投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 22 日 12:00:37:
日銀が追加的な量的緩和策の拡大を決めてから二十一日で一週間が経過した。景気悪化とデフレに歯止めをかける“決意表明”だったが、市場では円高・株安が進み、景気底割れ懸念も出始めている。「さらなる緩和」を求める日銀への風圧は強く、金融政策の求心力が問われそうだ。(小島清利)
「今回の賞味期限はたった一日か:」。日銀の追加緩和から一週間、市場関係者は、ため息まじりにこうもらした。
今回の追加緩和策は、金融機関が日銀に預ける当座預金残高目標を六兆円に、長期国債の買い切りオペレーションを月額六千億円にそれぞれ増額するという内容だ。
発表当日こそ、株価はほぼ全面高となったものの、翌日は反落。二十一日には東証株価指数(TOPIX)が一時、年初来最安値を割り込む低空飛行のままだ。円安に振れた外国為替市場も米国経済の下ぶれ懸念に対し、国際通貨基金(IMF)がドル急落の危険性を指摘したことを受けて円高が進行している。
こうした市場の反応の鈍さの背景には、一向に盛り上がらぬ企業の資金需要がある。追加策を通じて貸し出し資金をさらに潤沢にし、企業への資金流入も増やす。これが、日銀の描く「回復シナリオ」の骨格でもある。しかし、ニッセイ基礎研究所経済調査部門の櫨(はじ)浩一・チーフエコノミストは、「企業は投資より借金返済に懸命。量的緩和で景気を下支えする日銀の思惑と正反対の方向に、市場は動きつつある」と指摘する。
追加緩和策には、景気浮上への心理効果を狙う面もあったが、それも長続きせず、「追加策が政治的な圧力に押し切られた印象を与えた」(アナリスト)との見方も少なくない。三月の量的緩和策の導入後、速水優総裁が「これ以上の量的緩和を行っても実体経済への効果は薄い」と表明していただけに、今回の決定は日銀への不信感を招く材料になったわけだ。
「『予想外』の驚きで一時は反応を示したものの、時間がたつに従って具体的な効果への期待が薄れていった」(市場関係者)。第一勧銀総研の真壁昭夫・主席研究員は「日銀の金融緩和策は新しい手を打つたびにその効果の持続時間が短くなっている」という。
株安・円高が進む背景には、世界経済を引っ張る米国経済に予想以上のブレーキがかかり、先行きの不透明感が広がっていることが大きい。ただ、日銀の金融政策の効果が期待される金融市場でも、今回の追加策がわずか一週間のうちに“息切れ”の印象を与えたのは確かだ。このまま、何らの効果を発揮しないまま、次の手を打っても、日銀の金融政策の「限界」を指摘する声が高まる可能性もある。
日銀幹部は、追加緩和後の経済状況を踏まえ、「さらなる金融緩和策としてどういう手段が考えられるか。柔軟に考えていく」としており、市場や消費者に与えるインパクトを重視しはじめたようにもみえる。