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投稿者 ＦＰ親衛隊国家保安本部 日時 2000 年 8 月 31 日 23:39:06:
従業員が団体で自社株を購入する「従業員持ち株会」が最近、注目されだした。特に株価が大低迷しているゼネコン各社では、持ち株会が「大株主」として自社株を“買い支え”ているのだという。会社にとっては、文句を言わずに人気のない自社株を買い続けてくれるありがたいこの制度。従業員側にとっても、この超低金利時代に５−１０％の「報奨金」の上乗せが期待できるのだが、最悪なら株券が紙くず同然となってしまうリスキーな“金融商品”なのだ。社内預金と同じ感覚では、痛い目に遭うこともある。
給与やボーナスから一定金額を天引きして積み立て、持ち株会が定期的に自社株を購入する「従業員持ち株会」は、従業員の任意加入で、一般的に一口１０００円程度の会社が多く、会社から積立額の５−１０％程度が「報奨金」などの名目で上乗せがされる。
会社にとっては“安定株主”の育成、従業員にとっては“財産形成”というメリットのあるこの制度は、ほとんどの上場会社が何らかの形で導入している。特に地銀や第二地銀の多くでは持ち株会が筆頭または上位の株主となっている。だが、それは株価が右肩上がりを続けるという前提に立ったときに受けられるメリットなのだ。
また最近では、企業間の持ち合い株式を解消売りする際の受け皿として持ち株会が使われることも多い。
そして、この従業員持ち株会の“威力”がもっとも発揮されているのが、株価が額面の５０円前後で低迷を続けている準大手ゼネコンなのだという。
帝国データバンクの調べによると、フジタでは、平成１１年度に従業員持ち株会が前年度から約３６４万株も増やして約２２４０万株を保有する堂々の筆頭株主となっている。経営再建に向け債権放棄にいちるの望みをかけているハザマでは、１８８万株増やして第４位株主に。佐藤工業、青木建設はともに第５位。熊谷組も２位に入っている。
フジタでは「資産形成の一環として社員の約９割が加入している。退職時まで退会しない社員がほとんど」（広報室）と説明する。同社の株価は平成元年には２２７０円の最高値を付けているが、現在は５０円の額面を割り込んでいる。「株価が高いときは少なく、安いときには多く買うことでリスクを減らしてはいるが、どうしても目減りするケースも出てくる。１年ほど前からは報奨金も取りやめており、早く経営を立て直して、株価が上がってほしいのだが…」（同）
また、ハザマ広報室は「従業員の加入率そのものは若干減っている。資産が目減りした社員には申し訳ない」と話している。
それでも会社に再浮上の望みがあるうちはいいが、経営が破たんしてしまえば、文字通り“元も子も無くしてしまう”ことになる。
百貨店のそごうでは、今年２月の時点で従業員持ち株会が第３位の大株主だったが、民事再生法の適用申請後、７月末に持ち株会を解散。「これまで購入した株式は単位株を会員に分配し、端数は持ち株会が売却して現金で払い戻した」（広報室）という。
そごう株は１０月の上場廃止を前に整理ポストに入っていて、最近の株価は５−６円を行ったり来たり。「もちろん、大半の従業員は投資額から比べてだいぶ目減りしていますが、自己責任ですから」（同）という。そごう株を持っていた社員は自己責任といわれても泣くに泣けないだろう。
もっとひどい話は、いまはなき山一証券で、平成９年に自主廃業を決めた直後のどさくさにまぎれて、持ち株会事務局が、電子メールで通告しただけで、社員から預かっていた株を１株１円で一括売却してしまったのだ。これについて市場関係者の間では「社員による株主代表訴訟を防ぐためだったのでは」という声が根強くささやかれている。
従業員持ち株会の問題点について証券アナリストは、「実質的に会社側の管理下に置かれているため、経営方針について意見を言うなど株主としての権利を行使する機会を奪われているケースが多い。従業員の方もリスクを考慮せず、社内預金のような軽い感覚で加入しているうえ、給与からの天引きなので株主という意識も薄い」と、会社側と従業員側の“なれ合い”を指摘する。
不良債権処理にあえぎ、市場から厳しい評価をされている企業にとって“身内”の持ち株会は極めて心強い味方だ。しかし、それは経営者の甘えにならないか。
「バブル期の最高値の時期に持ち株会に入った社員にとって、いまの株価では売るに売れない」となげく社員も多いという。自社株といえども株は株。愛社精神も大事だが、投資すべきかどうか慎重な見極めが必要だ。
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