投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 28 日 15:28:46:
「身の置き場所がないんや」。2年間、職がなく野宿生活を続けていた元ガラス取り付け業の男性(61)が大阪市内の就労支援施設でつぶやいた。全国の失業率が悪化する中、最悪レベルの6%台が5カ月も続く近畿地方。特に中小企業の多い大阪の雇用事情は極めて厳しい。「大企業のリストラで、若い人も失業すると、ぼくらみたいな高齢者の再就職は不可能になる」。「痛みを伴う構造改革」に、男性は不安を募らせている。
男性は28日、1年半ぶりに職業安定所に向かった。「仕事を見つけるのは無理と思うけど……」。全国最多、約1万人の野宿者を抱えるといわれる大阪市。東淀川区に昨年12月、野宿者の入所型就労支援施設「自立支援センターよどがわ」が開所した。入所者70人の平均年齢は52・7歳。行政が職業訓練として提供する清掃作業に従事する人、職安に行く準備をする人、病院に行く人……。あきらめとわずかな希望が交じった一日がまた始まった。
約5年前、建設業界の不況から取引先が連鎖倒産。瞬く間に男性の商売は傾いた。当時は離婚して、既に独り暮らしだった。盛り返そうとしたが失敗。2年前から公園で野宿しながら、最初のころは職を求め、近くの職安に毎日通った。フロアにひしめく失業者は100人以上にも。競争の激しさにひるんだが、資料をめくって高齢者でも就労可能な会社を探し、職員にあっせんを頼んだ。しかし、実際に企業に問い合わせると「もう採用枠は埋まってます」。どの企業も同じ答えだった。あきらめの気持ちが強まり、足が遠のいた。
昨年春、「何とかせんといかん」と久しぶりに職安に出かけた。かつて仕事をしたことのある鋳物加工で、ある工場が「65歳まで」の条件で求人票を出していた。しかし、断られた。
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自立支援センターは野宿者支援の拠点として大阪市などが国に働きかけて昨年度から開設され、現在、同市や東京都など3都府県に7カ所ある。国の補助で自治体が設置・運営し、野宿生活で乱れた生活リズムや体調を整えながら、就職先を探す。大阪市の3施設で就職できた人は、入所者総数555人の24%。しかも、正社員などの安定した雇用はほとんどない。
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男性は今年7月にセンター入所後も、仕事を探している。「失業したら、小泉首相が言う『痛み』どころでは済まん。仕事がなくなるほど寂しいことはない」。男性は力なく笑った。 【麻生幸次郎】
[毎日新聞8月28日] ( 2001-08-28-15:17 )