投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 10 日 20:31:52:
9月中間決算に向け、株式市場では銀行と事業法人による持ち合い解消売りが活発化している。当然ながら解消売りは需給面から株価を圧迫する“悪者”だ。こうした中、持ち合い解消売りに思わぬ“難敵”が登場し、関係者が頭を抱えている。
●“難敵”とは・・・
持ち合い解消売りとは、銀行と取引先企業が互いに株式を保有し合い、安定経営を目指してきた日本独特の慣行だ。ただ今年度の場合、時価会計が導入され、保有株式に含み損が生じた場合には経営に重大な影響を及ぼすため、例年にも増して持ち合い解消売りが活発化している。
特に銀行の場合、含み損の6割が剰余金から差し引かれ、経営の根幹を揺るがす恐れが大きいため、解消売りのピッチを上げざるを得ない事情がある。こうした環境の中で、銀行側に重大な誤算が生じている。それは、銀行から企業に派遣された財務担当役員たちの存在だ。彼らが持ち合い解消売りに難色を示し「思わぬ難敵として立ちはだかっている」(大手銀行筋)というのだ。
●必死の財務担当役員
“難敵”と揶揄(やゆ)される側の財務担当役員にも厳しい事情がある。企業に役員として派遣されたものの、リストラが加速する銀行に戻れる確率は最近極端に減っている。当然のことながら派遣先企業に骨を埋める覚悟が固まってくる。こうした状況の中で出身行から持ち合い解消の打診がくれば「派遣先企業の利益を優先せざるを得ない」(関係筋)事情が生まれてくる。
ある大手製薬会社と取引行との間でこんなやりとりがあった。この製薬会社には大株主の取引銀行から財務担当役員が派遣されている。この役員氏も大半の“パラシュート組”と同様、銀行に戻れる確率は低い。
持ち合い解消要請が銀行から来たものの「数カ月の間、頑として首を縦に振ってくれなかった」(銀行関係者)という。株式市況が低迷を続け、企業側としても自らの株価を圧迫するディールには簡単に乗れない、という切羽詰った事情がある。
●結局売り遅れに・・・
銀行側の説得が実り、結局この担当役員は解消売りに「OK」のサインを出したという。しかし「当初予定よりも大幅にスケジュールが遅れ、その間、相場全体が急落、様相が一変してしまった」(同)と銀行側は嘆く。
この間、他行が大口の国内機関投資家に市場外取引での持ち合い株引き取りを要請して回った結果、「“はめ込み先”が極端に狭まってしまった」という事情も。この製薬会社の株を海外機関投資家にはめ込もうと努力したものの、「成果は芳しくなく、結局市場で直接売る部分が出てくる」(別の関係筋)ことが必至だという。つまり、巨額の売り物が市場に直接持ち込まれるわけだ。
●売り遅れ銘柄の行く末
時価会計の影響で今後、持ち合い解消売りが例年よりも活発化するのは確実だ。また、これを快く思わない先の役員氏のような担当者がいるのも事実。各種アナリストレポートで、持ち合い解消売りが確実視される銘柄が一覧できる資料は多数でている。
だが「企業側役員の抵抗で売り遅れが出ている銘柄は相当な数に上る」(市場筋)との側面もある。売り遅れ銘柄の多くは持ち合い解消売りの受け皿ともいえる「市場外取引」ではなく、「市場取引」に出される可能性が高く、思わぬ下落要因となり得る。それだけに十分な注意が必要といえそうだ。
[相場英雄 2001/08/10 14:14]