BSE(牛海綿状脳症=狂牛病)問題への行政の対応を検証している調査検討委員会(農相と厚生労働相の私的諮問機関)の報告書の原案の全文が21日、明らかになった。感染源とされる肉骨粉の規制を農水省が行政指導にとどめた点について、原案は「重大な失政」と指弾。
BSEの発生の背景に、同省の危機意識の欠如に加え、生産者優先の政策があったとした上で、自民党を中心とする農林族議員が、「BSE問題のあらゆる局面で陰に陽に影響を及ぼしている」と指摘。「政」と「官」の癒着体質にも言及した異例の内容となった。
原案は22日午後に開かれる委員会の会合で調整が図られ、来月2日に提出予定の最終報告書の要旨としてまとめられる。
武部農相は同省の責任について、「委員会の客観的な検証を踏まえて判断したい」と述べており、過去の行政対応への厳しい批判で、農相の進退問題は大詰めを迎えることになりそうだ。
原案は、国内でのBSE発生を許した原因について、BSEが大量発生した英国からの肉骨粉輸入が極めて少なかったことや、「遠く離れているので安全」といった希望的観測があり、行政側に「危機意識が欠如していた」と指摘。
特に、世界保健機関(WHO)で人への感染可能性が報告された1996年に農水省が肉骨粉の規制を行政指導ですませたことや、英国でBSEが急増した90年当時、輸入肉骨粉の扱いを処理基準の強化だけにとどめた点、昨年6月、BSE発生の危険性を警告しようとした欧州連合(EU)の評価を無視したことなどは、いずれも「政策判断の間違いだった」と断じた。
さらに、こうした判断ミスは「生産者優先の行政」の結果で、「消費者保護を重視する思考が欠如している」と姿勢を非難した。
また、政策決定に関して、「もっとも大きな影響を与えているのが自民党を中心とする農水族議員」とし、「農村を地盤に選出された多くの議員が、生産者優先の政策を要求し、農業予算獲得を支援してきた」と批判を展開。生産者偏重の体質を「農水省が農水族議員と共有してきた」ことで政官の癒着構造が根付き、BSE問題でも、チェック機能が働かず、「最悪の結果を招いた」と結論付けた。
このほか、「消費者保護の最優先」をうたった「食品安全(基本)法」(仮称)の制定や、省庁の縦割りを排した食品安全行政機関の設置などを提言している。
同委員会は昨年11月発足。高橋正郎女子栄養大大学院客員教授を委員長にBSEの専門家や消費者団体代表ら10人で構成される。
(3月22日07:16)
http://www.yomiuri.co.jp/04/20020322i103.htm