投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 17 日 22:53:11:
日銀が政治圧力に押し切られる格好で、8月14日に量的緩和措置の拡大を決めた。しかし、当の速水優総裁が「どれだけ資金需要のプラスになるか分からない」と語ったように、追加緩和の効果は限定的との見方が大勢だ。今年3月、日銀が最初の量的緩和に踏み切った際、「短期的な景気の上向き」を期待して日本株を大幅に買い越した海外投資家も、今回は非常に冷淡だ。
●第1次量的緩和時は絶好のタイミング
3月の緩和時には「現在ほど米国株式市場が冷え込んでいなかった」(米系証券)という事情がある。海外投資家、とくに米系の機関投資家は、本国で株式運用が好調な時期に海外の市場にも目を向け、更なる収益機会を得ようとする傾向が強い。また3月のタイミングは、日本の政治不信、金融不安の高まりを経て、平均株価が1985年1月以来の水準に落ち込んだ直後だった。そこで「量的緩和を機に、日本株が緩やかではあるが回復軌道に乗る」(同)と見られたわけだ。
加えて、世界的なハイテク不況が夏場から秋口にかけて底を打つとの見通しが大勢だったため、「グローバルでシクリカル(循環的)な景気回復論議が盛んだった」(銀行系証券)。さらに小泉政権の誕生とともに「構造改革への期待感も高まった」(同)。
長年、日本株をアンダーウエート(市場平均以下)に放置してきた海外投資家は、日銀の第1次量的緩和を材料に日本株を買い越した。
●“追い風”はなし
ところが、今回の追加緩和には第1次のような“追い風”は一切ない。まず米国のハイテク不況の着地点が依然として見えてこないうえに、FRB(米連邦準備理事会)がベージュブック(地区連銀報告)の中で「個人消費にかげりが出ている」と指摘するなど、足元景気が黄色から赤信号に変わろうとする微妙な時期だ。
米主要株式指数も調整が長引くなど、「とても海外機関投資家が日本株を積極購入するタイミングではない」(先の米系証券)といえる。
また、第1次量的緩和時に期待した「短期的な景気回復」も全く的外れとなりつつある。構造改革についても、「公的部門の話題が中心で、肝心の銀行の不良債権処理問題は全く進展していない」(同)。
●海外勢、嫌気売りの懸念も
日銀が意外感のある第2次緩和を発表した直後は、「ポジションをショート(売り)に傾けていた向きが一斉に買い戻しを強いられた」(外資系運用会社)ことから、平均株価、東証株価指数(TOPIX)ともに急騰した。だが、翌15日は利益確定売りと戻り
待ちの売りに押され、あっという間に両指数ともに値を消した。「第1次緩和後の外国人買いを思い出し、買い戻しに便乗したディーラーが多かったようだが、読みが甘い」(同)との声が海外勢から漏れる。
第2次緩和に非常に冷淡な反応を示す海外勢。問題なのは、彼らが第1次を機に買い越した日本株が今後どうなるかだ。この際の理由付けの大半は「短期的な景気回復期待」である。今後日本の景気が劇的に上向く可能性は低い。むしろ「追加緩和が必要なほど実体経済が悪いのか」と判断され、海外勢の嫌気売りを誘わなければ良いのだが。
[相場英雄 2001/08/17 14:02]