投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 21 日 07:33:13:
政府が金融政策の指針として日銀にインフレ目標の導入を求める機運が高まってきた。株価低迷や円高がデフレ傾向を加速させて構造改革の足を引っ張る恐れが広がるなか、小泉政権には「日銀は『デフレ・ファイター』として自らの位置づけを強烈に国民に訴えてほしい」(竹中平蔵経済財政担当相)との期待が強いためだ。だが、インフレ目標の導入は、調整インフレ論と議論が混線している一面もあり、警戒する日銀と政府の溝はなかなか埋まりそうにない。(佐野領)
「日銀の独立性は世論や政府の志向をくんだうえでのものだ。物価下落をどの程度の期間で抑えるのか議論してもらいたい」
塩川正十郎財務相は日銀が追加的な量的緩和を決めた十四日、「日銀の独立性は尊重する」としながらも、デフレに歯止めをかける金融政策の運営目標を明示するよう日銀に求めた。
与党の一部には、さらに強硬な意見として、インフレ目標の導入から首相による日銀総裁の解任権までを視野に入れた日銀法の改正構想さえ浮上している。
中央銀行による物価誘導目標の設定は、米マサチューセッツ工科大のクルーグマン教授らが主張する「調整インフレ論」と、英国や豪州などで採用されているインフレ目標の導入という二つの議論に大別される。
調整インフレ論は、日銀の国債引き受けなど非常手段を含め、一定の物価上昇率を実現するためにあらゆる政策を投入する立場だ。ただ、旧日銀法の下で戦前に戦費調達のために日銀が大量の国債を引き受けた結果、軍事費の増大に歯止めが利かなくなったうえ、戦後に超インフレを引き起こした苦い記憶がある。
一方、小泉政権のなかで積極論が広がっているのは、海外に採用例があるインフレ目標の導入だ。金融政策の著名な学者であるテイラー米財務次官は、米スタンフォード大教授時代からインフレ目標の導入を「金融政策にぶれが生じないようにする抑止効果がある」と高く評価、政策運営のガイドラインとして調整インフレ論と区別している。英国は一九九二年の欧州通貨危機で欧州単一通貨圏からの離脱を迫られた結果、金融政策に対する信頼性を保つ目的で導入した。
主に物価上昇局面の金融政策変更とからめて論じられていたのだが、テイラー氏は、あわせて「金利がゼロに近づいた状況では、金利変更ではなく、通貨供給量の調節が有効」と説いている。「デフレ局面で金利がゼロに近い経済状況」といえ、現在の日本にあてはまる。竹中経済財政担当相らの「デフレ・ファイター論」はテイラー氏の意見に近いといえる。
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≪インフレ目標≫
インフレ率にある程度、長い目でみた数値目標を設定。その達成を目的に金融政策をとり、インフレ見通しなどを公表するなどして政策の透明性を確保し、物価の安定へ向けた政策運営に対する国民の信認を高める枠組み。ただし、中央銀行による国債の大量引き受けなど、あらゆる手段を用いてインフレの目標を実現しようとする「調整インフレ政策」とは違う。