投稿者 ごろた石 日時 2001 年 12 月 03 日 21:47:06:
「週刊ポスト」 2001/12/14
2頭目の狂牛病を発生させた北海道・猿払村ルポ
政府の失政が続けば「怪しい牛」はどんどん「闇」に葬られていく
オホーツク海に面した日本最北の村、北海道・猿払村。ここから日本で2頭目になる狂牛病(BSE)に感染した牛が発見された。人口より乳牛のほうが多いという酪農の村は困惑に包まれている。
「今回の事態は、交通事故に遭ったようなものです」
感染牛を出した牧場の経営者の言葉だ。1頭目の感染牛を千葉県内の酪農家に出荷していた北海道・佐呂間町の元酪農家もそうだが、この経営者も牛の飼料に肉骨粉を使った覚えはない。地元の農協を通じて、ホクレンなどの配合飼料を使用しただけだ。近隣のほとんどの酪農家は同じ飼料を使っているだけに、「交通事故」という言葉にもなったのだろう。
「うちだけが、他の牧場と違う飼料を与えていたわけではないんです」(経営者)
同じ猿払村の酪農家もいう。
「この問題は薬害エイズと同じ。英国でBSE(現地の関係者は”狂牛病”とは表現しない)が発生してからも肉骨粉の輸入を認めていた政府の失政です。いまとなっては手遅れの状態で、2頭目が出たということは、今後も次々と発生するということでしょう」
また別の酪農家・A氏は、
「どうせなら、どんどんBSEの感染牛が出たほうがいい。その方が原因も究明されるだろうし、国も補償について真剣に考えるようになるだろう」
とも吐き捨てた。
今回の狂牛病騒動では村は深刻な打撃を受けている。
「出荷しようにも値がつかず出荷できない状態だ。もともと乳牛中心の村だが、”猿払の牛は危ない”といわれるのがいちばん恐い」
昨年の雪印事件で牛乳の消費が減り、打撃を受けたのに続く2年連続の災難で、収入減に苦しむ酪農家が多い。
「いまのような状況が続けば、生活できないようになる。なぜ、われわれだけがこんな目に遭わなければならないのか」
実は、最近になって、ただ足下がふらついただけで、その牛を出荷しない例が出ている。猿払村を管轄する留萌保健所手塩支所ウブシ駐在所の担当者がいう。
「足下がふらついたからといって、必ずしもBSEとは限らないのですが、生産者側に”もしや”の気持ちがあり、出荷を手控えているのでは」
今回、狂牛病が発生した乳牛は乳の出が悪くなり食肉に回された。こうした場合、肉質は悪く1キロ200円くらいにしかならない。1頭で5万〜6万円の計算だ。出荷せずに廃棄処分にすれば、共済加入者の場合、1頭につき3万円から8万円の共済金が支給される。
「共済金では子牛の購入代にもなりませんが、もしBSE牛を出せば、産地全体に迷惑をかけることになります。だから、不安がある牛は出荷しないでおこうという、意識が働いてしまうのです」
と、宗谷地方の酪農家は説明したが、これが何を意味するか。前出・A氏はいう。
「他の地域でも怪しい牛は、どんどん闇に葬られるようになるはず。そうなれば、原因の究明も感染経路の解明も不可能になります。それでいいのですか、ということです」
政府による迅速な対応が求められる所以である。
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