投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 22 日 17:05:36:
以下の報道がありましたので、ご参考までに、お送り致します。
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デフレ不況が続く中、日銀に対し、一定の物価上昇率を設定するインフレ・ターゲット(目標)を導入すべきとの政府・与党の圧力が日増しに高まっている。
“火の手”は竹中平蔵経済財政担当相、塩川正十郎財務相、舛添要一参院議員らから次々と上がり、導入に否定的な日銀・速水優総裁は孤立無援の状態。
もっともインフレ目標の効果は未知数で、背後には政治の無責任ぶりや、借金を減らしたい財務省の強い意向も透けて見え、政争の具に利用されているだけとの疑念もある。
「(インフレ目標の導入など追加措置を)考えざるをえない時期にきている」−。ついに竹中担当相も、19日のテレビ番組で、インフレ目標導入を求め始めた。
内閣ではすでに塩川財務相が「日銀の独立性は世論や政府の意向をくんだ上でのもの。物価下落をどの程度で抑えるのか議論してもらいたい」と日銀に要求している。
さらに自民党内でも、舛添要一参院議員と渡辺喜美衆院議員、大蔵省出身の山本幸三衆院議員らが、「日銀法改正研究会」を設立、日銀法を改正して日銀総裁の解任権条項を作ろうとしている。
舛添氏も「1−4%のインフレ・ターゲットを決め、通貨供給量を増やすべき」と主張している。
インフレ目標とは、インフレ率に中長期的な数値目標を設定し、その数値を達成すべく金融政策を行うもので、カナダや英国などで導入されている政策。
インフレというと、物価上昇の歯止めがきかなくなるのでは、という懸念もあるが、「ヘリコプターから金をばらまく」とたとえられ、国債の大量引き受けなどあらゆる手段を投入する「調整インフレ」とは違い、インフレ目標の場合は物価上昇率を一定の範囲に抑制できるというのが彼らの主張だ。
こうした政府・与党の要請に対し、日銀の速水総裁は「インフレ目標レートを設定し、何が何でもそこへ持っていく、などというバカな金融政策はありえない」と真っ向から反論。
増淵稔理事もテレビ番組で「中央銀行としてどうしても譲れない一線もある。守るべきものは守り通す」と竹中担当相に反論している。
もともと日銀は、物価が上昇して貨幣の価値が下がるインフレを防ぐ立場を大切にしている。
これが日銀がインフレ・ファイターといわれる所以でもあるのだが、ことインフレ目標に関しては、これまでの日銀の金融政策が内外の評判が悪いだけに、防戦一方、との感はぬぐえない。
インフレ目標を導入することで、消費者は物価が上がる前にモノを買い、企業も設備投資を進めることで景気が回復する、というのがインフレ論者の主張。
激しいインフレにならずに景気回復できるのなら喜んで賛成したいところだが、果たしてそんなにうまくゆくのか。
あるシンクタンクのエコノミストは「そもそもインフレ・ターゲットとは、インフレ、つまり物価上昇を抑制するために目標数値を設定するもので、デフレの状態から、物価を上げようという政策はどこの国もやったことがない。諸外国の例を挙げるのはまったくアンフェアだ」と指摘。
さらに、驚いたことに「インフレ目標政策は、実質的に導入されている」と証言するエコノミストもいるのだ。
「インフレ目標というと何かまったく新しい政策を導入するかのようだが、手法は国債の引き受けなど公開市場操作を通じた量的緩和が中心。これは日銀が3月から導入した物価上昇率がゼロ%となるまで量的緩和を続けるという政策と同じで、インフレ目標は緩和の度合いをさらに緩めるだけ。それほど効果がないことは実証済みともいえる」(同)幽霊の正体見たり、とはまさにこのことだ。
日銀がこれまで景気判断を誤ったのは事実で、速水総裁更迭論が出るのも理解できる。
また、デフレから脱却しないと、不良債権はいつまでたっても減らないのも事実。
ただ、景気回復には為替政策や財政政策と一体の政策が必要なのに、「借金を減らすことに頭がいっぱいの財務省、そして経済政策の失敗をあらかじめ日銀に押し付けておきたい政府・与党の陰謀ではないか」(市場筋)というのでは納得できない。
また、仮にインフレが進んだ場合も、われわれサラリーマンにとっては、物価だけ上がって給料は上がらない、という最悪のケースも想定できるのだ。
「構造改革待ったなし」と言っておきながら、株価が下がり続けても“一喜一憂”せず、のんびり夏休みでキャッチボールを楽しんでいる人がトップにいるこの国の経済対策の現実が、単なる責任のなすりつけ合いでは寂しい限りだが…。