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「不良債権問題」と金融政策 投稿者 あっしら 日時 2002 年 2 月 19 日 00:09:51:

(回答先: 『ささやかながら少しはましな経済状況を』 投稿者 あっしら 日時 2002 年 2 月 16 日 20:17:26)


この問題をほとんど触れてこなかったので、簡単にまとめたものをアップします。
“高利貸し”には反対なので、あくまでも緊急避難的政策だと受け止めてください。


【「不良債権処理」はデフレ対策や景気回復につながるか】

まず、「不良債権処理」は、巷間言われているように、「デフレ対策」や「景気回復策」にそのままつながるものではありません。

「不良債権処理」を通じて不良債務企業を破綻させれば、失業者が増大して社会不安を煽り、供給力の削減以上に需要が減少します。それにより、デフレが進行し、より経済状況は悪化します。

「不良債権処理」として「債権放棄」を選択することもできますが、法定準備金まで侵食しての不良債権処理にまで追い込まれている現在のような銀行の財務状況では、それも無理です。公的資金の注入を受けての「不良債権処理」であればなお、そのような選択を勝手に行うことはできません。

米国などが「不良債権処理」を声高に叫んでいるのは、不良債権の担保となっている不動産などを安く買い叩くためであり、破綻銀行を一時国有化させてかつての「新生銀行」と同じように破格値でしかも将来の補償付きで手に入れるためです。
さらに言えば、「不良債権処理」を急がせることで日本の経済的状況をより悪化させ、優良な企業(製造業が中心)を安く手に入れるという狙いさえあります。

「不良債権処理」がデフレ対策や景気回復につながると“錯覚”している人は、「不良債権」がBIS規制の自己資本比率を大きく下げさせているために、銀行が新規の貸し出しを抑制せざるを得なくなっているので不況がますます酷くなってきたと考えているからではないかと思われます。

しかし、冷静に考えてみてください。『新生銀行』は日本企業向け融資を拡大していますか?瑕疵担保条項がまだ有効な『新生銀行』でさえ、“貸し渋り”と“貸し剥がし”に励んでいるのです。
このことは、たとえ「不良債権処理」を行っても、銀行の貸し渋りが解消されない可能性が高いことを示唆してします。

自分自身が銀行経営者であれば、現在のような経済政策下に置かれている日本企業に対して融資をしたいとは考えません。融資するとしたら、担保物件を持っていることが条件で、しかもその担保物件の現在価値の半分の金額までにします。

おそらく、日本の銀行の多くが、BIS規制がないとしても、不良債権を増やしたくないと考えて、日本企業向けに融資を拡大するよりは、国債取引でわずかばかりの差益を採ったり、EU諸国の債券を購入したり、中国向けの取引を拡大したいと考えるでしょう。

「不良債権」が銀行の活動を縛っていることは間違いありませんが、だからと言って、「不良債権」を処理すれば、企業向け融資を通じて実体経済領域での日銀券の流通が拡大され、実物への需要が拡大するというわけではないのです。

銀行救済のような公的資金の注入を行えば、銀行は、身軽になったことをこれ幸いと、日本の経済的苦境を尻目に、もっと安全な国際取引での融資拡大に走る可能性が高いと見ています。
わずかなばかりの差益しか採れない国債取引も減少させていく可能性があるでしょう。
これまでアップした内容をお読みいただけばわかるように、これはゆゆしき問題を引き起こします。(大量の国債を保有している銀行は、無謀な“国債離れ”はできませんが)


このように、「不良債権処理」は、日本が経済的苦境から脱するための決め手でもなければ、最優先課題でもないのです。

元々の「不良債権」は、愚かで犯罪的な過剰融資を行った後に発生したバブル崩壊に伴うものです。

大事なことは、大量の「不良債権」が発生したということは、最低でも、それに相当する分だけは実体経済にも深刻な影響を与えたという現実です。

個人のみならず企業も、借入金ではないお金も突っ込んでいますから、バブル崩壊に伴い銀行のバランスシートには載らない損失が厖大に発生したのです。(1,500兆円の損失というのは時価総額ベースの“架空”の話であって、実質的には「不良債権」も含めて150兆円くらいの損がバブル崩壊過程で発生したのではないかと思っています。しかも、崩壊し終わった後も、不況のためじりじりと損失は膨らんでいきました)

ですから、例えば、93年時点に「不良債権の処理」を行っていたとしても、現実のような経済的苦境に陥らなかったわけではありません。(これほど酷くはなかったでしょうが、政府に大手銀行の経営者や大蔵省のキャリア官僚を処罰する気はなかったようですから、その時点の「不良債権処理」は単なる「銀行救済」になるかたちで提唱された可能性が高く、国民もそのような「救済」を認めなかったと思います)

