「悪の経済学」 副島 隆彦・著

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 09 日 21:49:10:

「悪の経済学」 副島 隆彦・著
祥伝社 定価1600円(税別)
1998年7月25日  第1刷

〜覇権主義アメリカから、いかに日本が自立するか〜

「グローバリズム=アメリカ帝国主義=悪の経済」という観点を貫き通した書物である。世界経済の動きをその観点より分析した結果、炙り出されてくるのは「エコノ・グローバリストと呼ばれる一握りの人間がニューヨークの金融財界人の利益の追求の為に、着々と世界支配を繰り広げつつある」という構図である。
著者は彼ら、エコノ・グローバリスト達を手厳しく批判する。「世界を特定の人間集団が支配、管理、統制してはならない。世界を、そして市場なるものを支配してはならない。世界と市場を支配していいのは、「神=自然の摂理」のみであって、特定の人間たちの人為が支配してはならない。たとえ、独裁者であろうとも、世界皇帝であろうとも、市場を支配してはならない。彼ら、エコノ・グローバリストには、このことが分からないのである」。
「彼ら自身が世界の金融市場を荒らしまわっておきながら、その報いが自分たちに降りかかることで、自ら墓穴を掘りはじめた。ソロス氏は、盟友・ルービン財務長官とともに、アメリカの金融界を牛耳るグローバリストたちの意を体現して、世界の金融市場まで管理支配しようとする自己矛盾を犯すことで、やがて、その報いが自らに波及していくことを、いま心底恐れているのである」。
「市場統制指向=大蔵省 対 自由な市場指向=アメリカ」というような極めて稚拙な解釈をふりまいている、情報統制された日本のマスコミにだまされてはいけない、と著者は叫ぶ。

■ 世界覇権国家アメリカ、悪の経済戦略

(「ウォール街=財務省複合体」が、いかに日本を管理しているか)
「市場(マーケット)を、人為や特定の人間たちの意志で支配してよいはずがない!」と著者は叫ぶ。しかし、今や市場は「闇の投機家・ジョージ・ソロス」とその盟友の「ロバート・ルービン・アメリカ合衆国財務長官」に支配されてしまっている、と著者は断定する。自らの知恵と決断によって、世界の金融市場を、「闇」と「公」の両面から規制し統制し管理しようとする二人。彼らこそ「エコノ・グローバリスト」である。彼らの国際的な金融操作によって、巨額の短期資本がアジア各国に流入し、そして一瞬のうちに国外に流出する…そして通過暴落が引き起こされる。タイやマレーシアの通過危機はこのようにして起ったのである。
儲けるだけ儲けてしまってから、わが身に火の粉が降りかかりそうになってきたソロスは「国際金融市場を自由にしておいてはならない、規制を設けるべきだ」などと主張しはじめた。著者は彼らの身勝手さに怒りの鉄拳を振り下ろす。「規制をしてはダメだ。彼ら獰猛なエコノグローバリストの突撃隊(ソロス)が自ら招いた失敗を、グローバリストの本体・ニューヨーク金融界代表のルービン長官にきちんと責任を取ってもらわなくては困るのだ。アメリカは冷酷な経済法則(市場原理)に従って、金融危機に陥っていくべきなのである。それが責任を取るということだ」。
アメリカはなぜIMF(これも実体はニューヨーク金融界の出先機関にすぎぬ)を使って、アジア各国の最近の金融危機に対して「その場しのぎの救済」を行ったのか? それは、アメリカの大銀行がアジア各国に対して膨大な融資を行ってきたからだ、と著者は言う。アジアの国々が破産状態となって融資が返済不可能となるとその損失の打撃を被るのはアメリカである。だから、アメリカは延命措置を取らざるをえない。これは、世界規模で「飛ばし」と「簿外債務隠し」が行われていることを意味している。(ちょうど山一の時のように)。
立ち行かなくなったものは倒産させねばならないのだ、銀行でも国家でも。「倒産をさせないで、無理矢理その危機をズルズルと回避させようという考え方が、どんなに間違ったことか。そのことが世界規模でやがて明らかになるだろう」。

