(2000/08/31 new)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/3295.html
携帯電話で記憶や方向感覚に損傷?Kristen Philipkoski 1999年11月3日 3:00am PST 最近行なわれたラットを使った実験で、
携帯電話がラットの長期記憶を損なう可能性があるという結果が出た。 この研究を発表したのは、シアトルにあるワシントン大学教授で生物工学の
研究をしているヘンリー・ライ博士。移動電話から出るマイクロ波と、ラット
の長期記憶の喪失や方向感覚の低下との関連を示す研究結果が発表された。 「これは、無線周波数がラットの長期記憶機能に影響をおよぼす可能性があ
るとの結果を示した初めての研究だ」とライ博士は語った。これまでの研究で
は、主に短期記憶に重点が置かれていたという。 ライ博士はまず、100匹のラットを水をはった大きな水槽に入れ、水槽の中
央部にある台まで泳ぐよう学習させた。水には粉ミルクを混ぜて台が見えない
ようにしたので、ラットはほかの方法で台への方向を見つけ、そのルートを記
憶しなければならなかった。台まで6回泳いだ後は、ラットたちは容易に台ま
での道筋を見つけることができた。 次に、ラットの半数に、移動電話から出ているものと同じマイクロ波を照射
した。マイクロ波を浴びたラットはみな、台へのルートを忘れてしまった。マ
イクロ波を浴びなかったラットは、再び問題なく台まで泳いでいった。 「それからわれわれはあるトリックをしかけた――台を取り除いたのだ。正
常なラットは台があった方に向かい、その周辺を泳ぎまわった。彼らは、台は
どうなったんだろうと困惑しているように見えた」 一方、マイクロ波を照射されたラットは、それぞれが無秩序に泳ぎ回り、台
があった場所に近づくことはなかった。 「マイクロ波を浴びたラットは、どういうわけか、頭の中に地図を描くこと
ができなくなったのだ」とライ博士。 『マイクロウェーブ・ニュース』の編集者兼発行人のルイス・スレシン氏は
こう語る。「ライ博士が示した事実は、ラットの学習に変化が起こり、参照記
憶にも変化が起こったということを示している」 「この結果を人間に当てはめて推論するのには慎重でなければならない。し
かし、ラットに照射されたエネルギーは本当にわずかな量であり、潜在的効果
から言えば、携帯電話から出る量とほとんど変わらない」とスレシン氏。 ライ博士によれば、従来の研究から、こういった類の動物の方向感覚は、ア
セチルコリンという化学物質がコントロールしていることが明らかになってい
るという。 ライ博士は、この化学物質が人間の方向感覚をもコントロールしているのか
どうかはわかっていないと語った。しかし、間接的な証拠は存在する。馴染み
の場所へ行く道すじを忘れるという症状を示すことの多いアルツハイマー患者
では、アセチルコリンの減少が見られるのだ。 「もし(マイクロ波放射が)学習や反応時間を変化させているとしたら、われ
われはこの問題を十分に解明するために、さらに研究を進めなければならない
だろう」とスレシン氏は語った。 また、こうした研究は中立的な組織が行なう必要がある、ともスレシン氏は
付け加えた。 「こういった研究を行なっているのが携帯電話に利害関係がある団体である
ケースがあまりにも多い。彼らは、研究結果によっては失うものが大きすぎる
のだ」 業界団体ワイヤレス・テクノロジーズ・オーガニゼーションが後援している
いくつかの研究によって、携帯電話から出るマイクロ波との相関関係がわかっ
ている現象としては、ヒトの脳腫瘍の発生率のわずかな上昇、ヒトの血液中の
小核の増加、ラットのDNAの損傷がある。 2大携帯電話メーカーである米モトローラ社とスウェーデンのエリクソン社
からは、この最新の研究についてのコメントがとれなかった。この研究はアメ
リカ国立衛生研究
所(NIH)の後援を受けたもので、科学雑誌『バイオエレクト
ロマグネティックス』(生体電磁気学)に発表される予定。
[日本語版:酒井成美/岩坂 彰]
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