日本マクドナルドの全国の約9割の店舗で人気メニューのチキンマックナゲットが消えてしまった。鶏肉調達先の米国や中国で相次いで感染病にかかった鶏が見つかり、政府が輸入禁止措置をとった影響で調達できなくなったからだ。BSE(狂牛病)で大打撃を受けた業界の困惑は深い。
「品切れです」。全国のマック店では、カウンターにあるメニューのナゲット部分にこんなシールが張られ、店員が対応に追われている。
意外と知られていないが、日本で販売されていたナゲットの食材は、米国と中国の広東省からほぼ半分ずつ輸入(年間約2万トン)されていた。
だが、今年1月、米・ペンシルベニア産の鶏から「鳥インフルエンザウイルス」が検出され、米国の鶏肉は政府の輸入禁止措置を受けた。
このため、マックは広東省からの調達量を増やすなどしてきたが、3月に入り、今度は不運にも広東省の鶏から「ニューカッスル病」が見つかり、同18日に広東省の鶏肉も部分的に輸入禁止になってしまったのだ。こうしたことから、90%以上の店舗で販売を中止せざるを得ない事態となり、「残りの店も在庫がなくなり次第、やめることになります」(広報担当者)と説明する。
ただ、今後には「タイと中国の別の場所に、ナゲットを作る新工場の手配ができ、4月中旬までには発売を再開できるようにします」という。
昨年のBSEに続くショックに、「(売り上げの)数%は減るかもしれません」としているが、先月25日から販売中止を店舗で告知し始めた際、中止理由を積極的に説明しなかったことに一部で“なぜ、原因まで堂々と説明しないのか”と批判されている。
2日になって、ようやく事実を明らかにした同社は「鶏の輸入禁止は、全体的な話で、それ(告知)は行政の問題。当社が告知することで、全然、違う方向に影響が及ぶ可能性もあると思われたので、あえて触れなかった」と釈明する。
業界では目下、マック社のように販売中止に追い込まれたのは少数だが、確かに今後の展開への不安は強い。
日本ケンタッキー・フライド・チキンが「使用する鶏肉はすべて国産で、禁止措置の影響はありませんでしたが、外国産の鶏肉が次々と輸入禁止となれば、国産の鶏肉の相場が徐々に上がってくる」と懸念すれば、ロッテリアも「うちは鶏肉を中国・山東省から輸入していて影響はないが、『鶏肉は危険だ』と誤解されてしまわないか心配」と不安げだ。
万が一、中国の他の地域に「ニューカッスル病」の感染が広がれば、新たな混乱も予想される。業界の巨人の思わぬつまずきは同業他社にとっても他人事ではない。
ZAKZAK 2002/04/03