■「円」を潰すため、米国は何をしてきたか

(“貿易摩擦”から“日本金融封鎖”までの対日支配)
「社会主義からの防波堤」としての役割を大きく越えて成長しすぎてしまった日本の経済、それを破壊するためにアメリカはこの10数年、入念な「円潰し」を行ってきた、と著者は言う。
「アメリカの土地や企業を買いまくっている日本のアブク銭を叩き潰す」ために仕掛けられたのが90年から92年にかけての為替と金利の操作。この時期、円は1ドル=160円から125円に急騰、日本の公定歩合も6%から3.25%へ。そして90年10月1日の株価暴落(後に「日本の暗黒の月曜日」と呼ばれる)をきっかけに日本のバブルがはじけ出した。
この東証暴落の引き金を引いたのもやはりアメリカの投機筋であり、「彼らは「外人買い」を繰り返して、株価を吊り上げておいてから、自分たちだけさっさと売り抜けて、日本人の狼狽売りを誘い、その後の大雪崩を仕掛けた」。
さらにアメリカは日本の銀行の首根っこを押さえるために「BIS規制」を「発明」した。これは「遅効性の毒物のように、日本の銀行をじわりと侵し、確実にその体力を奪い」、銀行の貸し渋りを引き起こし、土地暴落とあいまって日本経済を確実に衰退せしめた。
しかし、アメリカは日本をあまりにいじめすぎたのである。日本の経済危機は東アジアの危機へ、さらにはアメリカへ、とまさに「世界恐慌」に発展しつつある。これを察知したエコノグローバリスト達は自らの責任を回避すべく、「世界恐慌の犯人は日本である」というストーリーづくりの陰謀に今やっきになっている、と著者は言う。

■ 最強の官僚「エコノ・グローバリスト」の正体

(現代の“神の手”が、世界経済を破綻に陥れた)
日米自動車協議の後、ルービン、サマーズ、榊原(大蔵省財務官)三者により「逆プラザ合意の密約」が成立した。その内容とは、「日本の金利を限りなくゼロに近くする」「日本の財政支出(公共投資)の大幅増」「日米の通商問題は全て棚上げ」「アメリカはドル高政策へ転換し、円安を容認する」の4項目であるという。その後の日米間の通商交渉(半導体交渉、フィルム交渉)は「すべてヤラセだったのだ」と言うのである。金融による世界支配の確立を目指すアメリカにとっては、もはや通商問題はあまり重要ではないのだ。
そしてアメリカは中国と「戦略的パートナーシップ」を結び、アジアの完全なる支配をもくろんでいる。
このようなアメリカの世界支配戦略を演出している「エコノ・グローバリスト」とは? それは、民主党系の政治家、官僚、財界人、学者である。たとえば、ルービン、グリーンスパン(FRB議長)、クリントン大統領。「彼らの多くは多国籍企業など巨大な国際ビジネスに関わり、世界中に莫大な資産を築いているニューヨークの財界人たちの意向を受けて動く人々である」。
「クリントン大統領など、このルービンたちから見れば、ただの操り人形のようなものにすぎない。クリントンというより、民主党を大統領選挙で勝たせるために、ニューヨークの財界で資金集めの元締めをやったのは、このルービンなのである」彼が率いる財務省こそはアメリカ最強の官僚組織なのだ。
この財務省の別働隊ともいうべきが、韓国の財閥とインドネシアでのスハルト一族に引導を言い渡したIMF(国際通貨基金)である。
そして彼らの突撃隊となって動いているのが、ソロスらの投機筋である。彼らの動かす金の額は実に巨大なものとなっていて、世界の市場はいまやカジノギャンブルの賭場と化している。(1日当たりの世界の為替取引額は約1.2兆ドル、これは1日当たりの世界貿易額の80倍である!)「この巨額の短期資金は、マーケットの都合などお構い無しで、各国通貨市場に怒涛のように流れ込んでは、怒涛のように流れ出て行く。この無節操な資金の動きに市場は翻弄され、しばしば深刻なダメージを被る。それが最悪の形で出たのがアジア通貨危機である。」「マレーシアのマハティール首相がソロスのことを「ごろつき」とこきおろしたのは正しい。」著者の舌鋒の鋭さ、止まる所を知らない…

■「アジアの時代」その早すぎた終焉の真実

(アメリカの経済侵略はここまで及んでいた!)
苦境にあえぐアジアの国々でのエコノ・グローバリストの底深い暗躍を著者は抉り出す。
核兵器の開発に向かって突き進んだ朴大統領はアメリカの逆鱗に触れ、その意志を受けて暗殺された。今回の、キム・デジュン大統領と彼の政敵・キム・ジョンピル(親アメリカ)との連合もアメリカの意志が大きく働いている。キム・デジュンとソロスとの親密な関係は周知の事実。ソロスは破産寸前に追い込まれた韓国の大企業をタダ同然の値段で買いあさっている、等々。
投機筋にルピアをメチャメチャにされた自国の経済を防衛するためにIMFの「指導」を拒んだスハルトをクリントンは電話で恫喝した。今回のスハルト退陣も、例によって、CIA等を使ってのアメリカからの工作の結果、と著者は断定する。アジアの中でアメリカに屈していないのはマレーシアのマハティール、そして中国。それに引き替え何という情けないザマだ、日本は。世界GNPの18%を占めているというのに…著者は嘆く。

