投稿者 gaattc 日時 2000 年 8 月 25 日 21:58:55:
2000年8月25日 北國新聞 社説
根本から技術の点検を
石川県畜産総合センターは、独自に県内ホルスタイン牛からつくった体細胞クローン胚(はい)で妊娠した代理母の牛二頭がともに出産はしたものの、子牛は出産直後に死亡したと発表した。角田幸雄近畿大教授グループとの共同研究を打ち切り、独自胚クローン牛づくりに取り組んで一年半、五頭が流産、二頭が死亡するなど失敗が続いている。
同センターは二年前、角田教授グループと共同で世界で初めて体細胞クローン牛を誕生させた。今も共同研究で誕生したクローン牛の約半数、五頭が元気に成長している。その華々しさとは対照的に、このところの低調さはさびしい。先月、同センターは成育中のクローン牛を使って、通常の人工授精の技術で元気な子牛を誕生させることに世界で初めて成功している。このことは、低調さの原因が、独自で取り組んでいる体細胞クローン胚のつくり方そのものに根本的に問題があることを示唆している。角田教授グループから共同研究中に学んだはずの基礎技術がきちんと修得されているのかどうか、根本から問題点を洗い出して、総点検してもらいたい。
体細胞クローン牛に取り組んでいる研究機関は、同センターのほか農水省家畜改良センター、富山県畜産試験場など国内に四十一もあり、今年五月現在で七十五頭のクローン牛が育っている。七つの研究機関が参加する角田教授グループのこれまでの百五十頭の成績は、受胎率四〇%、分べん率二〇%で、三十二頭が産まれている。その内訳は成育十五頭、死亡十七頭である。これに比べ、同センターの独自胚の場合、受胎率三三%、分べん率八%以下で、成績はかなり見劣りしている。
同センターの最近の事態について角田教授は、学んだノウハウを基に細心の注意を払えばいずれ元気な子牛が誕生すると強調している。ただ、「その道は甘いものではない」とも話し、その技術の微妙さも指摘している。
畜産総合センターは、細る一方の能登の畜産農家を支援しようと、低コストで肉質の良い牛づくりを目指し十年計画で独自クローン牛の技術確立を目指している。共同研究の再開、農水省との連携、ほかの研究機関との情報交換など幅広く取り組んで、角田教授の指摘を謙虚に受け止めるべきではないか。