投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 16 日 19:46:27:
株価低迷企業のCB(転換社債)発行が、ちょっとした流行となっている。第一家庭電器<8172>、リキッドオーディオ・ジャパン<4740>などネット証券を利用する個人投資家に人気の銘柄も数多いが、同じ経営不振銘柄でも額面割れゼネコン株とは違った値動きを見せるので、注意が必要だ。
●シワ寄せは一般株主に
経営不振企業にとって最大の懸案事項は資金調達だ。メーンバンクは追加融資どころか、資金回収策を練っている。増資をしようにも新株の買い手が見付からない。こんな場合に私募CBが利用されるケースがある。
時価より低い価格で株式に転換できることを条件に投資家からカネを引き出すケースが多い。かくしてCBの買い手は、ほぼノーリスクでCBを株式に転換し、さっさと売り抜ける。一般株主はCBから転換した株式の利食い売りで、株価が値下がりするのを見ているしかない場合も。「私募」のCBは、日本人の運営する海外ファンドなど特定の投資家が全量を買い取り、取引所で売買されることはない。
●情報漏れ疑惑も
経営破たんさえ懸念される企業が大口の資金調達をするとなれば、当然、市場は買いで反応する。増資やCBの発行は、東証が即時開示事項として指定する最高レベルのインサイダー情報だ。しかし兜町では、正式発表の数週間前から、大引け後の茶飲み話として語られ始め、株価が上がり出すこともある。私募CBの買い手が、一部の仕手筋と結託していると疑われても止むを得ない情報管理の甘さだ。
●法的にはクロに近い灰色
株主以外の者に極端に安い価格で新株を発行する際には、株主総会の決議が必要になる。時価の3分の1程度なら商法上の「特に有利な発行」に当たり、取締役会の独断では新株を発行できないとするのが通説だ。
しかし、証券関係の訴訟に詳しい弁護士によると「取締役会だけの判断で時価の半値程度の発行をしても、灰色だがクロとは言い切れない」。株主代表訴訟を起こしても「資金調達できずに倒産する方が株主の利益を損なう」と経営側に反論されたら、既存株主に勝ち目はないという。
●「宴の後」に残るもの
私募CBを発行したある企業の役員は「調達した資金は借金の返済や運転資金に充てたので、もう手元には残っていない」と打ち明ける。これで会社が立ち直れば問題はない。だが、経営再建の見通しが立たないままCBから転換した膨大な株券だけが残り、1株当たりの資産や利益の希薄化を招いて株価を圧迫している企業もある。
値下がりリスクが大き過ぎるとして、私募CB銘柄の信用買いを断る証券会社もあるほどだ。
経営不振銘柄での値ざや稼ぎを試みるには、私募CBがある場合、その転換価格をチェックすることが必要だ。転換価格を超えると、私募CBから化けた株式が市場に売りに出されるため、そう簡単には上値を狙えないことになる。
■URL
・第一家庭電器
http://www.daiichikaden.co.jp/
・リキッドオーディオ・ジャパン
http://www.liquidaudio.co.jp/
[半沢昭悟 2001/08/16 09:46]