■ 恐慌前夜、世界はこう動く

(危機的経済状況のなかで、私たちが覚悟すべきこと)
日本政府には最近まで、日本発の世界恐慌が本当に起きるのだという自覚がなかった。そのような日本に対して、アメリカはすでに堪忍袋の緒を切らしてしまったようである。「日本なんかもう村八部にして行こう」などという議論まで出始めている。
しかし、アメリカがいくら「景気対策をもっとやれ」と怒鳴っても、政府にはもはやその資金がないのだ。だから今、日本政府は日銀に「ザブザブと日銀券(お札)を刷りまくらせている」のだと著者は言う(明らかに財政法違反)。すでに日本政府は、全面的金融恐慌に対して備えているのだ。大手銀行めがけて預金者が殺到する取り付け騒ぎが起きる事態を、確実に想定しているのだ。だからと言って、今のまま日銀券を発行し続けたら、そのうち日本を巨大インフレが襲うだろう。「紙幣は、実はただの紙切れだということを、私たちは、やがて思い知るだろう。」と著者は不気味な宣託を下す。
そして、日本発の経済恐慌は遅かれ早かれ、アメリカをも直撃し、ニューヨーク市場のバブルは崩壊し、暴落が起るであろう。その影響は世界中に及ぶ。日本も再び返り血をあびて、日経平均は1万円を大きく割り込むこともありえよう、と著者は見る。
一方、ヨーロッパは通貨「ユーロ」により、ドル支配から抜け出す。基軸通貨がドルだけであった時代から、「ユーロ」と「ドル」という基軸通貨が並立する時代が来る。いったいどちらの通貨を持つのが有利か? 明らかにユーロである。(アメリカの巨額の貿易赤字と累積債務を見よ!)かくしてドルの信用は失墜し、ドルは暴落、アメリカはインフレ圧力にさらされて、金利引き上げを余儀なくされる、そして米国経済は一気に破綻へと追い込まれる、これが著者の描くストーリーである。

★大統領選における共和党の勝利と米国経済の失速がユーロ圏の経済ら及ぼす影響によって、このシナリオは成立しなくなったと思います。

そのような状況に日本が対処して行くためには、「米国債売却」を経済抑止力として使え、と著者は主張する。アメリカの経済は日本やサウジアラビアなどが買い支えている「アメリカ国債」によって生き延びているのだ。日本がそれ(総額約2兆ドル)を売りはじめたら、アメリカ経済はひとたまりもない。

★このシナリオも実現不可能だと思います。そんなことをしようと考えたことを知られた途端、即座に日本は世界の金融システムから遮断されることになるからです。また、最近の米国債の人気ぶりを見ると、売った傍から買い手がつくということにもなりかねません。

「むろん、日本も無傷ではいられないが、いざとなったら世界覇権国・米国を道づれにして奈落の底まで落ちてやる…我々にはそれくらいの覚悟がないといけない」「現在の日本は、目先の苦しさに耐えかねて、アメリカの圧力に完全屈服して、子々孫々、100年の禍根を残すに違いない愚かな対症療法を選択した。これは最悪の選択である。このあと、巨大なインフレが襲ってくる。不良債権や保障債務を抱え込みすぎて大借金で首が回らなくなっている金融機関やゼネコンは、倒産させるしかないのだ。助けようがないし、助ける必要もないのである。放っておけば倒れるものをいくら助けたところで、結局、山一証券のようにまた倒れるのである」。
「資本主義は倒産するから素晴らしい。潰れるべきものは潰れ、生き残るべきものはちゃんと生き残る。それが資本主義の資本主義たるゆえんである。ところが、そのように“神の手”に委ねるべき市場の原理に逆らって、米国エコノ・グローバリストの政治的圧力に屈した自民党政権は、民間企業に公的資金を投入することに決めた。やがて資本主義の精神から復讐されるだろう」。
以上が著者の「予言」の結びである。これから後、いったい日本経済はどのように動いていくのだろうか…。

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