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Re: 国債の落とし穴 投稿者 あっしら 日時 2002 年 3 月 11 日 17:32:38:

(回答先: すいません。スレと直接関係ないのですが・・・。 投稿者 教えて厨房 日時 2002 年 3 月 10 日 03:39:19)

「教えて厨房」さん、初めまして。

第一次世界大戦と第二次世界大戦の休戦期間(一般には戦間期間)は、国際的国内的金本位制の終焉と“ブロック経済”(宗主国と諸植民地とのあいだの対外封鎖的経済取引)という近代国際経済体制の過渡期に当たります。

このような状況で経済発展を遂げたい(維持したい)と考える国家が植民地を抱えていなければ、経済圏としての植民地を拡大していくしかないという状況に置かれていたのです。

当時の日本の主要輸出品目は、生糸・材木・繊維製品という“後進国”的なものでした。
当時の日本は、原油や石油製品そして鉄鉱石のみならず鉄鋼や機械類も輸入に依存していたのです。

「金解禁」は、それにより起こる金の流出をとどめようと考えるのなら、貿易黒字=輸出超過になるしかありませんが、当時の日本の産業構造や国際取引構造を顧みれば、貿易黒字にすることはできません。
それでも、産業構造や軍備の近代化のためには、石油類・機械類・鉄鋼類などを輸入しなければなりません。輸出市場はブロック経済や高関税障壁で限定され、近代化のための輸入は不可欠という状況にあったわけです。

「金解禁」政策の最大の誤りは、国際取引上必要な金解禁=金本位制を、国内通貨にまで適用したことです。国際取引は金本位制でも、国内通貨は管理通貨制(紙切れ紙幣)で済む話です。実際に、日本を含む各国は、そのような政策で国内問題を少しずつ解消し、戦争へと突入していったのです。
この他にも、混乱期・過渡期の国際取引にあったにも関わらず、政府が、「為替取引の統制」(実需を伴わない為替取引の禁止)と「輸出入の統制」(建前は金本位制でも実質はバーター貿易に近いかたち)を行わなかったことを指摘できます。


このような意味で、戦前の状況が、現在の苦境や厖大な政府債務=国債問題と直接結びつくものではありません。


>それは、高度経済成長の時期に建設国債を頼り始めて、禁止されていた赤字国債を
>発行して現在に至ったのと同じ理由でしょうか?

国債は、政府債務の拡大であることは間違いありませんが、中央銀行が紙幣を増発して直接引き受けない限り、民間の貯蓄の吸い上げになりますので、その使い方や金融政策を誤らなければ、インフレになるとは限りません。
中南米諸国やちょっと前のロシアで見られたような破滅的経済状況を除けば、国債を引き受けられる人たちがちゃんといるのですから、そのような人たちから税として吸い上げるのが望ましいのです。

高度成長期の国債政策の誤りは、租税負担ができる人たちに課税せず、その人たちからお金を借り利子を支払いながら、公共事業や財政支出を拡大したことにあります。
そのために、土地や株式に対するインフレをもたらし、そのために、公共事業費や財政支出が膨らむ、だから、また、より多くの建設国債や赤字国債を発行しなければならないという悪循環を生んだのです。

国債を発行して景気を刺激したことで、実体経済の生産活動も活発になったことは確かですが、それ以上に、地価や株価の上昇(活発化)をもたらしたのです。
それは、72年に始まった田中内閣の「日本列島改造」景気が、わずか1年で破綻し、急激なインフレを引き起こした73年には、GDPが実質マイナス成長になったことでわかります。
実体経済の生産活動にお金が回るよりも、土地や株式への投機にお金が回ったからです。
土地や株式とりわけ土地は、工業製品とは違って供給量に制約がありますから、価格高騰というかたちとなって現れます。

また、国債は“最優良資産”ですから、国債を担保にして借金をすることができます。
これは、政府が国債発行を通じて借金した金額と同額のお金が借金されて経済取引に投入される可能性を示唆します。

● 資産家(銀行など企業を含む) →1兆円国債引き受け 政府 →1兆円支出拡大

● 銀行 → 国債担保で2千億円貸し付け → 資産家  →2千億円投資拡大

● 国債担保で日銀から8千億円借入 →銀行 8千億円貸し付け 資産家or企業 →8千億円投資拡大

政府が国債発行で1兆円財政支出を拡大すると、同額の民間支出が拡大される可能性があるわけです。(租税収入を1兆円増やした場合は、このような“水膨れ”はありません)

このように、1兆円の国債は、たんに1兆円の貯蓄吸い上げになるのではなく、2兆円の支出拡大につながる可能性があるのです。
これが、土地や株式の“価格右肩上がり神話”に向けられたら、それらの価格がどうなるかは火を見るより明らかです。

(民間同士の貸し付けと借り入れにも同じようなことが言えます。保有している土地を担保に銀行から10億円借りて新しい土地を買い、その土地を担保に7億円借りて、新しい土地を買う。そうこうしていると、最初に買った土地の価格が2倍になり、その土地を担保にさらに7億円を借りるという、一つの土地が“信用=借金を拡大”させていく連鎖です)


>つまり、カンフル剤を一度注射する分には効果があるが、常用が癖になると効き目がなくなるばかりではなく体調を崩してしまうというような?

高度成長期の日本政府は、国債を“カフル剤”として使用するのではなく、貪欲な銀行・企業や資産家のあくなき利益追求をサポートするために使用してきたのです。
(このような“歴史を先取りするような利益獲得”は、供給力の拡大が伴っていないのですから、必ず破綻します)


政府が国債で得た資金を前述のようなかたちで使うと“効き目”がなくなることは、「バブルの形成と崩壊」を顧みれば間違いないことです。
土地や株式の価格が上がり続けるだけの国債を発行し続けていかなければならなくなることを意味するからです。
そうなれば、なんら“使用価値”が変わらない土地の価格だけを上げるために、政府が債務を膨らましていくことになります。

しかし、政府のそのような財政態度を見れば、多くの資産家がその危険性を察知し、国債引き受けを避けるようになります。(国債価格の暴落そして経済破壊に対処するための日銀の国債直接引き受けによるハイパーインフレが生じると考えるからです)


このようなことから、国債問題は、より根源的な考察と反省が必要であり、それを抜きに、国債増発の是非は問えないと考えています。

日本は、今のところ、税制を変更すれば、「デフレ不況」を脱却し、資産家も勤労者も現在よりも有利な経済条件を手に入れられる状態にあります。
国債を増発するよりも、そのような政策こそが肝要だと考えています。


米国株式市場は、おそらく、4月中には破壊的な急落過程を迎えるでしょう。
日本の資産家(機関投資家)は、振りまかれている「米国経済の回復」という嘘に頼って対米証券投資を拡大しているようです。
そうであれば、税収が減るだけではなく、金融資産も減少し、「デフレ不況」から脱却できる条件がより厳しくなると思います。


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