投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 28 日 19:41:52:
ハイテク企業の業績回復が来年以降に大きくずれ込むことが確実になった。NEC<6701>、富士通<6702>の総合電機をはじめ、ローム<6963>や村田製作所<6981>、京セラ<6971>といった半導体や部品関連の有力メーカーが次々に今9月中間期における業績を下方修正、下期の業績回復にまったく手掛かりさえつかめない状況に陥っている。
今週から9月上旬にかけて東芝<6502>、三菱電機<6503>、日立製作所<6501>といった主力ハイテク企業による業績の修正発表が見込まれており、景況感のさらなる悪化は避けられない。バブル経済崩壊後の最安値圏をたどる株式市場では、主力ハイテク銘柄の総崩れで“株価1万円割れ”が現実味を帯び始めた。
●環境変化に対する日本企業の対応のまずさ
「市況は底辺がかなり長いU字型の底をたどっており、今年度中の回復はない」(秋草直之・富士通社長)、「(ITの長期成長に向けた)一時的な陣痛ではあるが、回復の見通しは読めない」(西垣浩司・NEC社長)―。歯止めがきかないIT不況を目の当たりにし、今でこそ悲観論が台頭しているハイテク業界だが、これほどの業績の読み違いを引き起こしたのは、環境変化に対する日本企業の対応のまずさに尽きる。
昨年後半から米国のIT減速という危険信号が点滅していたにもかかわらず、今期も相変わらず強気の業績見通しを示した日本企業。この大きなギャップこそが業界だけでなく、マクロ経済全体をも混乱に陥れた元凶といえるだろう。
●良すぎた業績見通しが悪材料になるという皮肉な事態
主力ハイテク企業の業績見通しに異論を唱えたのが株式市場だ。ドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン証券は今年5月末に「ハイテク企業の下期回復シナリオは過度に楽観的」とのレポートを発表、中間期での業績修正は避けられないとの見解を示した。その後市場は、ハイテク企業に対する懐疑心が一気に広がり、好決算数字を示したはずのソニー<6758>や富士通などはジリジリと売り込まれ、年初来安値を連日更新、良すぎた業績見通しが悪材料になるという皮肉な事態を招いてしまった。
ハイテク銘柄の株価下落は、株式市場全体の上値をも抑え込み、現在低迷する日経平均株価はハイテク企業の読みの甘さが引き起こしたといっても過言ではない。
●ソフト・サービスへの路線変更に8年を費やした米IBM
今後株式市場が注目するのが、IT不況がどこで反転するかが最大の焦点。アナリストの判断を総合すると「在庫調整のめどがつく来年7〜9月ごろが底入れ」との見解が多いが、業績回復が本格化するには時間がかかることは避けられない。半導体依存度を低め「ハードからソフトへ」と事業構造の変革を目指す日本企業だが、かつて同じ道をたどった米IBMがソフト・サービス路線をようやく軌道に乗せるまでにおよそ8年の年月を費やしている。それだけに移行期にあたるここ2〜3年は高い収益は期待できない。
●半導体依存から脱却など新しい「負の遺産」の処理
富士通が2004年3月期でROE(株主資本利益率)10%を、NECが2005年3月期でROE15%を見込むが、メーカーとしては高過ぎるとも思えるこれらの数字(ROE)を本当に実現するには、さらなるリストラが不可欠といえるだろう。日本のハイテク企業は固定費削減や半導体依存の脱却という新たに生じた「負の遺産」の処理に追われることになる。
○URL
・NEC
http://www.nec.co.jp/
・富士通
http://jp.fujitsu.com/
・ローム
http://www.rohm.co.jp/
・村田製作所
http://www.iijnet.or.jp/murata/index_j.html
・京セラ
http://www.kyocera.co.jp/index1.htm
・東芝
http://www.toshiba.co.jp/index_j3.htm
・三菱電機
http://www.melco.co.jp/indexnj.html
・日立製作所
http://www.hitachi.co.jp/
・ソニー
http://www.sony.co.jp/
[伊野下亘浪 2001/08/28 10:59]