政府の大きな誤りは、「不良債権処理」が地価や株価の上昇を通じて解決できればという願望を持ちながら政策を進めてきたことです。
(ですから、今なお地価や株価の上昇を願う政策にしがみついているのです。まともな投資家はそれらがもっと下がると考えており、政府以外にそれらを押し上げるパワーを持っていないという状況なのですから、制御不能のインフレを起こさない限り上昇するはずがありません)

そして、現在声高に叫ばれている政策は、「不良債権処理」が、地価や株価を上昇させたり、経済を回復させるという、以前の願望が“転倒”した願望に支えられているものなのです。

【金融関連の緊急政策】

● 4月1日から予定のペイオフ解除を凍結する
● 公的資金の注入を行い財務的破綻状況にある銀行を国有化し、「決済専門銀行」に移行する
● 不良債権の相手方企業の実態を精査し将来通常債権化できるかどうかを判定する
● 民間大手銀行も、国際取引が可能な自己資本比率8%にこだわらない

● 4月1日から予定のペイオフ解除を凍結する

 現在のような金融危機状況でペイオフを解除するのは政策の手を縛る愚かな政策であり、「決済専門銀行」が機能するまで延期します。

預金者の預金移動は政策では制御できません。それは、取付騒動や銀行の突然死を引き起こし、より金融危機及び経済状況を悪化させます。

● 公的資金の注入を行い財務的破綻状況にある銀行を国有化し、「決済専門銀行」に移行する

「不良債権」は、銀行の内部留保資金で償却することも、公的資金注入を頼りに償却することもできます。そして、相手方の「不良債務」企業は、破綻するか、債権放棄を受けることになります。
債権放棄は債務企業の存続を認めることになりますが、これまでも問題になっているように、どの企業が存続にふさわしいのか、どの企業が破綻にふさわしいのかを銀行や政府が決定することになります。また、中途半端な債権放棄をしてもらってもそれで経営が立ち直ることはありませんし、債務を返済し続けている同業種企業に不利な競争条件をもたらすことになります。

資本準備金まで取り崩す銀行が続発しているような銀行の今の財務状況では、破綻させるか債権放棄なのかは別として、内部留保資金で「不良債権処理」を行うことができなくなっており、「不良債権処理」を行うためには公的資金の注入を受ける必要があります。
公的資金で「不良債権処理」を進めるとなると、これまでのように債権放棄は民間同士の契約という話は通じず(けっこう通じてきましたが(笑))、勝手な「債権放棄」はできなくなります。
これは、民間企業に対する活動規制よりもより根源的な存在の是非を国家が決するようになったことを意味します。

こうなると、そのような銀行を民間資本として存続させるよりも、「国有化」したほうが賢明であり、そうならざるを得ない資本構成にもなります。(それがイヤなために無理矢理配当を行うというのは言語道断です)

公的資金の注入は普通株の増資というかたちで行い、それとともに上場を廃止し、それを決定した段階(発表した段階ではなく)の株価で発行済み株式をすべて買い取ります。

このようにして取得した銀行は、郵便貯金部門と合体した上で「決済専門銀行」と「債権管理銀行」に改編します。

「決済専門銀行」は、簡単に言うと、個人及び法人の日銀券を無利子(逆に口座維持料をとる可能性もあり)で預かり、融資(銀行間の短期のものも含め)や国債や地方債を除く証券投資など資産劣化を招く可能性がある取引は行わずに、引き落としや振り込みなど預金者の取引決済業務のみを有料で行う銀行です。
「決済専門銀行」に預金されたものは、国家が責任をもって全額を保証します。


 お金でお金で稼ぎたい人は、日本資本であるか外国資本であるかを問わず、“普通”の商業銀行や証券会社を利用することになります。

● 不良債権の相手方企業の実態を精査し将来通常債権化できるかどうかを判定する

「債権管理銀行」は、国有化前に保有していた債権の管理を行います。
そこでは、まず、債権の質を精査します。“不良経営”であるために不良債権が通常債権に回復しそうもないと判断されたものは、できる得る限りの債権回収を行った後で税金で償却します。

経済状況の改善で通常債権に復帰すると判断したものは、通常債権になるまで元利支払いを猶予して保有し続けます。元利支払いが可能になった時点で、民間銀行に一定の条件を付けて売却します。

債券類や株式は、国債や地方債などの公債を除き、市場に強い影響を与えない規模で時間をかけて売却していきます。

● 民間大手銀行も、国際取引が可能な自己資本比率8%にこだわらない


国有化に至らない銀行にも一定程度の公的資金注入が必要になると考えています。
これは、優先株での公的資金注入でもやむを得ないとも思っています。

しかし、公的資金注入を受ける基準は、自己資本比率8%ではなく、自己資本比率4%にとどめるべきだと思っています。

公的資金注入は、あくまでも、経済危機という不安感を払拭するためであり、通常債権に復帰できる可能性が高い「不良債務」企業に、再建の猶予を与えるためです。


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