雪印食品の牛肉偽装事件を受け、農水省が実施している国産牛肉の再検査で、「国際規格の一番厳しい基準で行う」と表明した武部勤農相の方針を同省が変更し、サンプル数を減らして検査していることが分かった。再検査は、BSE(牛海面状脳症、いわゆる狂牛病)の全頭検査前に食肉処理された国産牛肉が対象で、この肉が国の買い上げ事業の対象になっていたため、雪印食品は輸入肉を混入した。同省は「職員や予算が限られているため」と釈明しているが、甘い対応に改めて批判が強まりそうだ。 【BSE取材班】
全頭検査前に出荷された牛肉の検査は当初、全国259倉庫のうち31倉庫の一部をチェックしただけだったため、雪印食品の不正を見抜けなかった。このため保管牛肉を再検査することになり、2月8日から同省職員らが、箱詰めした肉を保管している区画(ロット)から一定数のサンプルを抽出し、本当に国産かどうか、期限切れの肉がないかを調べ始めた。
この検査は21段階ある国際規格のうち厳しい方から17番目の基準で行われ、9番目の基準で行われる標準的な検査の6分の1程度のサンプルしか調べていなかったため、武部勤農相は2月15日、「一番厳しい検査基準にする」と明言。同省も同月25日から「最も厳しい基準」で検査しているはずだった。
ところが、実際には同省は国際規格の2番目の基準で検査していた。最も厳しい基準では、100箱のロットのうち32箱を調べなくてはならないが、この基準では20箱だけでよく、サンプル数はほぼ3分の2で済む。
同省食肉鶏卵課はこの事実を認めたうえで、「国際標準より厳しい検査をしていることに変わりはない。サンプル数を見直すつもりはない」と話している。
日本消費者連盟の水原博子事務局長は「武部農相が一番厳しい検査基準にすると言ったのだから、農水省は徹底すべきだ。いつも農水省が中途半端にグズグズしていることに消費者は不安を抱いているのに、それに気づいていない。これ以上、不正が見つかるのを避けているのではないか」と話している。(毎日新聞)
[3月14日9時51分更新]