投稿者 付箋 日時 2001 年 11 月 02 日 02:34:31:
週刊文春 ２００１・１１・０８
『「狂牛病安全宣言」こんなに早いのは世界で日本だけ』より
・・・前略・・・
北海道帯広市の、食肉の解体卸業「藤原産業」社長・藤原智則さんは言う。
「狂牛病発生の事件は、薬害エィズにも匹敵するほどの国の過失です。十五年も前から狂牛病はイギリスで問題になっていて、われわれも国に対して対策をとってほしいと言っていたのに、国はなかなか動こうとしなかったからです。職務怠慢だと、みんな怒っていますよ。今は、良いことも悪いことも、すべてを消費者に報告することで、消費者の理解を得るべきです」
日本で狂牛病が出てしまった一番の要因としてあげられているのが、輸入肉骨粉の存在だ。イギリスの税関記録では、同国で狂牛病が猛威をふるっていた九〇年からの約七年間に、日本に三百三十三トンの肉骨粉が輸出されたことになっているが、日本にはまったく記録がないという点が、たびたび問題視されている。
この記録データを確認するため、農水省はイギリス環境食糧農村地域省国際貿易チームヘ九月二十五日に次のような質問書を送っている。
「我が国においては、狂牛病の発生が確認されて以来、その感染ルートを解明し、さらなる蔓延を防止していくことが緊急課題となっております。(中略)我が国の貿易統計上は一九八九年以降英国からの肉骨粉はないものの、貴国の統計上は九〇年から九三年の間に我が国に肉骨粉の輸入があることとなっており、これが事実であるならば我が国における輸入業者、流通経路を解明し、今後の狂牛病発生を防がねばなりません。しかし、我が国に輸入記録がないため、我が国では解明困難であり、事実関係を明らかにするためには貴国の協力が不可欠なものとなっております。こうした事情をご理解の上、事実解明にご協力いただきたくお願い申しあげます」
この質問に対して、イギリスから返ってきた回答書(十月九日付)は次のような内容(抜粋)だ。
「英国税関・税務局は、小麦粉、ミール、ペレッタの輸出データを再チェックし、ほ乳類の肉骨粉でないと分かった貨物を除外することとしました。その結果、明確になった肉骨粉は次の通りです。
九〇年/百三十ニトン
九二年/十四トン
九三年/二十トン
九〇年に輸出された百三十ニトンはフェザーミールであったと考えられます。残念ながら、この荷主の名前については機密情報に相当するため公表することはできません。
九二年、九三年の輸出については、遡って調べるのはより困難です。それは、おそらくいくつかの小さな貨物に分け代理店を通して輸出されています。従って、これらの輸出に関して詳細な情報を提供することはできません。しかし、これらの積み荷はほ乳類の肉骨粉以外のものの可能性が高いことが予測されます」
このような暖昧な返答を受けながら、農水省は二十二日に会見を行い、「輸入を許可したのは百六十六トンで、中身は鶏の羽などの羽毛粉や鳥類の肉骨粉の可能性が高い」
という正式文書を英国政府から受け取ったと堂々と発表した。さらに農水省生産局飼料課は「狂牛病の感染源である肉骨粉の可能性はほとんどない」と述べている。何ともお粗末な貿易データの追及ではないだろうか。
愛媛県で飼料製造業に携わっていた佐々木洋三氏(仮名)は、このイギリスの回答に疑問を示す。
「イギリスからの回答で、一番不審な点は、『いくつかの小さな貨物で、代理店を通して輸出されている』という記述です。九六年にはイギリスからの肉骨粉の輸出が禁止になりました。それまではイタリアやデンマークなどヨーロッパ産やオーストラリア、アメリカ産の肉骨粉を主に輸入していたが、翌年からは香港やタイなどから大量に入るようになった。香港とイギリスは今でも密接な関係にありますし、香港の税関を通した後、原産地表示を変えて日本に輸出している可能性もある。飼料会社というのは、原料製品の善し悪しよりも価格重視で、少しでも安く原料を買い付けようとしていましたから、値段が安ければ、どこの国のものでも買いますよ」
・・・後略・・・
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