投稿者 まるうつしH 日時 2001 年 10 月 07 日 16:07:58:
緊急レポート 週刊現代 2001.10.20
これは第2の薬害エイズだ
日本人に「狂牛病発症」の 全情報
異変型クロイツフェルト・ヤコブ病
すでに食べてしまった可能性
狂牛病発生による国民の不安を鎮めるために、この国の政治家は自分がステーキを
食べるぐらいのことしかできないのだろうか?与党の国会議員たちが開いた「牛肉を
大いに食べる会」の映像は、全国民を呆れさせた。研究者たちの「日本人の感染確率
はゼロではない」という警告を行政は何と聞く。
9月10日に、「一頭目」の狂牛病(牛海網状脳症)の牛が発見されてから約1ヵ
月。10月4日になって、ようやく、感染源といわれる肉骨粉の国内流通の全面禁止
が実施された。
風評被害を恐れるあまり、「日本に狂牛病はない」と言い切ったあげく、かえって
パニックをひきおこしてしまった農水省。その農水省に引きずられるように及び腰の
対策しかとってこなかった厚生労働省の罪は重い。
10月2日には、与党国会議員らによって「牛肉を大いに食べる会」が開かれ、武
部勧農水相、坂ロカ厚労相がともにステーキをほおばるパフォーマンスをしてみせた。
が、その席には最も危ないといわれる骨付きカルゼもTボーンステーキもなかった。
日本の行政の怠慢ぶりは、全世界で非難の的になっていることを両大臣はわかってい
るのだろうか。「日本は英国に調査を依頼して、狂牛病が判明しましたが、それより
以前に、欧州の検査機関が日本にも疑いがあることを指摘した時には、『臭いものに
は蓋』の精神で無視されたと、欧州各国では報じられました。結局、指摘どおり日本
で狂牛病の牛が出たことで、WHO(世界保健機関)の幹部が〃日本の狂牛病問題に
は政策全体に大変な誤りがあった〃と発言したことも、こちらで大々的に報道されて
いるんです」(在フランスの日本人ジャーナリスト)
事実、一頭目の狂牛病の牛をめぐって、いまも「疑似患畜」の指定が後を絶だない。
「疑似患畜」とは、家畜伝染病予防法に基づいて認定されるもので、まだ伝染病の症
状は出ていないものの、感染の疑いがある家畜のこと。今回の騒動では、陽性と判定
された牛と同じ餌を食べてい乳牛すべてが対象になる。具体的には、陽性牛が生まれ
た北海道の牧場と、飼育されていた干葉の酪農家が飼っていた牛だ。9月コ日には、
こめ北海道の牧場から出荷されていたことがわかった千葉県香取郡多古町北中の牛一
頭が「疑似患畜」と認定された。干葉県だけでこれで実に48頭目だ。
本誌記者は、新たに「疑似患畜」が発生したと報告された、多古町北中を訪ねた。
秋の刈り入れが済んだ田が広がる農村地帯。畜産もさかんなところだが、
「何もいえません。原因ガはっきりしないかぎり、コメントのしようがない。問題
の牛は10月2日に屠畜して、脳の検査に回しましたので、その検査結果を見て判断
したい。シロであることを祈るのみです」
と、多古町にある三和酪農協職員が言う。また、北中のある酪農家は、「多古町に
北海道から、(狂キ病になった)白井市と同じところの牛が入ってきているというの
は聞いていたけど、この北中とは知らなかった。ウチではホルスタインに比べてあん
まり(狂牛病が)出ていない黒毛和種を飼っているけんども、値段が半分になっちゃ
ったよ」
と、困り果てていた。
これまで農水省は、「日本には狂牛病はない」と言い続けてきた。そのため、日本
では狂牛病の検査キットを持っている食肉処理場などほとんどなかった。つまり病理
検査をしようにも、確認のしようがなかったのである。発病前の牛であれば肉眼での
検査だけで出荷され続けてきたわけだ。狂牛病の牛が、知らぬまに、すでに市場に出
てしまった可能性はないのだろうか。
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運び出される疑似患畜(上)と肉骨粉全面禁止を発表する武部農水相(下)
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厚生労働省は、狂牛病検査キット講習会を始めた
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「可能性は、あるでしょう」
