(回答先: Re: カネ余りの不思議 〔普通の人の経済学より〕 投稿者 PBS 日時 2002 年 4 月 22 日 22:55:07)
レス1で書いた「日銀券発行残高」−「日銀当座預金残高」(準備預金+その他)という“正味”のマネーサプライの変動をまとめてみた。
[末時点残高]
日銀券発行残高 日銀当座預金残高
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92年12月390,263億円 29,062億円
93年12月416,259億円 27,857億円
94年12月428,803億円 28,223億円
95年12月462,440億円 33,024億円
96年12月506,710億円 34,318億円
97年12月546,696億円 35,170億円
98年12月558,648億円 43,948億円
99年12月654,047億円 226,487億円
00年12月633,972億円 61,754億円
01年12月690,042億円 143,526億円
02年 3月678,762億円 285,261億円
[末時点“正味”マネーサプライ]
92年12月361,201億円
93年12月388,402億円( 7.5%)
94年12月400,580億円( 3.1%)
95年12月429,416億円( 7.2%)
96年12月472,392億円( 10.0%)
97年12月511,526億円( 8.3%)
98年12月514,700億円( 0.6%)
99年12月427,560億円(−16.9%)
00年12月572,218億円( 33.8%)
01年12月546,516億円( −4.5%)
02年 3月393,501億円(−28.0%)但し、3ヶ月間
経済動向をまったく無視するという条件で考えられる“正味”マネーサプライの増減要因は、
[増加要因]
● 日銀が返済された日銀券以上の日銀券を商業銀行に貸し出す
● 商業銀行が日銀当座預金残高を減らす
● 「タンス預金」が増えて日銀券が日銀に還流しない
[減少要因]
● 日銀が返済された日銀券未満しか日銀券を商業銀行に貸し出さない
● 商業銀行が日銀当座預金残高を増やす
といったものであろう。
“正味”マネーサプライが大きく増加するのは、日銀が金融緩和政策を採り商業銀行どんどん貸し出しを行い、商業銀行も日銀に預けずに貸し出しや証券市場で運用したときである。
99年以降に見られる顕著な特徴は、日銀が貸し出しを増やしているにも関わらず、日銀当座預金が急増したために、“正味”マネーサプライが伸び悩んでいることである。
これを前提に、オリジナルの主張を見ていく。
>最近の発表では、M2+CDは年率で2%近くの伸び率を保っている。数年前までは
>3-4%の伸び率があったので、それよりは低下したことになるが、GDP(国内総生
>産)で見た経済の名目成長率が殆どゼロであることと比較すると、貨幣の量の増加率
>は際立っている。最近の日本経済の停滞は俗に「失われた90年代」等とも言われてお
>り、名目成長率もマイナスに落ち込むことがあった。しかし、その間もM2+CDは
>年率で3‐4%の一貫した成長を続けていたのである。これはつまり、お金で買える物
>やサービスの量よりも世の中にあるお金の量の方が増え方が大きかったということで
>ある。だから、放っておくと、手元(あるいは預金通帳)にはお金が溜まって行くこ
>とになる。
“正味”のマネーサプライが上下しているのにM2+CDが一貫として増えているということは、日銀及び商業銀行の預金残高が増えていることを示唆する。
貨幣の量が増えているわけではないが、通帳の残高が増えていることであり、銀行が保有する現金が増えているということである。
ここで重要なことは、通帳の残高には日銀の当座預金も含まれていると言うことである。日銀が商業銀行に日銀券を貸し出し、商業銀行が運用先がないということで日銀の口座に預金する量を増やしても、M1・M2+CDはともに増大する。
M2+CDが増えたからと言っても、実体経済で“お金が余っている”とは言えないのである。
オリジナルが、「日銀は意図的に資金を余らせたのであり、通貨供給量という面から見ると、確かに”お金は余っている”と言えそうである」とまとめているように、日銀の通貨供給量に限っては”お金が余っている”と言える。