世界初のクローン人間の妊娠に成功したと発表したイタリアのセベリノ・アンティノリ医師の友人で、科学専門記者のジャンカルロ・カルツォラリ氏は9日、朝日新聞に対し、クローン技術で妊娠したとされる女性は体細胞の核を提供した男性(父親)の妻ではなく、クローン人間計画に協力しているグループの女性の一人、と医師から聞かされていることを明らかにした。
カルツォラリ氏によると、核を除いた卵に体細胞の核を移植した「クローン胚(はい)」を約10人の女性の子宮に移し、必要な処理をしたところ、1人だけが着床に成功したという。男性の妻はホルモンなどの状態が条件に適さないとして、初めからクローン胚を試さなかった。
同氏のこれまでの取材によると、医師のチームは卵の提供協力者を1千〜2千人確保。提供された卵がクローン胚を作るのに適しているかどうかのふるい分けには世界各地の研究者が参加している。日本でも西日本のある大学に勤務していた外国人医師が協力していたという。
同氏は「妊娠8週目」との発表後の先週、医師から電話を受けた。計画を進めている場所は特定しなかったが、「今は(アラブ首長国連邦の)ドバイから電話している」と言った。同氏が「妊娠3カ月前に発表するのは早すぎないか」と指摘すると、医師は不機嫌になったが、「いずれにせよクローン技術による妊娠は本当だ」と強調した。
体細胞クローン技術で生まれた動物は早老現象や、反対に長生きする現象が起きる可能性も指摘されているが、医師は「人間にはその問題はない」と述べたという。(07:21)