というのは、国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第7部長の金子清悛氏だ。
「過去に感染して、食肉加工された牛については、もう調べようがない。
日本の例はドイツと似ています。ドイツでは英国で狂牛病が発生したとき、自国に
は狂牛病の牛はいないと宣言しました。その後安全宣言を出すために、目に見える症
状がない牛に検査をしたところ、数十頭見つかってしまい、大臣が辞任したという経
緯があります。
日本もドイツと同じ経緯をたどっているので、私は今後日本で発見される狂牛病の
牛の頭数は、数十頭単位である可能性も予想しています。しかし今回、日本の場合は
〃ない〃ことを前提とした対応であった点が、これほど騒動が大きくなってしまった
原因であると思います」
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2015年にヒトの狂牛病が大発生
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さらには、国民の一番気になる狂牛病の人間への感染は、どうなっているか。
狂牛病の原因とされる異常プリオンが人間に感染して引き起こされた、と世界で注
目されているのが「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(以下・変異型ヤコブ病)」
である。
研究者たちによって組織されている「英国クロイツワェルト・ヤコブ病サーベイラ
ンス」によれば、10月1日現在、英国で確認されている累計患者数は107名。患
者発生状況は、95年に3名の患者が発生して以来、98年、97年に和名ずつ、9
8年に18名、99年に15名、’00年に28名と不気味な増加を示している。今
年は9月末までに発生報告はコ名。この発病した107名のうち、生存者はわずか6
名しかいない。「不治の病」であり、研究者たちは毎年死亡患者の発生率が20%ず
つ増加していると警告している。これはいったいどういう意味なのか。
前出の金子氏は、変異型ヤコブ病の潜伏期間の長さについて指摘する。「狂牛病の
潜伏期間は、数年といわれています。変異型ヤコブ病は、潜伏期間についてはまだ〃
数年以上〃としかいえません。ただ、狂牛病より長い可能性が非常に高いのです」
狂牛病などの病気について、数年前から「人獣共通感染症連続講座」というレポー
トを発表し続けている東大名誉教授・山内一也氏はその文中で、変異型ヤコブ病発生
の時期についてこう書いている。(カッコ内は編集部注)<(変異型ヤコブ病はい潜
伏期が不明であり、今後の患者の発生予測は困難です。BS(狂牛病)ウシの発生予
測を行ったことで有名なオックスワォード大学のアンダーソン教授によれば、100
人以下から100万人と大きな幅です。……BSE発生ピークの1990年頃を起点
に考えれば、2015年頃にハ変異型ヤコブ病が)大発生になるという推論もできる
のではないでしょうか>
以前からクロイツフェルト・ヤコブ病自体は、感染性のない病気として100万人
に一人の確率で発生する難病だった。しかし、脳がスポンジ状になるという特徴は似
通っていながら、症状の違う変異型ヤコブ病が現れてきたのである。「ヤコブ病には
原因不明の個発型、遺伝による家族性、キャリァ患者からの硬膜移植によって起こる
医原性の三つの〃通常型〃と、狂牛病によって引き起こされると疑われている変異型
があります。通常型と変異型は症状が大きく異なります」と、金子氏が両者の違いを
詳しく説明する。
■通常型クロイツフェルト・ヤコブ病
発症年齢が50〜60代以上といった高齢が多い。症状は、最初はいわゆるボケの
ような物忘れが始まり、体のふらつきなどが出てくる。日本では年間100人前後が
発症している。その原因として、医療事故ともいえる脳の硬膜移植によるものが少な
くない。
■変異型クロイツフェルト・ヤコプ病
発症年齢は英国では13〜14歳という例もあって、主に30代ぐらいまでの若年
で発症する。症状の進行は通常型よりやや遅いが、発症してから死亡までの平均期間
は14ヵ月。症状は、突然に手足のしびれや痛みが起こり、うつ状態になったり、性
