投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 7 月 29 日 18:36:15:
調査レポート
1999年2月26日
財政再建の将来ビジョン
−財政危機の克服に向けて−
さくら総合研究所 平野正、近藤学
要旨
最近、国債の大量発行に伴って、長期金利が上昇している。確かに、現在は経済・金融の緊急事態であり、景気下支えや金融不安解消のための国債の大量発行(巨額の財政赤字)はやむを得ない面がある。しかし、長期金利の上昇は、財政赤字の弊害が現実味を帯びてきていることを示している。今こそ、国民一人一人が財政実態を直視し、中長期的な観点から財政改革にどう取り組むかを考える必要がある。
財政再建を考えるには、まずプライマリーバランス(国債費と国債発行額との差)を回復することによって、国債費(=国債償還費+利払費)をまかなうためにさらに国債を増発することを改める必要がある。そうでなければ、国債残高が累増(国債残高が発散)し、遂には財政破綻を招く。また、国債残高が高水準になると、多くの弊害が生じる可能性が高いため、残高を縮小していく必要がある。そこで、第1段階の2000〜2009年度で国債残高の発散の回避を目指し、次いで第2段階の2010〜2025年度で国債残高の縮小を目指すとの2段階の財政再建の道筋を考えた。
財政再建の目標を、(1)社会保障費を除いた一般歳出の削減だけで達成する場合と、(2)増税だけで達成する場合の2つの極端なケースを設けて試算すると、(1)では、99年度の一般歳出(除く社会保障費)31.7兆円のうち87.1%に相当する27.6兆円を2025年度までに削減しなければならなくなる。例えば、国家公務員数は99年度の115万人から2025年度の15万人へと100万人削減しなくてはならない計算になる。一方、(2)のように増税だけで財政再建目標を達成しようとすれば、57.9兆円の増税が必要になる。これを例えば消費税の増税でまかなおうとすると、消費税率を約19%に引き上げる必要がある。
両極端のケースは、国民が財政再建の選択肢を考える上での幅を示すものと言えよう。いずれにしても、財政再建は今後長期にわたる厳しい道程になると考えられる。しかし悲観的に見すぎてはならない。現在は財政危機に足を踏み入れた状況であり、将来の財政破綻を避けることは充分可能である。財政再建は歳出の削減や増税だけでは達成できない。日本経済が再び活性化することが大前提である。今後は、社会保障費も含めて個々の歳出の必要度合や税制のあり方について国民の間で議論を深め、経済の潜在成長力を高めるような財政改革を進めなくてはならないと考える。