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「かくてドルは紙くずとなる」 クレスト社 1994年 H・フィギー・Jr
竹村健一訳
あしゅらさんはこの本をお読みになったでしょうか。
訳者 竹村健一の 前書き
全米を震撼させたべストセラー
本書は、一九九二年秋、アメリカで緊急出版された「バンクラプトシー1995」の
日本語版である。バンクラプトシーとは「破産」を意味する。発売直後から、アメ
リカでべストセラーとなり、マスコミで大変な話題を呼んだことを知り、私はさっ
そく手に入れて読んでみた。読み進むうちに背筋が寒くなった。
私はこれまで何千冊、何万冊という数の本を読んできたつもりだ。だが、読んで
いるうちに背筋が寒くなるという体験をしたことは、かつてなかった。
「わたしたちが今日知っているような形のアメリカ合衆国は、一九九五年に存在
を終えてしまう。この年、否応もなく、合衆国は破産の淵に追い込まれるのである」
このような恐ろしい未来を予言した本が、今まであっただろうか。
この冒頭の文章を最初に読んだとき、私は「これは、ただのこけおどしの本、き
わものの本ではないか」という印象を持った。だが、読み進んでいくうちに、その
説得力に圧倒されていった。そして、「この本が権威ある「ニューヨーク・タイム
ズ」紙のべストセラー・リストに連続してランク入りし、この本の内容をめぐって
賛否両論の嵐が起こったのも無理はない」と、つくづく思ったのである。
巧妙に隠蔽されてきた累積赤字
ブラジルなど中南米国家を抜き、アメリカが世界最大の債務国になって久しいこ
とは、ご承知のとおりだ。ケネディ大統領の後任となったジョンソン大統領以来、
アメリカの財政赤字は増える一方である。今や、その総額は四兆ドル(約400
兆円)にも達している。
本書の著者フイギー氏は、アメリカ大統領府の財政問題特別委員会に参加し、そ
の恐ろしい実態を知る。
じつは、国民向けに発表されている財政赤字のデータは、まことに巧妙に粉飾・
隠蔽されたものであって、ほんとうは21世紀を待たずに連邦政府は財政破綻を
きたし、悲劇的な「国家破産」を迎えるというのだ。
具体的には、この累積債務が数年のうちに6兆5000億ドルにまで雪だるま
式に膨れ上がり、借金の利払いすらも不可能になってしまう。これによって、ド
ルの信用はゼ口になり、合衆国経済は破局を迎えるというのが、彼の予測である。
アメリカの財政赤字問題については、今まで多くの本が書かれてきたが、ここ
まで悲劇的な展開を予測した経済学者もジャーナリストもいなかった。
しかし、本書を読むと、「合衆国破産」という事態が充分起こりうると納得さ
せられる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・略。
1994年 7月1日
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この本には 「では我々は合衆国破産を回避するために何をすべきか。」 が書
かれている。
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第8章 起死回生への道
(政府および国民は今、何を決意すべきか。)
財政危機への「宣戦布告」
働き盛りの男が手術台の上に横たわって、パックりと開いた傷口から血を流して
いる。ところが、外科医の一団はその患者の足の爪を忙しそうに切っている わが
国は今、債務によって傷ついたドルを救うための財政的外科手術を緊急に必要とし
ている。ところが、議会と大統領はどの爪を切るのかを巡って、議論ばかりを繰り
返している。アメリカを救うために必要な任務を遂行するには、すでに私たちは時
期を逸しつつある。
中流階級は下流階級に転落しかけている。貨幣はインフレにさらされようとして、
る 国家経済の脈動が弱いため、産業という名の心臓には負担がかかりすぎている。
これからの三年間以内に、その傷口を閉じるための手術を行なわなければ、患者ーー
つまりは、私たち国民ーー は経済的な昏睡状態に陥ることになる。
そうなれば、私たちは誰かに食べさせてもらわなければならなくなる。ちょうど
今日の私たちが日ソ連を食べさせているのと同様に、である。
旧ソ連国民と同じく、私たちは見も知らぬ外国人の親切にすがり、他国の搾取に
対して無カな存在になってしまう。一言でいえば、「哀れな国」 かつては大国で
あった国家の残骸 になってしまうのである。
そうならないことを筆者は望んでいる。アメリカ人がパンのために行列を作って
並ばなくてもすむように、私たちが海外の銀行家や政府に対してぺコぺコしなくと
もすむように、この偉大なる国が独立を放棄し、自尊心を捨てなくともすむように
望んでいる。自分自身が招いた痛みに苦しまないことを望んでいるのである。
しかし、アメリカが誇り高き独立国家として存続できる可能性は、すでにかな
り低くなってきている。