格がまったく変わってしまうという現象が起きる。「変異型は、ボケというより応答
不能という感じで、それがどんどん悪化していく。どうしたんだろう、変だと思って
いるうちに亡くなってしまう。働き盛りの場合、仕事によるストレスでは? などと
診断され、発病してから1年たたないうちに寝たきりになって、それから暫くして亡
くなってしまうのです。
また、英国では74歳の患者が出たという報告もありますから、必ずしも年齢だけ
では判断できない。変異型かもしれないという患者さんがいても、死後解剖して、脳
の組織検査をしないときちんとした病名をつけられないというのが現実です」(金子
氏)
日本で変異型ヤコブ病を診た医師がいないのも、不安材料のひとつだ。神経内科の
医師ならともかく、一般の内科医の診断だと、原因不明の神経性の病気として片付け
られてしまいかねない。
日本で数少ない通常型ヤコブ病の診断を手がけた、倉本内科病院(三重県津市)の
笠間睦副院長も、同じ不安を訴える。
「ヤコブ病の診断は非常に難しい。患者数は極端に少なく、診察する機会が少ないた
め、ヤコブ病だと診断できる医師が果たして何人いるか。そうなると、本当はヤコブ
病だったのに、実際の診断は違っていた、という可能性だってあり得るということで
す」
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感染後、忘れた頃に発症する
==
さらに注目すべきは、狂牛病に関する一連の発表のなかで、10月2日に厚生労働
省が決定した、医薬品・化粧品原料に国産牛を使うことを禁止するという方針だ。
その内容は、医薬品や医療用具、化粧品の原材料に、国産牛のすべての部位を使う
ことを禁止し、現在まで狂牛病の発生のない米国やオーストラリアなどから材料を調
達するというもの。
これは、医薬品や化粧品までもが、狂牛病に汚染されている可能性があるという、
深刻な問題である。厚労省によれば、牛の成分を使った医薬品や健康食品、化粧品は
5―00品目もある。BCGワクチンや破傷風の血清、胃腸薬や滋養強壮剤、漢方薬、
美白化粧品などの製造に利用されているという。
だが、具体的にどのような薬品で牛が原料に使われているのかの研究は、民間レベ
ルではほとんどなされていないのが実情だ。薬害究明の市民団体や、研究者たちもこ
れからようやく調査をはじめるところだという。わずかに前出の「山内レポート」に、
海外文献の紹介として牛の脳、脊髄を原料とした医薬品がりストアップされているだ
けだ。
●牛脊髄溶液(ーアンプル中に3g含有)=静脈瘤性潰瘍、じょくそう潰瘍、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、夜尿症、喘息、高血圧の治療用のための筋肉注射。
●牛の脳と脊髄の乾燥抽出物=虚弱、疲労時に筋肉注射。
●牛成長ホルモン=じょくそう潰瘍、脚の潰瘍、火傷の治療用に筋肉内または皮下注射。非公式にはボディビルの筋肉増強にも使用。
●牛甲状腺刺激ホルモン=甲状腺の機能測定用に筋肉注射。
●牛下垂体後葉抽出物=陣痛促進、出産促進、陣痛微弱、子宮出血などの産婦人科で点滴使用。喀血、消化器出血でも使用。
フランスで、英国産牛肉を食べたことがなかった男性が、変異型ヤコブ病を発症し
た例がある。感染源が不明で、その男性がボディビルダーだったことから、牛成長ホ
ルモンのサプリメントではないか、という説もあるという。
もう一度、前出・金子氏の警告を繰り返そう。
「日本での感染はゼロ、と思わないほうがいい。私は日本にも変異型ヤコブ病が出
るという前提での対応が重要と思っています。変異型ヤコブ病の潜伏期は長い。今は
国民も役所も騒いでいますが、騒ぎに飽きてしまい、話題にならなくなった頃に患者
が発症することが一番怖いのです」
変異型ヤコブ病が、日本人にも発症する可能性は高い。そしてそれは、「薬害エイ
ズ」に匹敵する、行政の怠慢による「人災」に他ならないのである。
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牛肉をほおばる武部農水相(右)と坂口厚労相。当然、脳や骨付きカルビは食べなかった
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