投稿者 9月8日毎日 日時 2000 年 9 月 08 日 13:30:47:
2000年9月8日(金) 11時0分
<機密漏えい>露に情報流した海自3佐を逮捕 警視庁など (毎日新聞)
防衛庁防衛研究所(東京都目黒区)勤務の海上自衛隊幹部が、在日ロシア大使館の海軍武官に機密情報を流していたとして、警視庁
と神奈川県警の合同捜査本部は8日午前4時15分、東京都世田谷区池尻1、同自衛隊3等海佐、萩崎繁博容疑者(38)を自衛隊法
(秘密を守る義務)違反の疑いで逮捕した。また、7日夜から8日未明にかけ、同研究所など4カ所を同容疑で家宅捜索し、資料など
約100点を押収した。捜査本部は、ロシア側に流れた情報の特定を急ぐとともに、金銭のやり取りがあったとみて追及する。
萩崎容疑者は容疑を大筋で認めている。海軍武官はビクトル・ボガチョンコフ大佐で、任意の聴取に応じていない。
調べでは、萩崎容疑者は昨年9月から今年8月まで10回以上にわたり、東京都港区や渋谷区などの飲食店で、ボガチョンコフ大佐
に自衛隊の内部資料を手渡すなどして、職務上知り得た秘密を漏らした疑い。部外秘扱いの防衛庁や自衛隊の書類のコピーなどを渡し
ていたとみられる。また、萩崎容疑者が大佐から現金を受け取るところを捜査員が確認したという。
捜査本部は7日午後7時15分ごろ、港区の飲食店で大佐と密会中だった萩崎容疑者に任意同行を求め、取り調べていた。大佐は外
交官特権を理由に同行を拒否した。捜査本部は外務省を通じ、改めて聴取に応じるよう要請する。
大佐は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)情報官とみられる。
萩崎容疑者は1986年、防衛大学校を卒業して任官。護衛艦などで勤務。98年、再び同大学校総合安全保障研究科に入学し、今
年3月に卒業した。今年3月からは、防衛政策や戦史研究などを行う防衛庁のシンクタンク防衛研究所に勤務していた。武官との接触
は防衛大で学んでいた時期に始まったとみられる。
防衛庁職員がいわゆるスパイ事件で逮捕されるのは、1980年に元陸上自衛隊陸将補が現職自衛官から防衛情報を得て当時のソ連
大使館員に渡していた事件以来。
◇旧ソ連・ロシア関係のスパイ事件◇
1954年2月 <ラストボロフ事件>
元駐日ソ連代表部が「ラストボロフ書記官が行方不明になった」と発表。同書記官は外務省の重要機密事項を入手し米国に亡命。ソ
連スパイ網を自供したと米軍筋が伝える。
80年1月 <コズロフ事件>
元陸自陸将補らがコズロフ・ソ連大使館付武官らに軍事情報誌を交付したとして逮捕される。コズロフ武官は事件発覚後、帰国。
83年6月 <ピノグラードフ事件>
ピノグラードフ在日ソ連大使館員がコンピューター関連企業の幹部に高度技術情報を要求、国外退去を命じられる。
87年5月 <米軍横田基地事件>
米軍横田基地従業員や軍事評論家など日本人4人が米軍情報をソ連情報機関に漏らしたとして窃盗容疑などで逮捕される。
87年7月 <東京航空計器事件>
航空操縦技術システムの技術書を、開発メーカー幹部がソ連通商代表部幹部に横流ししたとして摘発。
92年8月 <タビードフ事件>
在日ロシア連邦通商代表部タビードフ代表代理が電子部品専門商社の役員に対共産圏輸出統制委員会規制品(当時)の半導体メモリ
ーなどの引き渡しを迫る。警視庁が出頭を求めるが帰国。
97年7月 <日本人偽装事件>
ロシアの対外情報庁(SVR、旧KGB)のアジア系ロシア人とみられる男性が、失そうした日本人になりすまし、30年にわたっ
てスパイ活動を行っていたことが発覚。警視庁は旅券不実記載容疑で逮捕状を取り、国際手配。
[毎日新聞9月8日] ( 2000-09-08-10:46 )