投稿者 7/14 週刊ポスト 日時 2000 年 7 月 04 日 10:06:02:
<特報・政官一体化の野心−−野中自民党幹事長>
1 野中幹事長が狙う新官庁利権
(2)省庁再編で生まれる巨大利権
実際、省庁再編によ
り、どれだけの利権が
再編され、新利権が生
まれるのか。
省庁再編に携わって
いるある幹部官僚はこ
う断言する。
「新しい省庁のなかで
も、利権の集中、もし
くは新たな利権を生み
出す点で注目すべきは
3つ。総務省、厚生労
働省、そして国土交通
省だ」
以下、その利権と水
面下暗闘を見て行こ
う。
●IT利権の総務省
景気浮揚の大きなカギを握ると見られるITビジネ
ス。森首相が「イット」と言い間違うなどしている間
にも、野中氏はしたたかにこの新しい“宝の山”にク
サビを打ち込んでいる。郵政省、自治省、総務庁が統
合する同省では、次の自治大臣が新大臣に横すべりす
ると見られるが、ここでの注目は郵政利権、なかでも
IT利権だ。
前出・霞が関関係者はいう。
「元々、東日本を小渕氏、西日本を野中氏で分けてい
た郵政利権は、小渕氏の死去により野中氏が独占し、
現在、野中氏が郵政のドンとして君臨している。IT
に関しては、森首相がIT担当相を置くなどといって
はいるが、郵政省、通産省、それに大蔵省がそれぞれ
争奪戦を繰り広げるだろう。しかし、そのなかでもI
Tにおける大きなテーマである情報通信分野などで他
をリードし、さらにドン野中“直轄領”である郵政省
が主導権を握る見込みだ」
野中氏周辺によれば、「情報通信産業政策の掌握で
巻き返しを図る通産省は森首相を何とか取り込もうと
している。そこで野中氏は逆に通産相に自分の息のか
かった人間を配置するのではないか。通産は表から、
郵政は裏から押さえることにより、IT利権は全て野
中さんに流れこむ構図になる」というのである。
●介護利権の厚生労働省
これまで省庁再編問題を追ってきたジャーナリスト
の生田忠秀氏はこう分析する。
「厚生利権には、自民党最大の集票マシンといわれる
日本医師会、日本歯科医師会などがある。さらに注目
すべきは今年から始まった介護保険で、ITにも匹敵
する利権になるだろう。厚生労働省となっても、主流
となるのは厚生省。その利権は、橋本龍太郎元首相が
ドンとしてばっちり押さえている。結局、介護利権も
旧小渕派が握ることになりそうだ」
厚生省の事前試算によれば、高齢化社会の進展によ
り介護保険ビジネスの市場規模は2005年に5兆
円、2025年に1
0兆円に達し、以後同様の規模で
推移するという。
●公共事業利権の国土交通省
建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁が統合する
同省は、まさに巨大官庁。建設省が舵を取る同省は、
公共事業予算の実に8割を占めることになる。
「運輸省の永田町対策の失敗もあるが、建設省OB議
員が多いのに比べ、運輸は有力族議員の影響力ダウン
が大きい。しかも、建設はもともと旧小渕派の牙城。
今回の選挙でも、『公共事業、公共事業』とお題目の
ように、選挙終盤に自民党が叫んでいたが、半ば公約
と化した公共事業への5000億円に上る予備費の投
入は今年、さらには来年の参議院選挙に向けて最大の
利権となるだろう」(前出・霞が関関係者)
政治部記者はこう付け加える。
「閣僚人事で一番注目されるのもここだ。野中氏は、
いずれ加藤派を割り、野中グループ入りが噂されてい
る元運輸相で建設政務次官も務めた古賀誠(国対委員
長)をハメ込む公算が高い」
これらは利権省庁の“新御三家”ともいうべき存在
だが、前出の省庁再編の実務担当者によれば「さらに
注目は内閣府だ」という。
●人事権を握る内閣府
総理府を中心に新設される内閣府では、内閣の機能
を強化するため、複数の省庁が関係する問題に対し
て、各省より一段高い立場から、総合調整を行なうと
している。
前出・霞が関関係者はいう。
「IT担当相を含む3名の特命担当大臣を置く内閣府
は、他省庁を指導するとともに、人事権を握る。官僚
からすれば、この影響力は大きく、これまで“省のな
かの省”として君臨してきた大蔵省などは、新たに設
置される内閣官房副長官補ポストか初代事務次官のい
ずれかに同省出身の竹島一彦内閣審議室長を押し込も
うと躍起になっており、既に野中幹事長に働きかけて
いる」
このように省庁再編後の利権をめぐる暗闘が既に水
面下で繰り広げられている。