めて、すべての国民、企業のキャッシュフローを国家が完全に把握する。そして封鎖した預金の一部を切り捨てるのです」
タンス預金も大口のアングラマネーも、旧円のままでは紙屑となってしまう。新円に取り換えるため、我先にと銀行に持ち込む。すべてのお金が表に出る。その結果、資産や負債など、個人、企業すべてのバランスシートがつかめる。
企業の経営状態、銀行の不良債権額も完全に確定できるわけだ。
むろん、すべての預金を完全に封鎖すると生活ができないから、一部を生活費として新円に交換して引き出すことは認められる。
「実際、46年のときの預金封鎖でも、生活費として1人月額で世帯主300円、世帯員100円の引き出しが認められたが、生活は苦しかった」(太田氏)
55年前の日本の企業、とくに旧軍需産業は膨大な負債を抱えていた。
銀行は国家が債務を保証するというので、巨額の融資を重ねていた。しかし敗戦。国が約束した債務保証は実行できなくなった。旧軍需産業と銀行が共倒れになるのは確実だった。
「この状況は、バブル後から現在に至る日本の現状と酷似している。銀行はゼネコンなどに金を貸し込んだ末、不良債権化した資産を抱えてにっちもさっちもいかなくなった。政府は公的資金という税金を入れて銀行を支えようとしたが、ついに国がギブアップ。銀行や企業の淘汰を口にするようになっている。敗戦直後にそっくりです」(金融担当記者)
当時の政府の狙いは、財政再建と銀行の建て直し、さらに軍需中心の産業構造からの転換にあった。
預金封鎖のあと、どうしたか。まず資産洗い出しで確定した国民の資産に、国家は財産税という一律25%から90%の税金をかけた。ただし、企業に対してはこの税を免除した。
「さらに、封鎖が解除されても、当時の3万円以上の預金は引き出せず、(大半が)取り上げられました」と太田氏。
現在の物価は当時の2千倍といわれるから、「3万円以上」は今の「6千万円以上」に相当する。
この額以上は没収する、保証しない、という発想。我々もまもなく、これと似た発想の現実に出会うはずだ。
太田氏が苦笑しながら語る。
「来年4月から始まるペイオフも、これと発想は同じなんですよ。銀行が潰れた場合、1千万円を超える預金については保証しないというのがペイオフですからね。ペイオフも、形を変えた預金封鎖なんですよ」
預金封鎖はいまや絵空事ではなくなったと、笹子氏も言う。
「9月から導入される新会計基準、そして来年4月からのペイオフにからめて考えれば、預金封鎖はかなり現実的な選択肢です。新会計基準によって、銀行の経営状態がさらけ出されてしまう。そしてペイオフが実施されると、経営状態が非常に悪い銀行では取り付け騒ぎも起こるでしょう。そうして破綻する銀行が出てくれば、社会不安が広がり、治安上穏やかならざる事態が生じるかもしれない。全国的に預金封鎖が断行されることはなくても、個別の銀行を対象にした預金封鎖は十分に考えられますね」
太田氏は、預金封鎖が現実味を帯ぴている要素の一つに、デノミの効果をつけ加える。
「以前から、政治家の間で景気対策としてのデノミの導入が言われています。デノミというのは、通貨の単位を切り下げることですが、言い換えれば新円との切り換えのことですよ。経済大国の日本には1円=1jがふさわしい、そういう大義名分をもってデノミを行う。新円との切り換えだから、そのために預金封鎖をしなければならない。それならば、国民は預金封鎖を認めるかもしれません」
把握した国民の財産に、一律の税率で《財産税》をかければ、55年前と同じことができるわけだ。

●このままでは銀行の連鎖破綻が起きる

国民はすでに、国の低金利政策によって銀行に利子を持って行かれ、血税まで投入してきた。このうえ財産を投じ、不良債権の処理までしてやらなくてはいけないのだろうか。
太田氏はしかし、こう語る。
「たしかに銀行を甘やかすことになるが、今の日本はショック療法として預金封鎖をやるのもひとつの選択肢だと思います。一時的に金融と経済は収縮し、賃金も下がるでしょう。だけど人件費が下がると、製造業が息を吹き返します。ユニクロが成功しているのも、人件費が日本の20分の1の中国で作られる商品だからです。今の日本の賃金体系では、もはや日本の製造業は国際競争に勝てません。預金封鎖まで行われたとなると国民も現状を認識し、一から出直そうという覚悟もできるでしょう」
岸氏も、いまの不況下で消費税の大幅な引き上げができない以上、全体で660兆円にもなる国と地方の債務を返済するには、「預金封鎖しかもはや手はない」と言う。
「やり方によっては大混乱が起きるし、アングラマネーに手をつけるとなると、闇の世界からのすごい反発があるかもしれない。政府がいま、預金封鎖を検討しているなどと言うわけにはいきませんが、闇の世界では、すでに預金封鎖などの対策も想定して、ドルに切り換えるなどの方法で動き始めていますよ」(岸氏)
こうした預金封鎖案に慎重な意見を持つ専門家も少なくはない。その一人、三和総合研究所の森永卓郎氏は、「預金封鎖の議論は、いまのタイミングでは現実的ではない」として、次のように語る。
「デフレを止めるという意志をはっきり示せば、景気は爆発的に回復します。そのためにインフレターゲット(目標)を設定して地価や株価の下落を食い止める。いまの日銀のやり方では、60兆円注ぎ込んで効果がないとなったら、今後さらに70兆、80兆、100兆円と注ぎ込むこととなり、ハイパーインフレになる。それを防ぐために、インフレターゲットが必要なんです。打つ手を先送りした末に銀行破綻が連鎖・・・。そんな事態になったとき、預金封鎖というシナリオも浮上してくるかもしれない」
太田氏が「タケノコの皮を一枚ずつはぐようにやせ細っていった」という預金封鎖は、最悪の事態を示すのか、それとも最悪の事態を免れるためのシナリオなのか。せめて、全国民に最悪の痛みを強いる事態だけは、避けたいものである。

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