投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 9 月 02 日 01:19:41:
「くすぐったい」感覚を手がかりに
かいま見えてきた
脳の予知能力
●コチョコチョと、くすぐるふりをして、くすぐったがらせる――というのは子供のイタズラの次元のことで、まさか科学研究に利用できるものだなんて考えたこともなかったんですが、スウェーデンの学者たちが、これを使って脳の予知能力を研究しえいるという記事が、『ネイチャー』最新号に紹介されていました。
●運動選手のイメージトレーニングなどで既に知られているように、一定の情報処理は、あらかじめ中枢神経系で“想定訓練”を行なっておくと効率が高まる。 これは運動だけでなく、感覚についても当てはまる、というのが、今回の研究の眼目だったようです。
●それにしても興味深いのは、(具体的にどうやって“くすぐるふり”をしたのか詳[つまび]らかではありませんが、きっと「コチョコチョコチョ」と言葉で――スウェーデンの現地語では何て言うのかな――暗示を与えたのでしょうから、言葉による暗示で“脳の予知感覚メカニズム”が作動したということです。
これを悪用すれば、催眠術なんて、お手のもの。 さらには、目隠しをしておいて「今オマエに真っ赤に熱した鉄の棒を押しつけて大やけどをさせてやる」と脅しておいて氷かなんかを押しつけ、実際にヤケドさせるという、恐ろしい拷問なんかにも利用できるだろうから……。
(映画「ナインハーフ」では、氷プレイをしていて、これは80年代に日本でも大流行したそうだが、目隠ししておいて氷をコロがして性感を高めさせるのも、この研究が見いだそうとしている事と関係があるのかも知れないナ。)
●この記事の最後には、次のような大げさなことが語られています――「予知システムは高度な精神作用と密接に関係しており、予知能力の向上と脳のさらなる発達は並行して起こる。そしてヒトの意識自体の根底にあるのは、私たちが未来を想像する能力なのである」。
ご存じのように米国やソ連では国防・諜報関係の政府機関でもESP能力の研究が進められてきましたが、それらは秘密研究だったので、詳細を知ることは出来ません。
(ただし、『ソ連圏の四次元科学』では冷戦時代の旧共産圏の超能力研究の概略がおぼろげながら紹介されているし、米国・国防諜報局などが行なっていた「スターゲイト計画」についても自称当事者が“暴露”した本がいくつか出版されていて、邦訳されたものもある。 しかし米国のESP研究者たちは、こうした自称当事者の暴露本を、「事実関係の歪曲や隠蔽が著しく、しかも自己宣伝めあてのファンタジー小説として書かれているので、読むとかえって真実が見えなくなる」といって厳しく批判しているので、そういうモノとして接する必要があるでしょう。)
しかし、今回の研究成果は、そうした秘密ESP研究の実相をさぐる手がかりにもなるのではないかと思います。
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●出典: http://www.natureasia.com/japan/sciencenews/bionews/index.html.ja
脳 :
あなたの想像力をくすぐる
脳の予知能力
ヒトにはくすぐったい部分がいろいろとある。ところで、ほとんどの人が知らないのだが、実は脳もくすぐったい部分の1つなのである。
「こちょこちょこちょ」とか言いながら指をぴくぴく動かして近づいて来られれば、それだけでヒステリーのようになる人もいる。それは、まるで指が身体に触れないうちに脳がくすぐられているかのようである。最近発表された研究によれば、ある意味ではその通りなのだそうだ。
脳は、歩行のような運動を始める前に、関連する全ての動作につき、メンタルな計画を立ててしまうことが、かなり以前から神経科学者の間では知られていた。脳は、歩行のために用いる神経細胞を予め活性化させ、即座に足を動かせるようにするのである。そして足をより効率的に動かせるようになり、なおかつガムを噛むなどの別の動作もできるのである。
しかしスウェーデンのストックホルムにあるカロリンスカ研究所の神経生理学者Martin Ingvarらは、この脳の準備作業に双方向性があるかどうかという点に着目した。すなわち筋肉に送られる信号だけではなく、脳に入ってくる感覚インパルスについても同じことが言えないかどうか、ということを考えたのだった。そして少なくともくすぐったいという感覚については、同じことが言えるのである。
Journal of Cognitive Neuroscience(認知神経科学雑誌)の8月号に発表されたIngvarのグループの研究報告によれば、彼らは、くすぐられることが予想される段階と実際に足をくすぐった段階における脳の活性化パターンを磁気共鳴画像法を使って比較した。
その結果、脳は、実際にくすぐられる前にくすぐったい感じに対する準備をするらしく、実際にくすぐられることによって興奮する脳の領域が実際にくすぐられる前に活性化することが判明した。このくすぐったいという感覚の予想と現実にくすぐったいという感覚が、脳の後部にある一次感覚皮質と二次感覚皮質とその他いくつかの部分に現れたのである。脳内では、今にもくすぐられるということと実際にくすぐられている感覚とは同価値なのである。
それでは脳や神経生理学者のチーム全体が「くすぐったい」といった一見つまらない感覚に時間と労力を浪費するのはなぜだろうか?
「基本的に脳の反応速度には限界がある」とIngvarは説明する。脳は、くすぐりに反応するのみならず、予知してしまうという「トップダウン」処理ができるおかげで、情報への対応時間や反応時間の短縮を図っているのである。
確かにくすぐられることは、電光石火の反応時間を要する生死にかかわる問題ではないが、類似の感覚である圧迫感や痛みを予知する能力があれば極めて役に立つ場合がある。「ジャングルでは、未来を予知できる者が生き残れる」とIngvar は言う。
また感覚予知システムがあれば、予知可能なものを無視することができ、より重要な事柄に知力を集中させることができる。そのため私たちは、例えば歩いている最中に足の裏に圧迫感があっても、その理由を考えないのである。
Ingvarによれば、予知システムは高度な精神作用と密接に関係しており、予知能力の向上と脳のさらなる発達は並行して起こる。そしてヒトの意識自体の根底にあるのは、私たちが未来を想像する能力なのである。
Jessa Netting
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