投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 9 月 09 日 17:18:00:
1株256万円で買った株が紙屑同然−。思わず「詐欺じゃないか!」と怒りをぶちまけるのが、インターネット接続仲介会社「エムティーシーアイ(MTCI)」(東京都港区)の株主たちだ。この会社、「第二のソフトバンク」を標榜していたが、株主から集めた資金をスポーツイベントや経営陣らの豪遊に湯水のように使い、「いまや破たん危機」(関係者)で、当局も重大な関心を示しているというのだ。夕刊フジでは、株主3567人の全リストを入手した。その中には、同社が“広告塔”に利用した華麗な美女の名前もゾロゾロ…。
平成8年に設立されたMTCIの名前が一躍、話題になったのは昨年10月15日。この日の日本経済新聞朝刊に「自社の未公開株を一般公募する」全面広告を掲載したのだ。
新株の公募価格は256万円。額面(5万円)の50倍以上という前代未聞の高値だったが、ネット株ブームを追い風に出資希望者が殺到し、このとき集めた資金は24億円。
「事業には2つの柱があった。1つは独立系インターネットプロバイダー事業。もう1つの柱がソフトバンクのマネをしたベンチャー投資で、30数社に出資していた」(元社員)。
同社の早川優会長は女子ゴルフやテニス、自動車レースのスポンサーに名乗りをあげ、今年1月には横綱・曙や政治家らを呼んで大々的な新年会も開催し、話題となった。同社は「2001年に上場する」と公言しており、「上場すれば1株2000万円になる」とはやす声もあった。
ところが、“ネット株長者”の夢に酔いしれていた全国の株主たちに、突然冷水がぶっかけられる事態が起きた。先月30日の株主総会で、今年5月期決算が報告されなかったのだ。
実は、その3週間前に監査法人トーマツが「不明朗な金の流れがあって、とても監査できない」と辞任。「取引先への未払い金が10億円もあり、本社のフロアの賃貸料も滞納状態。通信回線のコストが会費収入の倍以上かかり、今や赤字垂れ流しの状況になっているようだ」(元社員)
同社の井上貴夫社長は「20数億円の純資産があり、債務超過ではない」「ベンチャーに出資した株を売却し、未払金の支払いにあてたい」としているが、一部関係者からは「破たんは時間の問題」との声も漏れるのだ。
こうしたなか、夕刊フジが入手した平成12年5月期の株主名簿は261ページ。株主は全国に散らばり、虎の子の貯金を投資したのか、1株、2株の人が多い。取材すると、「女房に黙っているので、どうしたらいいか」「こうなったら、早く会社を清算し残った資産を分配してほしい」といった悲鳴が…。
大株主の中には“広告塔”のような存在もいる。
たとえば、155株を所有する元科学技術庁長官の山東昭子さん。一般公募以前の、1株10数万円から30万円程度で購入したらしいが、同社主催のセミナーに顔を出してきた。
山東さんは「(購入は)知人から、IT関係、情報通信関係でいい会社があると言われた。株にはいろいろ見込み違いがあるけど、これまでも会社に『どうなっているの』と聞いてきた。今後は一部の株主と一緒に、どういう状況になっているのか、情報を開示しろと書類で請求したい」。
今野由梨ダイヤル・サービス社長も572株を所有する第3位の大株主。今野さんは女性起業家として有名で、経済同友会幹事なども務めた。しかも、今年3月までMTCIの取締役に名前を連ねている。
「3月に社内でクーデター未遂事件が起きた。このとき、すでに経営は火の車で、今野さんは取締役を降りた。ただ、今野さんは周辺にも株を奨め、今野グループで1000株ほど購入しているはず。今一番青くなっているのは彼女かもしれない」(同社関係者)
ほかに、たかの友梨・たかのビューティクリニック社長(90株)、女優の浅野ゆう子さんの母親(37株)などの名前も…。
さらに、「株の名義は本人ではないが、デヴィ夫人やスケートの渡部絵美さんも購入していた可能性がある」(同社関係者)。
本紙では、昨年10月の一般公募以前の時期とみられる、もう1つの株主名簿(59人)も入手した。
ここには、有名企業の重役や元テニス選手のコーチ、日本女子プロゴルフ協会会長の樋口久子さん夫妻が計20株の株主として登場する。ただ、樋口さんの夫、大塚克史氏は、「何かの間違いでしょう。株を持っていたら私たちも被害者ですから、のんびりしてられません」。
関係者によると、早川会長らは、集めた金で六本木の超高級バーなどで豪遊していたといい、「複数の株主は詐欺で警視庁に告訴状を出しているようで、役員の経営責任を問うため株主代表訴訟を検討する動きもある」(経済誌記者)。同社の今後は、もはや株主3567人だけの関心事ではなさそうだ。