投稿者 F.P. Anarchy Monkey 日時 2000 年 9 月 05 日 17:08:38:
血税1兆円投入!あおぞら銀は灰色(夕刊フジ)
一時国有化の状態にあった日本債券信用銀行がソフトバンク、東京海上火災、オリックスの3社連合に譲渡され、4日から営業を開始した。来年1月には行名も「あおぞら銀行」に生まれ変わる。だが、新行名とは裏腹に、新銀行は疑惑と疑念だらけで、"灰色一色"なのだ。引き継いだ貸し出し債権のうち4割近くがボロボロの不良債権だが、後でこっそり国が買い戻すという"約束"があり、それに伴い、新たな血税投入が1兆円近くも膨らむともいわれている。新銀行がソフトバンクの「財布代わり」に利用されるという懸念も払しょくされていない。とてもでないが「青空」どころの話ではないのだ。
「傷の付いた債権もあるが、それは一時的に預かりしたもので、国にお返しする」「契約に基づき、瑕疵(かし)担保条項を粛々と行使する」
ソフトバンクの孫正義社長は4日の記者会見でこう言い放った。
日債銀は同日午後、譲渡後初の株主総会と取締役会を開き、新経営陣を決定。新社長には元日銀理事の本間忠世氏が就任したほか、孫氏、東京海上の樋口公啓社長、オリックスの宮内義彦社長がそろって、取締役に就いた。
就任後の会見で、質問が集中したのが、瑕疵担保条項の問題だ。譲渡後3年以内に債権の価値が2割以上目減りした場合、国(預金保険機構)が元本で買い戻すという契約である。
日債銀の譲渡をめぐっては、同行を管理していた金融再生委員会のデタラメ査定により1兆2000億円もの巨額の不良債権を抱えたまま譲渡されたことが判明している。再生委は、日債銀の貸し出し債権を新銀行に引き継ぐべき「適資産」と、整理回収機構に売却すべき「不適資産」に分類したが、この際、本来、「不適」であるはずの不良債権を「適」にすり替えていたのだ。
このため、孫氏は「資産査定に関与していない以上、条項が日債銀買収の前提条件になっている」と、権利行使の正当性を主張しているわけだ。
しかし、ここで大きな疑惑が浮上してくる。民間シンクタンクの金融担当アナリストが指摘する。
「瑕疵担保とは本来、欠陥に気づかずに購入した善意の購入者を保護する民法上の規定で、住宅などに適用されるもの。ところが、新経営陣は『傷物』『正常ではない債権』などと明言している。債権に欠陥があることを認識しており、善意の購入者とはいえない。つまり、この契約は違法の疑いが濃厚だ」
さらに、違法性を裏付ける"密約"の存在もうわさされているのだ。
ある再生委関係者が明かす。
「新生銀行(旧・日本長期信用銀行)による瑕疵担保条項の行使でそごうが倒産に追い込まれたことから、条項の適用を厳格化すべきとの声が上がった。そうなれば、日債銀買収の前提が崩れ、買収が白紙撤回されかねない。そこで、孫氏と相沢英之金融再生委員長が会談し、この場で、条項の適用を厳格化しないと口約束が交わされた。しかも、再生委は買収交渉の当初から、『不良債権もあるが、条項があるので黙って引き受けてほしい』と言っていた。双方が債権の欠陥を認識していたのは明らか」
この"違法契約"のツケは、すべて新たな税金投入、国民負担に跳ね返ってくるのだ。日債銀にはすでに3兆2000億円の公的資金が投入されている。1兆2000億円の不良債権についてもこの公的資金の中から5000億円の貸し倒れ引当金が積まれている。条項が行使された場合、引当金でカバーされていない7000億円のうち回収不能分が損失となり、新たな税金投入で穴埋めする必要が出てくる。
その額は「担保がどの程度確保されているかは不明だが、融資先企業が倒産した場合は9割以上が回収不能になる。今後の景気や地価の動向によっては、正常債権が劣化し、条項の対象となる可能性もあり、追加の国民負担は1兆円近くになる」(前出の再生委関係者)というのだ。
日債銀をめぐるもう一つの疑念は、ソフトバンクの財布代わりに利用される「機関銀行化」だ。
日債銀では機関銀行化の防止策として、孫氏ら日債銀の大株主である企業の代表者を除く取締役と監査役で構成する「特別監査委員会」を設置。大株主の企業グループ向け融資に限度額を設けるなど、厳密にチェックするとしている。
ある証券アナリストは「大株主企業向けの融資を禁止しなかったことで、抜け道はいくらでもできる。しかも、不良債権を押し付けた再生委には負い目があり、ある程度の機関銀行化には目をつぶるという暗黙の了解があるとさえいわれている。これでは金融当局による監視も期待できない」と指摘する。
そもそも、ソフトバンクが500億円も投資して日債銀を買収したのは、同社が関係するベンチャー企業への融資を引き出すのが狙いだったのは明らか。
ソフトバンクに詳しい関係者は、「現在のソフトバンクは出資先のベンチャー企業を株式公開、上場させ、株式の値上がり益で荒稼ぎする投資会社。上場する市場であるナスダック・ジャパンも作ったし、株を売りさばく証券会社も持っている。後は、上場までの資金繰りの面倒をみる銀行があれば完ぺき」と語る。
こんな銀行に3兆円プラス追加負担の血税が投入されるのであるとすれば、今もって納得いかないのだ。