最近の情勢を見ているとなんとなくガサラキのことが思い出されます。クーデターを煽っているわけではありませんのでお間違えなきようw)
ガサラキは平成10年度下半期にテレビ東京系列で放映されたアニメで、近未来の2025年頃を想定して描かれている。日本サンライズ制作。監督 高橋良輔 脚本 野崎 透
ガサラキ第8話 「火宅」より
それぞれに思いあふるる三界の・・・ 何処も彼処も 火宅 なりけり
登場人物 : 広川 顕郎(あきお) 〜特自参謀本部中佐。クーデターを企てる。
西田 啓(ひらく) 〜国学者。自らの目を刀で傷つけ、盲目になる。広川ら自衛隊エ リートらと共にクーデターを画策。
豪和 一清(かずきよ)〜TAなる二足歩行兵器を開発した企業の代表だが・・・蛇顔
〜東京を一望できる高層ビルの一室。赤い夕日が差し込んでいる。
畳の間に西田と豪和 一清が正座して対峙しており、広川中佐が2人の間に仲介役と して座している。
広川 : 言うまでもありませんが、私達の仕事は日本という国を守ることにあります。ところが、ふと 振り返った時、そこに見出したのは見にくく退廃した日本の姿でした。・・・確かに日本は漠然 と豊かになりました。しかし生きるとは、ただ物質的な豊かさを手に入れることなのでしょう か?
すさんだ郷里には目もくれず、飽くなき野望にひたすら身を任せ、資本に踊らされ、主体 なき迎合だけが処世の術として生き残っている。
西田さんの受け売りですが。しかし、これは我々の思いでもありました。
一清 : 日本の美しさを求める心。・・・ですか。
広川 : かつての日本人を特徴づけていた美徳。今はもう、喪われてしまった美しさです」
一清 : しかし、そんな美しさが本当にあったのでしょうか?
〜広川、西田を見やる。〜 間 〜
西田 : 私は醜く歪んで行く日本人の姿を見るに耐えなかった。そして、自らの視力を絶った。
〜日本刀で自らの目を切り刻む回想シーンが入る〜
ところが、今ではむしろ目が見えていた時よりも尚一層、日本人の醜さを感じるようになっ てしまいました。
これも恐らくは現実から逃避しようとした私に架せられた戒めなのでしょう。
あなたは、日本人の美しさを語れる時代など存在したのかとおっしゃる。
一清 : ぶよぶよとした己の姿にも気づかず、ひたすら緩慢な壊死へと向かう日本人。しかい、それ が日本人の本来の姿ではないと言えるのでしょうか?
〜西田、脇に置いてあった刀を取り出し、正座したままスラリと抜いて見せる〜
西田 : 焼き身を研ぎなおした物で、身幅の割に重ねが薄くなってますが、私にはもうその繊細な刀 紋を見ることはできません。ですが、鋭利な気は感じることはできます。
豪和さん、これこそ芯の日本人の姿なのではないでしょうか?
透明な真理の中に生き郷土を愛し、その美しい自然を慈しむ。自らに厳しくあることを尊び、 利己を潔しとしない。
そうした理念が息づいていたことを何よりも無言のこの刀が語ってくれていると私は思うので す。
一清 : だからこそ変えなければならない・・・
西田 : 一度喪われた美しさもこの焼き身のように真剣な想いで研ぎなおせば、もう一度この日本と いう刀剣を心から愛する者によって表面のあれた肌や錆を取り除くことができたら・・・
一清 : つまり衆愚政治を棄て、かつての氏族独裁に戻れということですか。
西田 : *1民主とは形ではなく理念の中に息づく思想です。同じように独裁もまた形ではなく、理 念の中にある。
・・・―この国で真に*2経世済民思想に基づく改革が行われたのは、武士階級によってのみ。
一清 : だから軍政的支配が必要になる―
西田 : あくまで必要悪としてです。しかし、必要悪といえども制限なき権力は必ずや腐敗の日へと つながる。人はそれと知らずに権力に身を委ねてしまうもの。権力の集中は3年。3年の間 に理念と強固な意志に基づく体制を作り、後は国民の審判に委ねる。
一清 : しかし、もし3年の間に事が成就しなかった場合は・・・
西田 : もし天の時、地の利、人の和。・・・このどれ一つ欠けても真の革命はなし得ません。その一 度にすべてをかけなければならないのです。
〜以下略
*1 民主とは形ではなく理念の中に〜 : ギリシア、アテネのペリクレスの行った政治は「外観は民 主制だが、その実はただ一人が支配する国」であった。
ローマ共和国は寡頭政でありながらも民主的に機能したよ うに思える。
*2 経世済民思想 けいせいさいみん : 民衆を助けて世を治めること、らしい。