投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 07 日 20:39:11:
「インフレ導入は断固として、国家総動員体制で臨むべきである」―欧州系の一部証券会社が最近、こんな激越な主張を打ち出した。日本経済はデフレスパイラルという「魔界」に踏み込んだ、したがってインフレ導入策は不可欠であり、金利上昇も国債バブルが破裂することで閉塞ムードが打破できるため歓迎すべき、という“堂々たる”インフレ必要論だ。しかし、現実の相場をみると、ここへきてデフレ経済下での「勝ち組」銘柄が相次いで暴落しており、「デフレ相場に、サヨナラを告げるミクロ面での傍証ではないか」といった声も挙がりはじめている。
●銀行株の「復調」が意味するもの
ユニクロのファーストリテイリング<9983>が既存店売上げの「35カ月ぶり前年実績割れ」という状況を嫌気し、5日、6日と連日のストップ安を記録。同時に、「価格破壊の帝王」を自負してきた家電量販店のコジマ<7513>も9月6日まで実に17日連続で株価が下落している。こうした動きは一見、デフレ・スパイラルが、デフレの勝ち組にまで巻き込んだことで、事態はいよいよ深刻と思われがちだ。
しかし、一方で9月6日は、みずほホールディング<8305>など大手銀行株が全面高の様相を呈した。「IMFの金融審査の受け入れに柳沢金融相も同意した、という報道を好感した結果」(大手証券)といわれているが、もともと銀行株はデフレで不良債権が拡大するジレンマに陥ってきただけに、見方によっては、デフレから脱するひとつのシグナルともいえる。
デフレを追い風にして躍進した銘柄が失速し、反対に逆風が吹き荒れていた銘柄が切り返すというここへきての展開は、デフレ相場そのものの「地殻変動」を示唆しているようだ。前週半ば以降、敬遠ムードが広がっている建設、不動産などを中心とする都市再生関連株も、「上昇トレンドの中の調整局面」(外資系証券ストラテジスト)との見方が有力。都市再生関連株が総じて「地価上昇」というインフレ機運でメリットを享受する銘柄であることはいうまでもない。
●ヘッジ・ファンドが暗躍
さて、昨年4月12日の2万833円から、すでに50%もの大幅な下落率を記録している日経平均だが、とくに今年6月以降の厳しい下げをリードしてきたといわれるのはヘッジ・ファンドだ。ヘッジ・ファンドは別名、「レベレッジ(梃子)・ファンド」ともいわれるように、金融デリバティブ(派生商品)をフルに活用して投下資金を大幅に上回る投資効果を狙うファンドだ。
下げ局面では株を借りて徹底的にカラ売り攻勢をかける。昔からあった、売りを得意とする大物仕手の信用カラ売り相場と本質的にはなんら変わるところはない。
●売り残拡大銘柄に照準
注目したいのは、こうしたヘッジ・ファンドの売り作戦に便乗して、個人投資家の間にも「売り安心」ムードが広がり、個別銘柄でも信用売り残が増えることで信用買い残との対比で表す貸借倍率が際立って低下している銘柄が続出しているという点だ。
信用売り残が多いことは、いずれ反対売買で買い戻さなけなければならない勢力がそれだけ厚みを増していることでもある。
8月末申し込み現在で、信用売り残が前週比で目立って増えているのは、前述のみずほホールディング、UFJホールディング<8307>、三菱東京フィナ<8306>などの金融株に加え、京成電鉄<9009>、KDDI<9433>、東芝<6502>、日立<6501>トヨタ<7203>、三洋電機<6764>など。売り叩かれた銘柄は、デフレ終焉相場では、大いなる反騰バネをつけた展開になりそうだ。
○URL
・みずほフィナンシャルグループ
http://www.mizuho-fg.co.jp/
・UFJ
http://www.ufj.co.jp/
・三菱東京フィナンシャル・グループ
http://www.mtfg.co.jp/
[楠英司 2001/09/07 12:25]
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