私たちがもし、今すぐに 極端な比楡を用いれば 宣戦を布告しなければ、私た
ちには死が待ち受けている。もちろんこれは軍事的な戦争の意味ではない。脅威は
外部から与えられているものではない。これは自分自身と戦う財政戦争である。そ
して、戦いが始まる以前にほとんど敗れているような状態であるがために、今すぐ
にでも戦闘を開始しなければならないのである。
強権発動の必要
この戦争には二つの段階を設定しなければならない。第一段階においては、財政
赤字と戦う。 前途に待ち受ける危機を回避するためにも、財政赤字をゼ口にまで
削減することが絶対的に必要であり、しかも早急に戦闘に着手しなければならな
い。第二段階では、みなが忘れたがっている 累積債務への戦闘を行なうのである。
私たち国民も軍隊、つまりは私たちの名において戦う専門家集団を支援するため
に すべてをなげうってでも奉仕を行ない、犠牲も払うべきである。
長年にわたる過剰支出と債務を敵に回す今回の戦争においては これまでとほほ同
様の臨戦体制を整える必要がある。
戦争においては、大統領が指揮権を発動し、議会は超党派となって団結せねばな
らない。なぜならば、私たちが現在直面している脅威は これまでにアメリカが
直面したすべての脅威よりも深刻であり、潜在的な破壊方を秘めたものであるから
だ。
また、この戦争を戦い抜くためには、リーダーシップ、目的に向けた連帯、国民
の奉仕と犠牲、そして専門家で構成される軍隊が必要である。
リーダーであり、最高指揮官たる大統領は国民に演説し、アメリカが現在直面し
ているすべての問題の中で財政赤字と責務の問題の解決こそ、最憂先課題であるこ
とを納得させなければならない。この二つの問題が解決されなければ、結局、その
他のすべての問題も解決されないという点を訴えなければならない。
また、大統領は有権者に対して、自らの立場を明確にし、戦闘に向けて国民の熱
意を高揚させ、自信と権威をもって国家を戦時体制へと導いていかねばならない。
さらに大統領は、議会の上下両院および民主・共和両党の指導者に対して、党や
個人的な立場の違いを放棄するように要求し、戦争に勝利を収めるために大統領を
支援することを確約させなければならないのである。
そして有権者である私たちは、政府機関 行政府と立法府 に対して、もはや戦
闘着手への遅れは許されず、内輪もめなどしている場合ではないことを知らせなけ
ればならない。私たちの言葉を政治家に伝えるのだ。
つまり、財政的な独立を守るための戦争を支援するという政治家であれば投票す
るが、支援を行なわないような政治家は、政界から追放すると意思表示を行なうの
である。勝利に向けての政治家の責任遂行を要求しなければならない。
成功と失敗の分岐点とは
政治家と市民が団結し、勝利に向けて取り組むことこそ、必要不可欠である。なぜ
ならば、朝令暮改のごとき政策のために、大事な時間を犠牲にしようと思う者など
はーー市民であれ、企業 であれーー 誰もいないからである。
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軍部と軍事産業の反乱はあったが、クリントンは財政赤字をゼロにした。アメリカ
合衆国崩壊という事態は2002年半ばになっても起こっていない。いや、1995年
から2002年まで、アメリカは過去のごとくに繁栄を極めた。日本や韓国、タイ、マレ
ーシアの混乱とは「見えない米軍攻撃」の結果だったのだろうか。
カバー裏の推薦文、論評 (大前研一)
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本書をお読みになれば「これはアメリカだけの話ではない。いずれ日本も同じ
運命になるのではないか。」という危機感を、あなたもきっとお持ちになるだろう。
「聖域」と化した福祉予算、助成金のばらまき、行政機構の肥大によるコスト増、
選挙での得票しか頭にない政治家・・・・・。”アメリカの破産”の原因を著者は冷静
に分析する。だが、そのどれもが日本にも共通する問題であり、アメリカの債務問
題が「対岸の火事」でないことを痛感せざるをえない。
アメリカの二の舞を踏まぬためにも、また、今後の日本が世界に貢献できる頼も
しい国になるためにも、ご一読をお薦めする。
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1995年、累積赤字(国債残高)は対GDP比で日本はアメリカを追い越し、以後
日本は一直線に悪化、現在では1.12で先進国中最悪となった。一方のアメリカは
GDPの増加分だけ毎年改善されていき、0.596で、ドイツ、フランス、イギリスと
同レベルになっている。
国債残高だけが赤字じゃあない、アメリカの貿易赤字総額はどのくらいなんでしょう。
ドルが基軸通貨でなかったらとっくに破産している。
小泉総理もこの本を読んでいるように感じられる。彼の演説・主張がこの本の
部分コピーとしか思えないからである。
「痛みを伴う」「聖域なき構造改革」「民営化」。