投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 19 日 10:58:27:
甲子園のネット裏でスピードガンをのぞくサングラスの男たち一団が年々目立つようになっている。米大リーグのスカウトだ。イチロー(マリナーズ)の活躍もあってか、今大会ではその数が倍増。日本プロ球団からのスター流出が進むなか、高校球界までもメジャーの「草刈り場」になるのだろうか−。
■「ハングリーな場でやる方が」
球速を測るスカウトのまなざしがひときわ光ったのは十六日の日南学園×玉野光南戦だった。日南のエースで大会屈指の右腕・寺原隼人投手のストレートが甲子園史上最速となる時速154キロを記録。この球威に対する評価は日本の球団よりメジャースカウトの方が高かったようだ。
ロッキーズのケント・ブレイザー国際スカウトは「持っているものが違う。大会後も調査は続ける」。
ブレーブスの大屋博行・国際スカウトも「スピードならアジア一。アメリカでの将来性は松坂(西武)以上」と太鼓判を押す一方で「精神面を鍛える上で、どこで育てるかが大事。日本だとチヤホヤされる。(マイナーの)1A、2Aといったハングリーな場でやる方がいい」とアドバイス。大成するためにも米国行きをすすめていた。
メジャースカウトたちが目をつけるのはこの寺原だけではない。今大会では十数人の大リーグスカウトが調査に当たっており、出場四十九チームを丹念にチェックしている。視察する顔触れの中には、野茂英雄投手の在籍した当時のドジャース監督で今は同球団副社長のラソーダ氏もおり「いつか甲子園大会を見たいと思っていた」と笑顔を見せながら、メジャー入りの期待できる選手数人の名前を挙げていた。
■90年代前半からスカウト活動
こうしたメジャーの日本でのスカウト活動が始まったのは一九九〇年代前半といわれ、草分けとなったのは現在、野茂投手の所属するレッドソックスだ。同球団の国際担当・牛込惟浩氏によると、そんな日本でのスカウト活動が各チームに広がったのは九五年に野茂投手がドジャース入りし、成功して以降。財政的に余裕のある五、六球団が日本のほか、韓国、台湾、オーストラリアを巡回して活動する「環太平洋担当」という形でスカウトを配置したという。
■鈴木投手ら16人 高校から入団
彼らのスカウティングにより、これまで鈴木誠投手(現ブルワーズ)ら十六人が日本のプロ球団を経ず、高校から直接、米球団に入っている。この中で今も残っているのはわずかで、成功しているとは言い切れない。それでも、昨年の佐々木、今年のイチローというマリナーズの両選手の活躍で、日本高校球界に対する大リーグのスカウト活動は加速している。
牛込氏は「特にイチローの影響は大きく、ヤンキースのオーナーは獲得できなかったことを激怒。このため同チームのスカウトはかなり長期間、日本に滞在しています」と明かす。
ただ、大リーグがいくら高校球児に触手を伸ばしても、日本のプロ球団がドラフト会議で指名すれば、その選手を獲得することはできなくなる。ドラフト指名確実な寺原投手クラスのルーキーを直接引き抜くことは実質的に不可能だ。にもかかわらずメジャーが日本での調査に熱心な理由について、別の大リーグ関係者はこう説明する。
「メジャーは日本のスカウト能力を見下している。イチローが日本のドラフトでは指名されるかされないかの下位指名だったことを知って米国のスカウトはあきれてます。どんな目をしているんだって。それで日本のドラフトにかからない選手の中にも宝は埋もれていると確信してますよ」