投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 16 日 19:57:43:
16日の東京株式市場では、1ドル120円を割る円高ドル安の進展を受け、ハイテク株中心に売られて日経平均は大幅続落した。円高ドル安の第1の要因は「米国の産業界からドル高の修正を求める声が強まり、産業界寄りとして位置付けられるブッシュ政権がドル高政策を転換するとの思惑が生じた」(都市銀行デリバティブ営業担当者)ためと見られている。15日にオニール財務長官は政策変更はないとの認識を示したが、ドル高が米国の金融緩和策を帳消しにしているとの観点から「中長期の視点では”強いドル政策”は変わらないとしても、当面はドル安を放置する可能性は否定できない」(同)と見られている。また、「ドルと通貨をリンクしているアルゼンチンの救済の意味合いからドル安が進んだ部分もある」(投資顧問会社ファンドマネージャー)との見方もあった。
日本銀行による一段の金融量的緩和実施は「円安を加速させることが狙いの1つ」(投資顧問会社ファンドマネージャー)と見られていた。円安にはデフレを後退させるほか、企業収益を下支えする効果がある。「日本の不良債権処理、構造改革の前提としてゆるやかな円安は絶対条件」(同)との声は多い。一段の金融量的緩和を実施してすぐに為替相場が急激な円高ドル安に見舞われてしまう打撃は大きい。
当然ながら16日の東京株式市場ではハイテク株が売られ、ハイテク株の影響度の大きい日経平均は大幅続落した。もともとIT不況長期化の観点から収益環境が悪く、売り圧力の強かった輸出型ハイテク企業にとって、ここでの円高進展はまさに「泣きっ面に蜂」となる。もちろん、ハイテク企業は1ドル115円程度を前提に今期収益計画を立てている企業も多いため、1ドル120円を割った程度の円高ですぐに収益が再下方修正されると言う次元の話ではないが、ナーバスな状態にある株価がネガティブな反応を示すのは自然だろう。
株式市場では円高を受けたハイテク株の下げにより日経平均こそ下げたが、建設・不動産・電鉄などの内需株は引き続き買われた。日経平均が年初来安値圏にあるとはいえ、16日の新高値銘柄数は52と新安値銘柄数48を上回る。「ここでの円高進展はハイテク株に見切りを付け内需株を買う動きを促進させる。物色の方向性を明確にする上でさほど悪いことではないのでは…」(中堅証券営業担当者)と、やや乱暴だがこのような見方もできる。
ただ、問題はこれら内需株が国内景気が良くなるとの見方から買われている訳ではなく「消去法的な発想で買われている」(スミセイ・グローバル投信田原俊男チーフファンドマネージャー)点だ。「建設・不動産業界については、不良債権処理の具体的なスキーム作りの進展がないこと等を考慮すると、本来は積極的に買えるセクターではない」(同)と言える。それでもハイテク株を買えない資金は内需系銘柄に流れ込み、結果的に内需株がアウトパフォームする展開が考えられる。東京ガス<9531>が2500万株、三菱地所<8802>が1900万株弱の商いをこなして高値を更新する光景は、80年代半ばから後半にかけての内需株相場を彷彿とさせる。そしてこの内需株人気はハイテク不況の凄まじさを逆説的に表現している。(S.K)