投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2000 年 7 月 04 日 14:46:52:
米国の諜報機関が普通の米国市民を監視しているらしいという懸念から,プライバシー保護法の改正を求める声が高まっている。
【米国記事】 2000年7月4日 2:15 PM 更新
米国の諜報機関は一般の米国市民も監視対象にしているらしい――こうした懸念から,1970年代のニクソン大統領時代に制定されたプライバシー保護に関する法律を,インターネット時代に即した内容に改正すべきだとの声が高まっている。
米国の主導の下,英国,オーストラリア,ニュージーランドの支援を受けているスパイプロジェクト「Echelon」の内容が次第に表面化し,Echelonは国外での通信傍受ではなく,米国市民の監視活動を行っているという懸念がひろがっている。
その結果,一般市民の通信内容がネットを通じて傍受されることのないよう,Echelon のような諜報活動を規制する法律が強化されることになるかもしれない。
「1970年代末に制定されたまま改正されていない法律では,21世紀のテクノロジーを規制しきれないのが現状」。こう指摘するのはBrad Alexander氏。同氏は,昨年米国政府の組織的な諜報活動に対する調査を求めたジョージア州の民主党下院議員Bob Barr氏の元で活動している。「通信がネットを通じて広域で行われている以上,諜報活動に関する疑問がすべて解消されたわけではない」(同氏)。
Echelonの管理に当たっているとされる米国家安全保障局(NSA)と,米中央情報局(CIA)は今年,下院諜報常任委員会に,諜報活動の合法性を判断するためのガイドラインとして利用している資料を提出した。
解消されない疑問
しかし,両諜報機関の活動にかかわる秘密主義と,委員会の慎重な姿勢のため,これは疑いを晴らす役にはほとんど立たなかった。
Electoric Privacy Information Center(EPIC)主宰のDavid Sobel氏は「これはどちらかといえば,時代遅れの法律をどう解釈するかというセンスの問題だ」と批判する。
EPICは情報公開法に基づき,CIAとNSAが常任委員会に提出した文書の開示を要求した。
現時点では,Echelonを含む組織的諜報活動はForeign Intelligence Surveillance Act(FISA)で規制されている。この法律は70年代半ば,ベトナム反戦活動家などの米国市民を対象に集中的な諜報活動が行われたことが問題となって,調査が実施され,上院での公聴会を経て1978年に制定されたもの。しかし,当時はインターネットが普及し始めたばかりで,WWWは存在すらしていなかった。
「FISAは,現代とは異なる世界の法律だ」とSobel氏。
情報化時代の抱える問題
情報化時代は山積する問題を抱えている。
国境を超えて広がるインターネットに関しては,法規制のあり方が問題となっている。たとえば,カリフォルニア市民がアラスカ市民とチャットをしていたら,NSAはカナダでその通信を傍受できるのか? しかも,ネット上では監視活動と諜報活動の境界があいまいだ。誰がどのWebにアクセスしたかという情報は公的なものなのか,それともこの情報を傍受すれば諜報活動になるのだろうか?
こうした点は法律関係者にとっては重大問題だ。しかし,驚くにはあたらないが,NSAは現行の法律で十分だとの考えだ。NSAからこの記事に関する直接のコメントは得られなかったが,NSAの高官でもある米空軍のMichael V. Hayden中将は今年4月,下院諜報常任委員会で以下のように証言している。「この法律のプライバシー保護に関する条項はテクノロジーに関して中立だ。従って,新しい通信技術に適合するための法改正は必要ない」
FISAの下,裁判所は米国市民を外国政府の諜報部員と断定することができる。つまり,諜報機関のスパイ活動を容認しているわけだが,これは対象となる人物がスパイやテロリスト,その共犯者と疑われる根拠がある場合に限ってのことだ。「国家は外国政府のスパイに関する情報が必要だ。一方,米国市民の基本的なプライバシーに関する権利も保護する必要があり,この2つのバランスを取る努力が払われてきた」とHayden氏は指摘する。
Sobel氏は,今まで得られた情報だけで,諜報機関の活動に問題があったかどうかを断定するのは時期尚早だと強調しているが,EPICはEchelonの存在を暴露したジャーナリストのDuncan Campbell氏の協力のもと,NSAがどの程度米国市民を監視対象にしているのかについてまとめた報告書の作成に当たっている。
この報告書は今夏に発表される見通しだ。
[Robert Lemos,ZDNet/USA]