投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 07 日 10:50:50:
米格付け会社が六日、日本国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表したことは、日本経済の落ち込みが鮮明になるなか、構造改革と景気対策のはざまに揺れる小泉政権の経済政策運営をめぐり、その実効性を市場がきわめて冷徹に見つめていることを印象づけた。これにより、小泉政権が公約の国債発行三十兆円枠を崩した場合、長期金利の上昇によって市場から“しっぺ返し”を受ける恐れが強まった。補正予算論議が高まるなか、経済政策運営の選択肢はますます狭まることになりそうだ。(佐野領)
「非常に不可解だ。日本経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は狂ってないよ」
米社ムーディーズ・インベスターズ・サービスの判断について、塩川正十郎財務相は同日、記者団に反発してみせた。
ムーディーズによれば、今回の下方修正検討は日本経済が直面するデフレ圧力を重視した判断だ。デフレ圧力が国と地方の合計で六百六十六兆円にのぼる日本の公的債務を実質的に増大させて財政状態を圧迫、それとともに企業や金融機関の負担を増やす。小泉政権の構造改革に対しては「大変重要な意味を持つ」と好意的に評価しながらも、「中期的にデフレ傾向を変化させることができるとは必ずしもいえない」と指摘した。
ムーディーズの分析は、小泉政権が言うとおりに景気対策と構造改革を両立させ、日本経済を再び持続的な成長軌道に乗せることができるのかどうか、市場が抱える根本的な疑問を小泉政権に突きつけた。
こうした市場の見方を反映して、小泉政権の誕生とともに六月中旬には1・1%台まで下がった長期金利は、構造改革と景気対策の両立が焦点となるたびに神経質な動きを続け、現時点で1・4%まで上がっている。
小泉政権にとって長期金利の上昇が大きな打撃となることは間違いない。長期金利が上昇すれば、民間企業の投資活動が悪影響を受けるだけでなく、国債償還に伴う国費の負担増につながり、小泉政権が公約としてきた平成十四年度予算編成での国債発行三十兆円枠を守るためには一段と厳しい歳出削減が必要になってくるからだ。その分、景気対策に使える財政出動の余地が少なくなり、今年度の補正予算論議にも影響を与えそうだ。
小泉純一郎首相は四日、今年度の税収が五十兆円を下回った場合、国債発行が三十兆円を多少上回る可能性を示唆した。しかし、今回、格付け下方修正の可能性が強まったことで、国債発行三十兆円枠を守り抜き、日本国債の信用低下を防がないと、実際に格下げされ、長期金利の上昇(国債価格の下落)につながる危険性が増してしまった。
国債発行三十兆円枠を今年度補正予算に適用すれば、景気刺激につながる財政出動の余地は「数千億円になるかどうか」(財務省筋)という範囲となり、その効果は大幅に限定されてしまう。
景気の下支えと構造改革の両立を目指す小泉政権の政策運営は一段と厳しさを増すことになったといえそうだ。
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