湖沼に生息するオオクチバス(ブラックバス)の刺し身を食べた女性が、寄生虫病の一種「日本顎口虫(がくこうちゅう)症」を発症したことが、国内で初めて確認された。ブラックバスの料理法はインターネットでも紹介され、愛好家も増えているが、専門家は「生食だけは絶対に避けて」と警告している。
この女性は昨年5月、秋田市内の貯水池で近所の人が釣ったブラックバスをもらい、刺し身で食べた。約2週間後、おなかに赤い斑点が3か所現れ、太さ2―3ミリの線状の腫れが、最長約50センチになった。
腫れは寄生虫薬で2か月後に治まったが、検査した秋田大は、女性が冷凍していたバスの切り身から、長さ約1ミリの日本顎口虫の幼虫7匹を発見。この池で捕獲したバス9匹中6匹からも、この虫が見つかった。
日本顎口虫は淡水魚に寄生し、生で食べると感染、消化管から皮膚表面へと移動しながら、みみず腫れを起こす。通常は重症化しないが、ライギョやドジョウの生食で感染する「有棘(ゆうきょく)顎口虫」は、皮膚に大きなこぶができたり、まれに脳に虫が侵入して脳炎を起こすことがある。
ブラックバスは、被害に悩む自治体や漁協が再放流しないよう呼びかけ、インターネットで釣り人が「生で食べた」と紹介する例も後を絶たない。秋田大医学部の吉村堅太郎教授(寄生虫学)は「ブラックバスは感染した他の魚を食べる。有棘顎口虫が寄生する可能性もあり、食べる時は必ず火を通して」と話している。